2年ぶりの新作は、「真夜中」がテーマ。ツアー中に宿泊したホテルの部屋で深夜に書いた楽曲を集めたものだ。ここのところメインの作風となっていた、かの大ヒット“ポルセリン”を思わせるメランコリズムを改めて全面展開したような内容で、四つ打ちのダンス・トラックもあるが、オプティミスティックな高揚感や享楽性は薄い。おおむね徹底して静かで寂寥感あふれるアンビエント・トラックとゆったりしたダウンビートが繰り返され、まるで永遠に続くかのような静寂を演出する。誰もいない深夜2時のうら寂しい孤独感と、静寂に包まれた心地よい孤独感の両者を同時に感じさせる、とはプレス・リリースの触れ込みだが、昔のモービーなら同じ深夜2時でも、パーティーのピーク・タイムの狂騒をイメージして曲を作ったはずで、そこは現在45歳という年齢に見合ったものと言えるかもしれない。
だが一方で、3.11以降の耳には、アルバム・タイトルも相まって、おそらくは制作者の意図をはるかに超えて、強い悲哀や嘆き、絶望や喪失の念までも感じ取れてしまうのだ。音楽の深さと怖さ、そして不思議を感じる15曲。(小野島大)
誰とも繋がっていないという感覚
モービー『デストロイド』
2011年05月11日発売
2011年05月11日発売
ALBUM