感情のすべてが歌になる

阿部真央『素。』
2011年06月01日発売
ALBUM
阿部真央 素。
聴き手の感情を揺さぶる歌は、何よりもまず歌い手自身の感情を的確に捉えるところからはじまる。前作から1年半ぶりとなるこの3rdアルバムのタイトルは、まさに素の自分自身を追い続ける阿部真央の信条を言い表したものだろう。「素」というといかにもプレーンなイメージがあるが、もちろん素の状態の人間ほど不安定で捉えがたいものはない。むしろクセが強く濃厚なものだと言える。ロックもポップもフォークも愛も憎しみも祈りも、めくるめく表情を伴った声となって立ち現れるのは、彼女が自身の心の動きから片時も目を離していないからだ。つまりここにあるのは、単に主観的な感情を並べたようなものではなく、自分自身をいったん冷酷に突き放し客観的に捉え直すという作業の、際限なき積み重ねから生まれたものだ。自身を振り回し続ける素の感情に身を捧げる覚悟が見える。《痛いよ》《壊して》《なめとんか?》《カスです》と強い言葉を放ちながらも、一方では甘く愛を囁き、時にはストーカー行為を《放課後の新習慣》と笑い飛ばす。前2作を超える感情の濃度が聴き手を惑わし、丸裸にする。(井上智公)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする