早くも到着したシングル『手をたたけ』は、一見すると3rdアルバムのディープさとは対照的である。ブラスとストリングスを導入し、シンプルな演奏に徹した表題曲は、夏フェスに似合うアップチューン。NICOの陽性の面を感じさせるが、しかし単なるノリのいい作品には終わっていない。性急なヴォーカルと硬質なビートが作り出すのは、場を盛り上げる音楽というよりも、リスナーをそこに引きずり込むようなカオス空間なのだ。
言い換えるとNICOの場合、どんなタイプの楽曲にも独特の過剰さ、スピード感がある。これは、光村龍哉のソングライターとしての資質によるところが大きい。どんな楽曲をやってもポップに仕上げるのが桑田佳祐だとすれば、どんな楽曲をやってもヒリヒリとしたロックとなるのが光村龍哉。ほとばしる音と言葉、その才能がまぶしい1枚だ。(神谷弘一)