尋常ではないエネルギー

NICO Touches the Walls『手をたたけ』
2011年08月17日発売
SINGLE
NICO Touches the Walls 手をたたけ
3rdアルバム『PASSENGER』はディープな作品だった。精神の暗い部分へと大胆に踏み込み、狂気と紙一重の境地を描いていた。それでいて混乱した印象はなく、真実を描くのだという清々しいほどの意志を感じさせる作品でもあった。
 
早くも到着したシングル『手をたたけ』は、一見すると3rdアルバムのディープさとは対照的である。ブラスとストリングスを導入し、シンプルな演奏に徹した表題曲は、夏フェスに似合うアップチューン。NICOの陽性の面を感じさせるが、しかし単なるノリのいい作品には終わっていない。性急なヴォーカルと硬質なビートが作り出すのは、場を盛り上げる音楽というよりも、リスナーをそこに引きずり込むようなカオス空間なのだ。
 
言い換えるとNICOの場合、どんなタイプの楽曲にも独特の過剰さ、スピード感がある。これは、光村龍哉のソングライターとしての資質によるところが大きい。どんな楽曲をやってもポップに仕上げるのが桑田佳祐だとすれば、どんな楽曲をやってもヒリヒリとしたロックとなるのが光村龍哉。ほとばしる音と言葉、その才能がまぶしい1枚だ。(神谷弘一)
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