この自由さがうらやましい

サーキン『USA』
2011年11月09日発売
ALBUM
サーキン USA
4年も待たされていた、フレンチ・エレクトロ界の実力者、サーキンのデビュー・アルバムが到着した。ヴォーカル・カットアップのセンスとディストーションの効いたシンセを駆使したその仕事ぶりが強烈なEPと共に、彼が登場したのが06年のこと。その後は現場からシーンを更新してきた男だが、今作で表現したのは80年代のアメリカ――黎明期のハウス/テクノ・シーンにあった冒険心と歓喜だという。実際にシカゴ・ハウス界の大御所ケヴィン・アーヴィングを招いて制作したM10を筆頭に、クリアなシンセ音のM3、敢えてチープな音色で構築したドラム・パターンのM15など、どこかオールドスクールな質感を伴った新機軸が続き、本作のメランコリックで温かな全体像を具現化していく。そして大事なのは、彼がこのコンセプト・アルバムを純粋に今やりたいという動機だけで作ったことだ。新作でプログレの影響を素直に鳴らしたジャスティスもそうだが、今の仏エレクトロ・シーンには変に構えたところがない。チャート狙いで一曲のインパクトのみを追いかける輩たちから遠く離れたところで、彼らは自分達の物語を綴っている。(塩澤淳)
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