獰猛な私生児たち

ビョーク『バスターズ』
2012年11月21日発売
ALBUM
ビョーク バスターズ
アルバム『バイオフィリア』の、12インチ限定でリリースされていたリミックス・シリーズの総集編だが、よくこんな劇薬みたいなメンツを揃えたもんである。シリアの民族音楽ダブケを高速テクノにした怪人オマール・ソウレイマン、ボルチモアのアヴァンギャルド・ヒップホップ3人組デス・グリップス、超高速ヘヴィ・ドラムンベースの開拓者カレント・ヴァリュー……と、十分濃いはずのジーズ・ニュー・ピューリタンズやマシュー・ハーバートの名前が霞むような猛獣たちが、ビョークの楽曲で好き放題に遊んでいる。『バイオフィリア』は恐ろしく濃密なエネルギーが込められた傑作だったが、アルバム1枚で完結するというより、そこからの派生物をすべて含めたプロジェクトのような試みだった。つまりこのリミックスも、音楽を本能で鳴らす「自然そのもの」を体現できるアーティストを集めて、そこで起こる交配実験そのものだろう。それを私生児(バスターズ)と呼ぶ視点のクリアさこそ、ビョークを偉大なアーティストたらしめるものだ。個人的なベストはビョークの声をほとんどコーラス扱いして歌いまくるソウレイマンの2曲。(松村耕太朗)
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