トムのハピネス

アトムス・フォー・ピース『アモック』
2013年02月20日発売
ALBUM
アトムス・フォー・ピース アモック
初めて本作を聴いたとき、自分の中でちょっとした混乱が起きた。まず、トム・ヨークが脳内に詰まったアイディアを、機械を使って音に変換し、それに人間的なグルーヴをもたせるために結成したバンドの演奏を、今度は機械と融合させて作った作品、とでも言うべきなのか、その設計図自体のスケールが壮大すぎる。それを意識し過ぎて聴いていたからなのか、たとえば「この曲のフリーのプレイは絶妙だな」と思い、クレジットを覗いてみると、そのトラックに彼が参加していなかったりして、そういうことを繰り返しているうちに焦ってしまったのだ。完璧を追い求める肉体的グルーヴと、カオスを巻き起こす機械的ビートの交錯。この見極めに四苦八苦したわけだが、それを解消してくれたのが7曲目の“ジャッジ・ジュリー〜”と続く“リヴァース・ランニング”。これらでトムは、レディオヘッドにはない、シンプルなギターの単音弾きを繰り返しては、“ドント・ウォリー・ベイビー”と、これまたあり得ないフレーズを気持ち良さそうに歌い上げる。その軽快さには意表をつかれつつ、ようやく作品の意図が理解できた。インタヴューでも“フォーク・ソング”や“ディスコ”という言葉が出てくるが、つまり本作こそトム・ヨークが目指す “ポップ・ミュージック”の完成形なのだ。だからこそ構造自体は興味深いものではあるが、まずは聴いて楽しむことがその本質。そこに気付いてからは、トムの天然な躍動とそこから生まれた陶酔感が手に取るように伝わってくる本作はなかなか手放せない。(内田亮)
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