自分たちの中の「カッコいいロックのチャンネル」に真摯であり続け、変態を繰り返しながらリスナーにも代謝を促してきたプライマル・スクリームが、『スクリーマデリカ』20周年というタイミングに初めて自身の業績を振り返った。今回の新作に込められた物語は、恐らくその経験と地続きになっている。事前にボビーは『エクスターミネーター』を引き合いに出しており、ケヴィン・シールズ印のギターが炸裂するハイ・エナジー・パンクも数曲収められているのだが、はっきり言ってこの手応えは『スクリーマデリカ』である。
だが無論、自己模倣などではない。デザート・ブルースを含むエキゾで味わい深いサイケ・サウンドに、列車や車から眺める情景の描写が移動のイメージを伝え、さながらロード・ムーヴィーの如き本編の行く末、もろ“ムーヴィン・オン・アップ”コンシャスなシングル曲“イッツ・オールライト、イッツ・オーケー”に辿り着く。つまり、再び『スクリーマデリカ』の恍惚と刹那に出会うまでの、旅路のアルバムなのである。本編から外れた楽曲も秀逸で、デラックス盤のディスク2は、現代の『ディキシー・ナーコEP』だ。 (小池宏和)
永遠のロック少年の背中
プライマル・スクリ―ム『モア・ライト』
2013年05月08日発売
2013年05月08日発売
ALBUM