くるりがシングル『東京』でメジャーデビューしたのは、1998年10月21日のこと。そして今作は、メジャーデビュー15周年を記念したシングルとなる。《君が素敵だった事　ちょっと思い出してみようかな》と歌っていた『東京』と、『Remember me』というタイトルを並べただけで、やっぱり関連付けて考えてしまうが、あの頃も今も彼らは、郷愁にかられるような楽曲を歌い続けているということなのだと思う。とは言え、私が彼らの楽曲を急激に欲し始めたのは、東日本大震災の後だった。例えば、今作はウィーンでストリングスレコーディングされているが、少し前なら、そこにばかり意識を集中させて聴いてしまっていたと思う。今なら、豊かな気持ちが、豊かな演奏によって鳴らされているという事実が、何より重要であるとわかる。彼らも『東京』から15年を経て、いろんな思いを背負ってきたからこそ、《さらば夕暮れ時の駅前の／豆腐屋のおじさん　待ってよ／今日は特別な味噌汁だよ》なんて堪らないフレーズを生み出せたのだと思う。日々と重なり合い、ほっこりと体温を上げる珠玉のバラード。（高橋美穂）