余韻なき感傷、走り抜ける音楽

UNISON SQUARE GARDEN『桜のあと(all quartets lead to the ?)』
2013年11月06日発売
SINGLE
UNISON SQUARE GARDEN 桜のあと(all quartets lead to the ?)
UNISON SQUARE GARDENの魅力のひとつは、センチメンタルなメロディやリフにある。しかし、それは従来のポップミュージック、特にJポップが表現してきたセンチメント=感傷性とはかなり趣が違う。一言でいえば、行間を読ませるような部分、甘く切ない余韻に浸らせる要素がほとんどないのだ。炸裂するアンサンブルを伴う彼らの楽曲は、リスナーを「感情のカオス」ともいうべき境地へと連れて行く。

今作はそんなユニゾン流のポップ性が全開となったニューシングルだ。表題曲“桜のあと~”は、前述の特徴がまさに表れた曲といえる。これまでのJポップで歌われてきた無数の桜ソングの「行間を読ませる」感傷性の反対を行く、パワフルで高揚感に満ちたアンサンブル。饒舌な歌詞は散文的であり、詩的情緒を拒んでいるようにも見える。しかし、そうしたスタンスが無機質な世界ではなく、めくるめく感情を内包した音楽を生んでいる点に、彼らの音楽のアクチュアリティがある。感情体験を強烈に圧縮した、これぞユニゾン流ポップソングの到達点である。(神谷弘一)
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