「キラーズのベスト」と聞いただけで何だか込み上げてくるものがあるが、単なるノスタルジーを超えているのが何よりのキモだ。トラックリストを眺めただけでメロディが次々口をついて出てしまう、そしてその楽曲の力強さに何度でも圧倒されてしまうなんて、そんなバンドが00年代半ば以降に一体どれくらい登場しただろう?6年ぶりの再来日公演を観たときも同じようなことを考えた。オーディエンスの多くが、キラーズが登場した10年前を振り返り、10年を懐かしみようやく叶った再来日を祝っている。でも、何より大事なのは、時が止まってはいない、ということだった。自分達が好きで堪らない80s王道を追求し、そこからアリーナ・ロックのスケールへと進んだキラーズは、タイムレスなエンターテインメントを届けてくれた。本作に収録されている新曲の1つ、〝ショット・アット・ザ・ナイト?もまさにそういう楽曲だ。M83をプロデューサーに迎えることでインディ・ポップの美しさを匂わせながら、アリーナ・ロックのダイナミズムを湛えた楽曲になっている。ベスト=ノスタルジック一辺倒になりがちだが、本作は決してそんなことがない。(羽鳥麻美)