2018年3月11日(日)に日本武道館でワンマンライブを行うことを発表し、その大舞台を盛り上げるべく「夏秋冬春 四季連続リリース計画」「47都道府県 ライブ全国制覇」「北海道~九州全地域 フェス全国制覇」「インターネット番組『10獄放送局』大型新企画」を1年がかりで着々と進行している打首獄門同好会。彼らの最新作『秋盤』が、猛烈にジューシーな仕上がりだ。肉を食べる喜びを高らかに歌い上げる“ニクタベイコウ!”を筆頭に、食欲の秋を彩るのにふさわしい極上ラウドロックが連発される。今回のインタビューでは新曲のほか、日本武道館公演への意気込みも大澤敦史(Vo・G)に語ってもらった。
インタビュー=田中大
「いつか肉を歌う」っていうのは決まっていたようなものです
――“ニクタベイコウ!”は、前作『夏盤』の“糖質制限ダイエットやってみた”からの流れですね。
「はい。結果的に肉を食べる機会が増えたので、『ついに書く時が来た』と思ったんです。先に魚の歌(昨年の8月にリリースした“島国DNA”)は歌っていたんですけど、僕はどちらかというと肉を食べる方が多いので、ようやくという感じです」
――お肉とラウドロックは最高の相性ですね。打首獄門同好会にぴったりのテーマだと思います。
「激しい曲調にするのが自分でもしっくりきました」
――ラウドロックはアメリカが本場ですし、肉食人種の音楽と言ってもいいのではないでしょうか?
「そうですよね。『肉嫌~い』って人はやりそうもない音楽ですから。たしかにこのジャンルの人は、みんな肉をいっぱい食べてそうな人ばっかりですね。僕もこういう音楽をやっていますし、『いつか肉を歌う』っていうのは、決まっていたようなものです」
――お肉を歌った過去の曲に関しては、焼き鳥を讃えた“ヤキトリズム”ということになるんですかね?
「そうですね。今回は漠然と広い括りで『肉』です。牛肉、鶏肉、豚肉。あと、ちょっとだけラム肉、猪肉などにも触れてみました」
――クジラに関しては、いかがでした?
「実はちょっと迷いがありました。『クジラは魚?』っていうところで考えてしまって、結局やめたんです」
――クジラは哺乳類ですけど、漢字で書くと「鯨」だから魚感も出てしまいますね。イルカもいろいろややこしいことになりそうですし。
「イルカは心情的に『食べる・食べない』という自分の中での迷いも生じますから」
――そうやって厳正にセレクトしたものが歌詞になったわけですね。
「そうです。『2文字のを入れたい。何かないか? ……スネを入れるか? 料理法は限られるがお世話になっているから入れよう!』ということを考えたりしながら書いていきました」
僕はハイボールの美味しさに目覚めました
――毎回感心するのですが、歌詞の構成が見事ですね。連呼するスタイルの歌詞って、配分のバランスがとても難しいですから。
「ありがとうございます。きれいな法則性や秩序がないと、『ただ言ってみたかっただけ』みたいなやっつけで終わってしまうので、こだわって書いています」
――無性にお肉を食べたくなる歌詞ですよ。今回のジャケット写真も見たら堪りません。
「今回のジャケット写真もいわゆる『スタッフが美味しく頂きました』なんですけど、本当に美味しくて。この断面の赤い感じが良いわけですよ。このレア感! 糖質制限ダイエットをして肉しか食べられない中で、つくづく『肉って美味しいなあ~』と思っていました。肉って飽きないんですよね。でも、糖質制限ダイエットはコストがかかるんです。そういう中で、いきなりステーキのランチのワイルドステーキは、とても助かりました」
――耳寄りな情報です(笑)。
「糖質制限ダイエットをやっている人のインターネット上のコミュニティでは、すき家の牛丼ライトが盛り上がっています。ごはんの代わりに豆腐サラダが入っていて、その上に牛肉が載っているんですよ。それをネギ抜きにして食べるわけです。あと、松屋は定食のごはんをおろし豆腐にするというのもあって……っていうのに詳しくなりました」
――糖質制限ダイエットは、体形を引き締める以外に何かメリットはありました?
「ごはんを食べると眠くなるじゃないですか。でも、糖質制限ダイエットをやっていると、あれが全くなくなるんです。すごく仕事がはかどります。あとお酒に関してはビールとか日本酒はダメなんですけど、ウィスキーとか焼酎とか蒸留酒は飲んで大丈夫なんです。その結果、僕はハイボールの美味しさに目覚めました」
――いずれハイボールも曲になるんでしょうか?
「うーん、3分埋まるかな?(笑)。でも、居酒屋の料理は糖質ダイエットにも向いているんですよ。居酒屋の居心地もどんどん良くなりました。『焼き鳥を塩で頼めば糖質は入らない。ここは天国か?』と。大好きな米と麺を我慢しなきゃいけないのはつらいんですけど、たまに食べると美味しくて。そういうプラス思考で今に至っています」
――人生をありのままに描き続けていますね。
「はい。食べ物の歌をたくさん歌っていて、虫歯になったから歌にして、太ったらそれを歌にして、その挙句、肉ばっか食べてるから歌にしよう……という非常に自然な流れです」
――サウンドも毎回すばらしいです。“ニクタベイコウ!”は、“はないちもんめ”のメロディが効果的に使われているじゃないですか。
「うちは前からちょこちょこ日本で昔から残っているフレーズを入れているんです。例えば“島国DNA”には三三七拍子が入っていますし。今回も何か入れたくて考えた結果、フレーズ的に《腹へったもんね》がハマりました」
――面白いと同時に、音のハマり方が最高です。
「ありがとうございます。『気づかれなくてもいいや』というのをちょこちょこ入れるのが大好きです。テーマの悪ふざけが根底にあるだけに、『バカで~す』ってだけだと、ただのおふざけで終わっちゃうんです。だからギャップが売りです。ゆるい話で始まるからこそ、大真面目にすればするほど面白くなるんですよね」
曲以外の部分でも期待されているのを感じます
――2曲目の“SAWAYAKA”も、その実例ですね。すごい完成度です。
「僕は肉料理の中で、さわやかのげんこつハンバーグはピカイチなのではないかと、いまだに思っているんですよ」
――大澤会長は静岡育ちですが、『炭焼きレストランさわやか』は静岡県内でチェーン展開しているお店ですよね?
「はい。静岡の西部の人は、特によく知っているはずです。この曲は昔作ったんですけど、当時、『歌っていいですか?』と先方に送って、『いいですよ。ありがとうございます』とお返事が来て、お食事券も頂きました(笑)。今回、満を持して再録です。“SAWAYAKA”には心がこもっていますよ。曲としてもかなりかっこいい部類に入ると思います。歌っているとエモくなりますね」
――3曲目の“10獄食堂へようこそfeat. 青木亞一人”もかっこいいです。これは「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017」に出店した飲食店の曲ですね。
「そうです。ライジングが終わって、食べ物まみれの今回のCDを出すにあたり、『ここで収録しなければ、出すタイミングがない!』と思って入れました。初の男性ツインボーカル体制の曲です」
――アシュラシンドロームの青木さんは、『まだまだ新米』の時の稲刈りの写真に写り込んでいましたよね? 今回のアーティスト写真にも、それらしき姿が写っている気が……。
「よくわかりましたね。『まだまだ新米』の時は写り込む気はなかったみたいなんですけど、今回は『写り込んで』とお願いしました(笑)。これはライジングの前々日に北海道で撮った写真なんですよ。ライジングの10獄食堂の企画で青木くんが同行していたから、『あっ、いる……』と思って、着替えてもらいました。今回はオーバーオールです。『牧場といえばオーバーオールじゃない?』と」
――この写真の牛が醸し出しているピンク・フロイド感も粋です。
「『ピンク・フロイドじゃね?』って、わりとTwitterでつぶやかれていますね。今回、『秋盤』の詳細とアー写を一緒に発表したんですけど、アー写の方が盛り上がっちゃって(笑)。曲以外の部分でも期待されているのを感じます。タコ漁に行ってもみなさんに自然に受け入れられて、誰も『おかしくね?』って言わないですからね」