ナノ、和と洋の融合が生み出した新作『ウツシヨノユメ』インタビュー

小さい頃から、普通の人だったらあまり好まないようなことに快感を覚えるところがあったのかもしれないですね


――“ウツシヨノユメ”が、まさにそうですけど、今回のシングルは、ナノさんが様々な音楽のエッセンスを採り入れているということを示している1枚だと思います。カップリングの“Gloria”も、壮大なストリングスのサウンドですし。これは舞台『大正浪漫探偵譚-六つのマリア像-』の主題歌でしたっけ?

「はい。あの舞台はドラマチックな作品だったので、こういうサウンドにしました。『教会の中で響いたらいいな』っていうイメージもありました」

――時々飛び出す巻き舌もナノさんの歌の魅力ですけど、この曲の《滅んでしまっても》には痺れました。

「ここ、つい出ちゃいました(笑)。前もって計画を立てているわけではないんですけど、レコーディングでのっていると、つい出ちゃうんですよ。たまに出過ぎてNGを出しまくる時もあるんですけど、この《滅んでしまっても》は、いい感じで出た巻き舌だったので残してもらえました。巻き舌ができるようになると英語の発音も上達すると思うので、カラオケとかで練習するのはオススメです(笑)」

――(笑)この曲は舞台で流れたわけですけど、いつかミュージカルとかに出演したいという気持ちはあります?

「演技力が関係ないのであれば出てみたいですね。小さい頃は、舞台をやったこともあったんです。ロックシンガーの役とか、英語で何かを叫ぶ通りすがりの役とかがあったらぜひ(笑)。やっぱり、新しいチャレンジはどんどんやっていきたいんですよ。そういえば、舞台をやっていた時は、やりたい役のオーディションを受けるシステムだったんですけど、みんながキラキラした王様とかお姫様を選ぶ中、自分はおじいさん役を選んだことがありました。自分は小さい頃から、普通の人だったらあまり好まないようなことに快感を覚えるところがあったのかもしれないですね」

――おじいさん役に惹かれた理由って?

「セリフ量が多かったけど、唯一笑いをとる役だったんですよ。その役の方がお客さんの印象に残るんじゃないかなと。王道よりも自分にしかできないものをやりたがるのが、自分の性格なんだろうなと思います」

――「これだ!」と思うものを見つけたら果敢にチャレンジする人だからこそ、アメリカから日本に来てシンガーを目指したとも言えるんじゃないでしょうか。

「そうかもしれないですね。その決断がぶっ飛んだ行動のマックスな状態だったので、それ以降は『来るものは来い!』ってなっているんだと思います」

――先程「炎のシンガー」と申し上げましたが、「ファイター」でもありますね。

「ありがとうございます(笑)。そういうのが歌詞に出ちゃうんですかね」

デビューしてから激しいロックも歌うようになっていったので、“A Thousand words”でもとに戻ったような感覚があります


――そういうナノさんにとって、“A Thousand words”は、珍しいタイプの曲ではないでしょうか。

「そうですね。曲を作ってもらったWEST GROUNDに『今回はしっとりしたバラードが欲しいです』とお願いをしたんです。じっくり聴いていただきたいタイプの曲です。歌詞の面でも日常のリアリティのようなものを出したいと思っていました」

――「近くにいてくれたからこそ、あの人に気持ちをちゃんと伝えられなかった」という内容ですが、こういう後悔は、現実の生活の中で度々起こりますからね。

「恋愛に限らず、親子や友人関係とかでも起こることですよね。一方は言葉にあまり頼らないで表現したいタイプなのに、もう一方は言葉にするのが好きで、言葉で何でも伝えたいタイプだと、すれ違いが生まれますから。自分はアメリカで育ちましたけど、あの国の人たちは、不満があっても、いいことがあっても全部口にするんです。でも、日本はどちらかというとあまり言葉にしなくて、不言実行みたいなところがありますよね。『空気を読んでください』というような。それぞれの良さがあるし、弱点もあるなと感じています」

――言葉にするかどうかはともかく、やっぱり一番大事なのは想いですよね。

「はい。強い想いさえあれば、最終的に伝わるんじゃないかなと思いますし、想いがなかったらどんなに言葉で飾っても伝わらないですからね」

――“A Thousand words”に登場するふたりは、想いはお互いにあったのに、すれ違ってしまったようですね。

「こういうことって起こりますよね」

――《「今夜は少し肌寒いから、くっついてあるいてもいいかな」》という部分がありますが、この頃は言葉にしなくても気持ちがちゃんと伝わっていたんでしょうね。

「そうですね。言葉が要らない温もり、絆っていうものもありますから。こういう歌詞の曲は、丁寧に歌って丁寧に表現したいです」

――ナノさんはパワフルに歌うのもとても似合いますけど、こういう方向性の曲も得意ですよね?

「本当はこういう曲も好きなんですよ。自分のもともとのルーツは、アコースティックのロックで、そういう曲をよく歌っていたんです。デビューしてから激しいロックも歌うようになっていったので、“A Thousand words”でもとに戻ったような感覚があります」

――キャリアを重ねるというのは、新境地と原点の両方がどんどん深まっていくということでもあるんじゃないでしょうか。

「そうなんだと思います。数学と違って音楽の答えはひとつじゃないので、今の自分じゃ想像できないものがこれからも生まれるでしょうし、吸収した何かによって新しいケミストリーが起こるんだと思います。それを自分でも楽しみにしています。アーティストって自由人だと思うので、自由な発想で新しいものを生み出していくのを、これからも大事にしていきたいです」

――ナノさんは、ライブの活動エリアもどんどん広げていますし、今後、さらにいろんな可能性を手にするんじゃないかなと思っています。

「ありがとうございます。今年の5月に、初めてアメリカでのライブをやったのも、いい経験でした。カリフォルニアのサンノゼだったんですけど、3千人近くが入れる会場を満員にできたんですよ。ネットを通じて自分の曲を聴いてくれていて、思っていた以上にお客さんが一緒に歌ってくれました。言葉に関しては困らないというのは自分の強みなので、これからもそれを活かしながらどんどんパワフルなミュージシャンになっていきたいです。いい意味で怪物になりたい。ナノしか持っていないものを自分で磨いて、みんなに楽しんでもらえるものにしていきたいです」

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