【インタビュー】そこに鳴る、2025年の幕開けに新曲“miss-dystopia”炸裂! TVアニメ『FARMAGIA』とのコラボで結実した「シンクロと制限」の美学とは

【インタビュー】そこに鳴る、2025年の幕開けに新曲“miss-dystopia”炸裂! TVアニメ『FARMAGIA』とのコラボで結実した「シンクロと制限」の美学とは
そこに鳴る・2024年の号砲的ナンバーとなったTVアニメ『魔女と野獣』オープニングテーマ“相聞詩”は、ロックとアニメが培ってきた共闘関係をさらに進化させるような劇的なナンバーだった。そして、その到達点を自ら刷新するような新曲“miss-dystopia”で、2025年のそこに鳴るの活動は幕を開ける。TVアニメ『FARMAGIA』のエンディングテーマとして制作された“miss-dystopia”は、ファンタジックな色彩感を帯びつつも、心の奥底にも世界の深淵にも手を伸ばすエクストリームなダイナミズムも確かに備えている。そのバランス感はあたかも、『FARMAGIA』の世界観と真っ向からシンクロするかのようでもある。

“相聞詩”を含む4年ぶりの2ndフルアルバム『開眼証明』やそのリリースツアーも含め、2024年のそこに鳴るは自らの音楽と足跡を時代に刻んできたが、踊り場に安住する間もなく、彼らはさらに「その先」を目指している──ということが、以下のインタビューからも伝わることと思う。そこに鳴るの現在地を克明に物語る“miss-dystopia”のみならず、アニメ『FARMAGIA』内のどこかで挿入歌として登場するもうひとつの新曲“恵まれた悲劇を”についても、メンバー3人にじっくり訊いた。

インタビュー=高橋智樹


応援してくれるファンのためにも、もっと売れないと──と思うんです。どんどん責任感みたいなものが生まれてきているような感覚ですね(鈴木)

──2024年は『魔女と野獣』のオープニングテーマ“相聞詩”に始まり、アルバム『開眼証明』のリリースと全国ツアーに至るまで、そこに鳴るがクリティカルな一撃を打ち続けた1年だったと思います。それぞれ、そこに鳴るの2024年をどう位置づけていますか?

藤原美咲(B・Vo) 今日スケジュール帳を見て、2024年の活動を振り返ってたんですけど……初めてのアニメタイアップに始まり、配信リリース、フルアルバムのリリースがありつつ、その合間合間でレコーディングをしていましたし。あと、YouTubeの『そこに鳴る軽音部』っていうコピー企画の投稿も、1週間おきにやり続けていて。バンドとしてずっと動き続けていた年で、気づいたら12月になってて。ほんと、あっという間に終わりましたね(笑)。

斎藤翔斗(Dr・Vo) アニメタイアップも含め、初めての経験が多い年だったかなと思ってます。「VIVA LA ROCK」出演は2年目なんですけど、大きなフェスに2年連続で出演できたし。アルバムをリリースして──僕個人的に、初めて全曲ドラム叩いて収録してもらった作品が『開眼証明』だったので。すごく思い入れ深いアルバムになりましたね。で、そこにこめたものを全部、無事にツアーファイナルまで事故もなく、やりたいように終えられて。ここでひと段落したい……というわけでもなく、まだまだ駆け抜けていきたいと思う所存でございます(笑)。

鈴木重厚(G・Vo) 思い返すと、ふたりが言ったように、すごくいろんなイベントがあって。やってきたことの数とか量で言うと多いはずなんですけど……「全然何もできていなかったな」みたいなところもあって。性格的にたぶん、自分で自分にゴールを与えられないというか。「じゃあ何ができたか?」って考えたらわからないし、思い返してみたらちゃんとやってきたかなあと思いつつも、「でも、もっとできたんじゃないか」みたいな。何が正解かはわからないですけど、2025年も正解を探し続けるしかないなって……迷宮入りな感じです。

──それは裏を返せば、希望的観測を抜きにして「自分たちはもっといけるはずだ」っていう思いと確信があるからなんでしょうね。

鈴木 自分たちがこれから生きていくうえでも、応援してくれるファンのためにも、もっと売れないとなと思うんですよ。責任が伴ってくるというか……そういう感覚がありますね。始めた頃は、それこそ趣味の延長みたいな感じでしたけど、どんどん責任感みたいなものが生まれてきているような──遅いですけどね。「何年やっとんねん!」っていう話ですけど(笑)。バンドで売れることが重大なことだっていう感覚にはなってきてますね。

──それだけ、バンドに寄せられた期待感に触れる機会の多かった年だった、ということだと思うんですよ。だから挑戦を続けていくし、その流れはそのまま2025年の幕開けを飾る新曲、TVアニメ『FARMAGIA』のエンディングテーマ“miss-dystopia”につながっていくわけですよね。このタイアップの話はどういうところから始まっていったんですか?

鈴木 きっかけが結構特殊で。タイアップの枠があって、会社同士で話が決まって……みたいな形じゃなくて。Xで「仕事ください」って投稿してたのを、堤健一郎さん(株式会社マーベラス/音楽プロデューサー)が見てくれていて、DMが来たんですよ。なんて言うか、釣りに行ったらめっちゃでかいマグロが釣れちゃった!みたいな(笑)。そんな話が来るとは思ってなかったんで、びっくりしたと同時にすごく嬉しかったですね。もともとは『FARMAGIA』はゲームなんですよね、メディアミックスの。で、そのやりとりが始まった時はまだゲームの開発途中で、最初はゲームの曲を僕に作ってほしいという話でした。そのあと、しばらく経ってからアニメの曲のほうもお願いされた形でした。

斎藤 びっくりしましたよね。最初、鈴木さん個人への楽曲依頼がコンタクトやったんで。まさか、そこからアニメまでとは考えてもなかったので。倍以上に嬉しかったですね。ゲームのほうのオープニングテーマ“dis-dystopia”も、僕がドラムで、藤原さんがベースを弾いてるので、楽器隊は実質上そこに鳴るという感じの至れり尽くせりな感じでした。


──ちなみに、メンバーの中で、普段からゲームをやってる方は?

斎藤 はい!

鈴木 僕もまあ、「好きやけど……」ぐらいかな。

藤原 私はそんなに……かなあ。

──ゲーム『FARMAGIA』の面白さを挙げるとすれば?

斎藤 言ってみれば、ガードがすごく大事なゲームですね。アクションRPGなんですけど、最近の流行りの「攻撃をどれだけいなして敵に勝利するか」っていう部分と、『FARMAGIA』の特徴でもある「種からモンスターを育てる」っていう部分と──僕、『ポケットモンスター』とか『ドラゴンクエスト』とかのRPGも好きなんで、個人的にはめちゃくちゃ刺さってるゲームです。アクションも本格的やし。

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「89秒の中でどれだけサビを作れるか」じゃないですけど、どこを切り取ってもおいしい曲を目指しました(鈴木)

──藤原さんは『FARMAGIA』のお話が来たことについてはどう思いました?

藤原 驚きが大きいですね。Xで鈴木くんが「仕事ください」って書いたのが、ここまで広がるっていうのが、今時っていうか……すごいなあって。

──いや、普通に話来ますって。逆に、僕がアニメ制作スタッフだったら、そこに鳴るが「仕事ください」って言ってたら速攻で挙手しますけど。

鈴木 来るかなあ……?

斎藤 もしかしたら、ちょっと近寄りがたい空気が出てるかもしれないですね。全体的に。

──なるほどね。バンドのほうから声を上げたっていうのが大きかったわけですね。

斎藤 それは絶対そうやと思います。

──放送に先駆けてアニメも拝見させていただいたんですが、深遠なテーマと響き合うことで音楽世界のスケール感も広がっていくという、そこに鳴るならではの化学変化が生まれていると感じました。“miss-dystopia”の楽曲自体はどういう形で作り上げていったんですか?

鈴木 僕らはたぶん、客観的に見たら「闇属性」というか──日中か夜やったら夜って言われると思うんですけど、『FARMAGIA』はそうではないじゃないですか。そっちに全振りするわけではないですけど、夜じゃない感じにはしたいなと(笑)。なので、爽やかめな感じで、89秒っていう尺の中でどれだけ魅せられるかっていう。アニメを観てめっちゃええなあって思ってる人に、「オープニングとエンディングどっちが好き?」って聞いたら、「エンディング」って言ってもらえるように頑張る!っていうマインドがすごくあって。オープニングテーマはアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)さんって先に聞いてた気がするんですけど、「負けへんで!」っていう気持ちでした。だから「89秒の中でどれだけサビを作れるか」じゃないですけど、どこを切り取ってもおいしい曲を目指したというか。サビが二段階になってるんですけど、Bメロで結構フックを作って、「あ、女の人が歌うんや」って思わせたあと、サビに入って「もう一個サビがあるんや!」っていう。何も知らん人がパッと聴いた時に、いい印象を抱いてくれるように、89秒の中にたくさん用意した感じですね。

──光と深淵の両方とも増幅しながら、鈴木さんが常々言うところの「エクストリームなJ-POP」のバランスを実現している曲ですよね。“miss-dystopia”のデモを初めて聴いた時、藤原さん、斎藤さんはどんな印象を抱きました?

藤原 私は最初、そこまで爽やかな印象を受けてなくて──。

鈴木 (笑)。

藤原 後々レコーディングで仕上がった音源を聴いて「あ、爽やかやな」っていう印象を受けたんですよね。最初はもっとラウドっぽいというか、私にとっては闇属性の感じとして受け取ったんですけど、レコーディングで音を組み立てていく間に印象が変わっていったので。そのバランス感は身をもって体感しました。

鈴木 僕は明るいと思って作ってるけど、暗いと思う人もいるっていうのもわかる。そういう感覚ではありますね。

藤原 歌を録るタイミングの時には、爽やかというか、軽く耳に入りやすい感じ──普段より引っ掛かりができるような気持ちで歌いましたね。

斎藤 僕は今でも、わりと「鈴木さんの書く曲っぽいな」と思ってて。ふたりがバンドのオリジナルメンバーっていうのもあって、そこに対して僕は「そこに鳴る目線の感覚」だけじゃなくて「リスナーとしての感覚」も残ってると思うんですけど。その両方の耳で聴いたうえで、「ああ、鈴木さんっぽいなあ」って今も思ってます。この間MV撮影をした時、実際に撮った素材とかも加味したら、「あ、こういうことやったんやな」っていうのがやっとわかった気がしましたね。曲だけ聴いたら、今でも普通に「攻めた曲やな」って思ってます。

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