3色の歌声と技巧な演奏で独自の世界観を表現するそこに鳴る──アルバム『開眼証明』から彼らの音楽の構造を紐解いてみた

3色の歌声と技巧な演奏で独自の世界観を表現するそこに鳴る──アルバム『開眼証明』から彼らの音楽の構造を紐解いてみた
超絶テクニカルな演奏と重圧なサウンド、さらに男女混合スリーピースでメンバー全員がボーカルをとれる異色のバンド、そこに鳴るが2ndフルアルバム『開眼証明』をリリースした。

同作は、前作から3年9ヶ月ぶりなのだが、この期間でのバンドの成長を大きく感じられる1枚に仕上がっている。というのも、サポートメンバーとして参加していた斎藤翔斗(Dr・Vo)が正式に加入してから初のアルバムであることもそうだ。筆者はこの作品を聴いて、バンドのまとまり、ひとりひとりの音の力がより音源に乗るようになったように感じたのだが、そんなバンドの変化もあながち間違いではなかったようで、作詞作曲を担当する鈴木重厚(G・Vo)が「(このアルバムは)たぶん、翔斗のドラムをずっと聴いてきて、そのうえで作った曲が並んだという感じですね。だから、2018年〜19年の曲とは趣が違う感じになっていて。あと、翔斗が歌えるっていうのもあって、3人で歌ってるっていうことも、僕がイメージする『そこに鳴るでやりたいこと』がギュッと濃縮されたみたいな感覚はありますね」と話していたのも印象的で、そこに鳴るというバンドが、今作でひとつの完成形にグッと近づいたということがわかった。

筆者がこのバンドに感じる面白いところは、先が予測できない曲構成と1曲の中でもボーカルが変わることで、聞こえてくる歌詞の捉え方や伝わり方が変わるところだ。まるで短編小説の物語を音楽で楽しんでいるような錯覚に陥るという点も面白い。そこに鳴るは、物語を彩る景色をサウンドで見せるのも本当にうまい。今作でいうと“罪の宴”のサビ直前のキメ部分からサビの音の広がり方とか、“相聞詩”の藤原美咲(B・Vo)のボーカルが曲への没入感を高めるとか。ぜひ、これからアルバムに触れる方には、彼らの楽曲の細かな部分も楽しみながら聴いてみてほしい。


このバンドがそもそもどんなバンドなのかということについてや、メンバーが選ぶアルバムの推し曲の話などから、バンドをじっくりと紐解いていったインタビューを読んで、そこに鳴るの世界観に触れてみてください!(岩田知大)

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