もともと朝日(G)がボカロP・石風呂として作ってきた楽曲を含め、彼のもうひとつのバンドであるコンテンポラリーな生活ではできない音楽を鳴らすバンドとしてスタートしたというのがこのバンドの始まり。だが、結成以来コンスタントにリリースを重ねる中で、バンドは当初の思惑やビジョンを超え、ひとつの生き物のように成長してきた。今年5月にリリースされた『FREAK』はその最初の到達点だった。メンバー5人の個性ががっちりと噛み合って、より自由で大胆なアンサンブルが鳴り響いていた。
そんなネクライトーキーの次なる一手が、アニメ『カノジョも彼女』のオープニングテーマとなったニューシングル『ふざけてないぜ』だ。アニメの世界に寄り添いながらも、やっぱりその端々には朝日の人間性が滲み出る。ポップさとマニアックな趣味がせめぎ合うサウンドには、このバンドが持つちょっとひねくれた個性が満載だ。アニメタイアップというバンドを知らしめる絶好の機会に、あえて守りに入りすぎることなくバンドのユニークさをがっちり伝える楽曲。曲を徹底解剖した特典の数々も含めて、ネクライトーキーの音楽の本質を伝えるニューシングルについて、5人に語ってもらった。
インタビュー=小川智宏
せっかくシングルで初回盤作るんだったら、その曲についてもっと知ってもらえるような特典にしたいって思った(もっさ)
――ツアーで『FREAK』の楽曲を実際にライブで鳴らしている感触はどうですか?
朝日(G) いや、それがすんごいいいんですよ。いいんですよ、これが。“はよファズ踏めや”とか派手な曲もあるんですけど、やっぱり“大事なことは大事にできたら”とか、“続・かえるくんの冒険”とかが、ライブを重ねていくごとにどんどん気持ちが入っていって。「この世でいちばんいいな」って、やってる最中に思うんですよね。
もっさ(Vo・G) 確かに今回のツアー、“かえるくん”が終わったあとに、しみじみと「いい曲やな……」っていうMCが増えた気がする(笑)。
中村郁香(Key) MCで言っちゃうっていう(笑)
朝日 “かえるくん”はね……そう、いいんですよ。旅がずっと続いていく曲なんですけど、それを、メンバーとスタッフチームと、このアルバムの曲たちと、今まさに12時間車に乗ったりして全国回って届けに行くわけじゃないですか。本当に旅をして旅の曲を歌うっていうのが、ちゃんと体に染み込んでいく感じがするんです。
――なるほど。曲に書いた物語とまさに自分たちが生きている物語がリンクする感じなんですね。で、そんな中ニューシングルが出るということで。曲もそうなんですけど、仕様も面白くて。初回限定盤にはいろいろ入っていたりついていたりするんですが、この「もっさいないver.」とか「朝日いないver.」っていうのは?
もっさ もう単純に名前の通りで、私だったらリズムギターとボーカルが抜けてて、藤田さんだったらベースとコーラスが全部抜けてるっていうのが、入ってます! これは初回限定盤を作るってなって、「特典は何にしよう」みたいな話をみんなでしている中で……映像つけたりとか、グッズをつけたりとかいろいろできるじゃないですか。でも、せっかくシングルで初回盤作るんだったら、その曲についてもっと知ってもらえるような、その曲に対しての特典にしたいっていう思いがあって。こういうバージョンを作ったら、それこそみんなが何をしているかとかもわかりやすくなって面白いし、曲の楽しみ方のバリエーションが増えるかなっていうのでつけました…………か?
――「か?」って。
朝日 いや、発案者じゃん(笑)。そういう方向性みたいなのをもっさが出してくれて。物じゃなくて音楽の面白さを特典にしたいみたいな。だから、楽曲を徹底解剖したリーフレットも作ったんです。全部手書きで、マンガのスクリーントーンを画材屋で買ってきて、カッターで切って貼って。ツアーの合間だからあんまり時間かけすぎないようにしようって言ってたんですけど……。
藤田(B) ゴリゴリかかったね。
もっさ 全員で1枚に寄せ書きしたんで、そのまとまり感とかも難しかった。でも、みんなの手で書いてほしかったんですよ。若干無理やり書いてもらいました(笑)。絶対もらった人は嬉しいと思うんだよって。
朝日 昔、BUMP OF CHICKENの『FLAME VEIN』で、手書きの歌詞カードがあったんですよ。歌詞の文字が全部藤原(基央)さんの手書きで。10代の当時、それをすごく楽しんで見てた記憶があるんですけど、そういうのもちょっと思い出しながら、手に取った人に楽しんでもらえるようにしようっていう。
カズマ・タケイ(Dr) 僕はミミズが這うような文字しか書けないんで大丈夫かなって思ってたんですけど、こういう、何かファンジンじゃないですけど、マンガでもあるじゃないですか、びっしり書いてあって、こだわりがめっちゃ込められてるみたいな。そういうのが大好きなんで、できて嬉しいし、眺めてるだけで楽しい気持ちになれるなって思います。
結構他の音が渋かったんで、私はポップを担当しようって思った。私はもうポップ全振りでいくから、他の人あとよろしくみたいな(中村)
――むーさんはどうですか。中村 私デジタル苦手なんで、アナログでできるっていう安心感がありました。私も絵心ない側の人間なので、絵はもう全部描いてもらってるんですよ。それを切り貼りする感じでできたんで、ちょっとほっとしてましたね。
――要するにこれって、「バンドって楽しいぜ、音楽って楽しいぜ」っていうお手紙みたいなものだと思うんですよね。「だからやってみようぜ」っていう。それって今のネクライトーキーが放つすごく大きなメッセージのひとつだと思う。
藤田 なんとかリスナーを同じ沼に引きずり込みたいっていう。
朝日 何やってるかわからないくらいすごいアーティストもたくさんいますけど、これ見れば何やってるか、ほとんど丸わかりじゃないですか。で、一緒に演奏できるっていう。「俺もできそうだ」がポップスのいいところだなとも思うので。実際やらなくてもいいんですけど、こんなふうに音楽作ったり考えたりしてるんだって理解して聴いてみるとまた面白いんじゃないかなって。
――で、曲もいいんですよ、“ふざけてないぜ”。これは『カノジョも彼女』というアニメのオープニングなんですけど、どういうふうに作っていったんですか?
朝日 最初はTVサイズで曲のデモをがっちり作って、それをアニメサイドに聴いてもらって。「これでいきましょう」ってなって、あとはメンバー5人でスタジオ入って、これはフルサイズになった時どういう曲になるんだという。全員で楽器を合わせながら、ああだこうだ言いながら作りました。
藤田 ジャズマスのギターリフを前面に押し出したいっていう気持ちがあって。ユニゾンのところも多いし、ギターリフをベースでなぞったりとかもあって。そのいなたさっていうのを活かしつつも、サビはめちゃくちゃポップにしたいっていう気持ちもあって。そのバランス感を気にしながら作ったりしました。
中村 うん。結構他の音が渋かったんで、アニメにかわいい女の子も出てくるし、私はポップを担当しようって思って。サビとかはペンライトを持って振れるぐらいのポップさにしました。私はもうポップ全振りでいくから、他の人あとよろしくみたいな。