今年の夏は各地の夏フェスで“スターマイン”をぶち上げ、ジャンルを超えて多くのリスナーを巻き込んできたDa-iCE。ワンマンツアーも大盛況で、その勢いは止まるところを知らない。そんな中新たにリリースされた楽曲は、ドラマ『ハイエナ』の主題歌として書き下ろされた“ナイモノネダリ”。超絶にファンキーで、昭和歌謡のグルーヴを根底に、めまぐるしく展開していく楽曲は、今のDa-iCEが表現できるものが凝縮されたような1曲だ。またもやDa-iCEのキラーチューン誕生。そして様々なジャンルで魅せるダンスパートは、3人のコレオグラファーを迎えて、妥協なき完成度を誇るものとなった。この超強力な“ナイモノネダリ”についてメンバー全員に話を聞いた。今年のツアーやフェスの振り返りなども含め、Da-iCEの現在地がよく理解できるインタビューとなった。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=伊藤元気(symphonic)
(フェスで)改めて“スターマイン”の偉大さを感じましたね。ダンス&ボーカルというジャンルの門戸を広く見せられた(花村)
──強力な新曲“ナイモノネダリ”ができて、それについてのインタビューなんですが、その前に今年の夏を振り返ってみたいと。“スターマイン”リリースから2年目の夏ということもあって、今年はROCK IN JAPANをはじめ、各地の夏フェスで大きな盛り上がりを見せたことと思います。皆さんの実感として、どんな感じでしたか?花村想太(Vo・Performer)「今年はロックフェスにたくさん呼んでいただけて、そこで改めて“スターマイン”の偉大さを感じましたね。ダンス&ボーカルというジャンルの門戸を広く見せられたというか。ダンス&ボーカルグループってクールなイメージを持たれやすいと思うんですけど、もっと人間味を感じさせるような、同じ目線で一緒に盛り上がれる楽曲でもあるので、この夏は“スターマイン”には助けられました。見たことない景色が見れましたよね。ほんとに」
和田颯(Performer)「自分たちのワンマンでやる“スターマイン”とは別物になってましたね。お客さんが好きなようにサビで指を突き上げてくれたりして、それはこれまでのワンマンライブでは起こり得なかったことなので。自分たちとしても『そういう盛り上がり方もあるのか』という思いでしたし、全員がタオルを振り回す景色はステージから初めて見たので楽しかったです」
工藤大輝(Performer)「ダンス&ボーカルというカルチャー自体、ロックフェスにはあまり馴染みのないものだったと思うんですけど、冒頭アカペラの“CITRUS”でふたりの歌唱力を見せて、一味違うぞと思わせることができたのもすごく大事なポイントでした。その振り幅や緩急の大きさも、僕らの中では常に重要なテーマなので、無理にフェス用にシフトするのではなくて、いつもの自分たちで勝負したというところも大きいなと思っています。その振り幅はDa-iCEのスキームがある程度出来上がった結果だと思いますし」
岩岡徹(Performer)「いやあすごかったですね。あの光景は。Da-iCEを組む前に僕自身、ロッキンに行ったことがあって。ほんと夏フェスは楽しかったです。その中で“スターマイン”の汎用性の高さを感じました。全部『煽り』でも成立する曲ってあまりないと思うんですよね。特にダンス&ボーカルの曲として」
──観客の声出しが解禁になった夏でもあったので、爆発力がありましたね。
大野雄大(Vo・Performer)「僕たちのライブには来たことがないけれど、楽曲だけは知っているから一緒に歌えるっていう人たちがたくさんいるんですよね。ロックフェスって開放的だから、それこそ音楽が好きな方ばかりだし、あんなふうにみんなが一緒に歌ってくれるという感覚は今まで感じたことがなかったから、視覚的な景色もそうだけど、聴覚的にも新しい感覚がありました」
花村「メンズの声がめっちゃ聞こえるんですよ。特に“スターマイン”なんかは叫ばないと歌えないので(笑)」
大野「ジャンルレスに楽しんでくれてるのがいちばん素敵ですよね」
工藤「僕らの捉えられ方もクロスオーバーし始めていて、ワンマンライブでも飛び跳ねてくれる人も増えたりして、すごく意味のある夏だった気がします」
花村「夏フェス出るたびに、ツアーのチケットが売れるっていうのもあったよね。それも初めての経験。イベントに出ると顕著にチケットが売れるっていう」
──Da-iCEのパフォーマンスが心を掴んだ結果ですよね。
工藤「SNSでも『Da-iCEってこういうライブするんだね』とか『ボーカルは実力派だし、MCはあんなに面白いんだね』っていう感想だったり、『ワンマンも行ってみようかな』っていう人も結構いたので、やっぱりフェスでも僕らは僕らなりのやり方でやるのが大事なんだなって実感しました」
うちのふたりはあまりにも器用すぎるというか、発声に対しての知見がマジ多すぎる(笑)。だからトラブルがあっても乗り越えられてしまう(工藤)
──アルバム『SCENE』を引っ提げてのツアーも意義深いものだったのでは?大野「12公演やらせてもらって、ファイナルではほんとに『終わりたくない』っていう寂しさにかられました。『SCENE』の楽曲は特にキーがとにかく高いんですよ。ほんとに集中して研ぎ澄まして整えて本番に臨まないと出ない。調子よくても出るか出ないかわからないっていうくらいのキーの曲たちなので。すごく挑戦したツアーだったし、自分の現状のレベルよりひとつ上に臨むような、いい経験になりました」
花村「僕はちょうど声帯炎にかかっているところからの初日だったので、正直、リハーサルで一度も新曲を歌えてない状態でツアーが始まって。ぶっつけ本番でしたけど、雄大くんやパフォーマーのみんなが支えてくれて乗り切ったというところからスタートしたんですよね。歓声を噛み締めながらやっていくうちに、声帯のことは何も気にしなくて歌えるようになっていったし。ほんとすごく成長できたツアーで、今までよりお金をかけているわけではないんですけど、観に来た友達やスタッフから『お金がかかっているように見えた』と言ってもらえたのは、“CITRUS”や“スターマイン”、そして対バンライブなどを経て、自分たちについた自信が、ある意味オーラみたいになってみんなに届いたからかなと思いました」
大野「っていうか、声帯炎、地獄だよね」
花村「マジ地獄でしたね」
──大丈夫だったんですか?
花村「実際は3割とか4割くらいしか回復していない状態でツアーに入ったんですけど、体のいろんなところを使って声を出せば歌い切れるというのはわかっていたので」
工藤「なんだかんだ歌えちゃうんですよ、うちのボーカルチームは。だから心配はしてないっていうか。雄大もそうなんだけど、喉を壊すと歌えなくなって公演を中止する人もいるし、もちろんそうするべきなんだと思うけど、うちのふたりはあまりにも器用すぎるというか、発声に対しての知見がマジ多すぎる(笑)。だからトラブルがあっても乗り越えられてしまうんだよね」
和田「なんでそんな状態で声が出るのかわかんないもん」
大野「なんていうのかな、釣り人とかでさ」
岩岡「は、釣り人?」
和田「これどうオチるの?(笑)」
大野「もし釣竿を忘れちゃったら普通のプロアングラーの方たちは帰っちゃうと思うんですよ。でも僕らは落ちている木で釣竿作って釣るかって、そういうことになるんですよ」
工藤「簡単にいえば柔軟だってことね(笑)」
大野「です!(笑)」
──(笑)。それで魚がちゃんと釣れてしまうっていうところが、すごいんだと思います。
花村「わりと感覚で歌っているふたりだと思われやすいんですよね。もちろん感情で歌うんですけど、実は普段からロジックを立てて歌を作っていってるんですよ。雄大くんとはもちろん見解も違うし歌での表現の仕方も違うんですけど、常に『この歌はなんでこうなってるんだろう』って研究する探究心がほんとに似ていて。そういうふたりが揃っているチームはほんとに強いと思いますね。どちらかが適当に歌っていたら歌は崩れていってしまうけど、ふたりが音楽に対して真面目に向き合うがゆえに、それぞれの歌が同じ方向に揃ってくる」
──“ナイモノネダリ”を聴いていて、すごくそう思いました。ツインボーカルの、どちらかが別の人だったら絶対に成立しない曲で。
大野「うん」
花村「僕もそう思います」
──ドラマ『ハイエナ』の主題歌ですよね。とにかくファンキーかつ、メロディラインは昭和歌謡テイストに溢れていて。それが現代的なトラックでまとめられていてすごく強力な楽曲ができあがっていて。これはまたチーム内外でのコンペで?
花村「はい。チーム内と集めていただいた作家さんの曲とを同時に」
──今回は想太さんが作詞と作曲に携わった楽曲が採用されたということですよね。MEG.MEさんとLouisさんを交えて3人の共作で。
花村「そうですね。基本的に最近はこの3人で作っていて。僕の手癖も理解してくれているので、僕がファーストインプレッションで歌ったものを、2倍にも3倍にもブラッシュアップして返してくれて、ほんとにプロの技だなと思います」