──今回の“アイノリユニオン”は飛び道具系ではなく真っ向勝負感のある曲ですけど、初の書き下ろしはやりやすかったですか?何かに携わらせてもらえる時はめちゃくちゃ全力で向き合わんと……僕は完璧主義で、それをやらずに手を出すくらいならやりたくないっていう我儘なタイプなんで(音山)
音山 褒め言葉なんですけど、この作品に対してはやりにくかったです。ファンタジーでありながらかなり現実的な人の気持ちとか心を鮮明に描いていくところが好きで、原作をがっつり読んでセリフも全部拾いながら歌詞も何百行と書いてたんですけど、単純じゃないのでめちゃくちゃ難しかった。初めて『妻、小学生になる。』を観る人にも曲によってより感動してほしかったし、最終話に向けて“アイノリユニオン”はずっと流れるので、1話の段階で最終話を絶対に想像させたくなかったんですよ。でも最終話で「1話の時の歌やん」ともなってほしくなくて。
──確かにそうですね。
音山 軽く言えばネタバレしたくないみたいなことですけど。いつ聴いても歌詞が届くようにするのが面白かったし、やりごたえがありましたね。
──音のほうはどんなふうに?
音山 このサビのメロディは何ヶ月も前からずっと頭にあったんですよ。明るいメロディやったし、これは絶対にどこかで使うタイミングがあると思ってたんですけど、この話をいただいてビビッときて。でも、長すぎず短すぎず、アニメでも毎回飛ばさずに観てくれるくらいの勢いが欲しかったので、きれいな形にするまでには時間をかけて、サビに行くまでの動きとかもめちゃくちゃ考えましたね。
──とにかくサビが秀逸です。一発で覚えられるメロの強さもあり、そこへ《僕らは僕らの愛には敵わない!》というパンチラインが来て。
バンバ そこ、いいですよね。
さなえ 歌詞を読んでたら漫画のストーリーが思い浮かんでくるし、最後の《僕らは僕らの居場所へ帰ろう》というところも、寂しいけど何か強さもある気がして。特に好きなところですね。
音山 僕の気持ちというよりこの主人公たちの気持ちと思って書いてるし、聴いてほしいですね。なんか本気なのは伝わるだろうし、渦巻いてるものもあると思うので。
──真摯に作品と向き合う作り方はタイアップ向きだと思いますけど、そのぶん大変でもありますよね。
音山 いろいろ言うと首を絞めそうですけど(笑)、こういうふうに何かに携わらせてもらえる時はめちゃくちゃ全力で向き合わんと……僕は完璧主義で、それをやらずに手を出すくらいならやりたくないっていう我儘なタイプなんで。普段は何を曲にしたらいいのかって難しいし、こうやって形があることで取り組みやすくなるのは嬉しくもあります。作品に対して没入すればいい環境やから、そこに全力を注げるというか。
──この曲、このタイミングでpachaeを知る人も増えていきそうですが、この先どんな存在になっていきたいか、どんなことをやってみたいかも聞いておきたいです。
音山 機会を与えていただけるなら、また全然違う感じの曲を書くのも楽しいと思うタイプなので、どんな話でもよろしくお願いしますという感じですけど、何かひとつの形を突き詰めていくのも良しだとも思うし。今はいろんなことをやらせてもらえてるいい流れなので、身を任せてなんでも楽しみたいなと思ってます。でもアニメは大好きなので、アニメの曲はいっぱい書きたいです……映画も、ドラマも……CMとかも。
さなえ 全部だ(笑)。
音山 特にアニメが好きということは言っておきます(笑)。
──バンバさんはどうですか。
バンバ 早くこの曲をライブでやりたいですね。これは一生言い続けるけど、少しでも気になったらライブに来てほしいんです。
音山 うん。
バンバ 僕はライブが大好きでそこに快楽を見出しちゃってるから、聴いてもらって観てもらうことに重きを置いてます。
さなえ ここ4年くらいずっと、自分がやってきたジャンルからすると全く新しい感覚でやれているので、曲作りでも自分からpachaeらしさをもっと前面に出していけたらいいなっていうのがひとつと、みんなで同じ方向を向いて地に足つけて続けていくことですね。
──その中で目標を挙げるなら?
音山 できる限り高みへ行くことですが、行くためにやっているわけじゃないので。どんな状況でも楽しめる楽しみ方を、各々が自分の中で見つけることがいちばん大事かなと思います。それをやり続けることが目標ですね。そうすれば必然的にいろんな景色を見れる自信はあるので。
ヘアメイク=Naoko Shinohara スタイリング=Junya Abe