『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2023年8月号)New Comerより
独自のポップミュージックを奏でる大阪発のバンド、pachae(パチェ)。彼らの音楽にはとても強い中毒性がある。バンドのコンポーザーの音山大亮(Vo・G)が作る楽曲は、一口にポップと言っても実に様々なルーツを感じさせる。ストレートにJ-POP的なキャッチーさを感じさせるものもあれば、ロックやファンク、ジャズのニュアンスが色濃い楽曲もあり、そのクロスオーバー感にはシティポップへのシンパシーが入り混じる。そうした自由度の高いポップミュージックを体現するのは、音山をはじめ、バンバ(G)、さなえ(Key)というメンバーの高い演奏力があってこそ。sumikaやマカロニえんぴつなど名だたるバンドが所属するmurffin discsのオーディションで準グランプリを獲得したのも頷ける(当時はまだバンド結成3ヶ月だったというのも驚き)。この音を聴けばすぐ、このバンドのライブを観てみたいと思うはずだ。そして音山の不思議に落ち着いた艶のある歌声がまたクセになるのだ。2021年にリリースした『GIM』から約2年、2作目のEP『CAN(カン)』がこの6月28日にリリースされたばかりだが、この『CAN』には感服。ざっと楽曲タイトルを眺めるだけでもこのバンドの特異さを嗅ぎとれるだろう。まずアップテンポのギターカッティングに心掴まれる“WeLcOmE pOp!!!”。フリーキーでジャジー、けれどすぐにでも口ずさんでしまえる歌がユニークで、どんなフォーマット上でも「ポップ」を体現できるpachaeの特性がよく表れている。そしてエレポップ風味の“ハツがハツラツ”、メロウに聴かせながら転調の沼にハマる“ダロウ”、一方で切ないバラードを聴かせる“ムヌゥ”、バンドの本質を垣間見せるセッション曲“⊿又ゥ ̄/ ァ ┛л(ムヌゥファンク)”と変幻自在。さらにボカロ的に歌の譜割りに違和感を持たせた“生生CRY”、80’s的な清涼感のあるサウンドにアイロニカルな歌詞を乗せた“サブアカダラケ”と、全7曲はまさにポップ七変化! pachaeが近くポップシーンを揺るがす存在になるのは間違いない。
文=杉浦美恵
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら
他ラインナップはこちら
pachae、只者ではない。まさにポップ七変化!
2023.07.08 12:00