──活動を通してハク。の音楽性の引き出しがいろいろと開いている中で、メジャーデビューにどういう曲を持ってくるのかワクワクしていたんですが、“それしか言えない”という鋭いタイトルを持つ、シューゲイザー的なギターが軸になった曲が届いて、ハク。のかっこよさに改めてシビレました。これはどうやって作っていった曲なんでしょう?シングルっぽい曲を書いてほしいとは言われていたんですけど、ポップで聴きやすい曲は書けないから、じゃあどういう角度で刺していこうかなあって(笑)(あい)
あい メジャーデビューシングルだから、シングルっぽい曲を書いてほしいとは言われていたんです。「シングルっぽい」というともっとポップで聴きやすい曲のイメージがあるんですけど、自分はそういう曲をたぶん書けないから、じゃあどういう角度で刺していこうかなあって(笑)。最初にデモを作った時は、シューゲイザーっぽいリバーブとかは全然かけてなくて。コードを入れて、次にドラムを入れた時に、なんか面白くないからリバーブ足してみようかなってギュイーンって出したらめちゃくちゃかっこよくなって、じゃあギターもいるわと思って。あとは、そのまま流れでできていきました。早口の部分も最初からここはこうしようって決めてたし、曲の構成はすぐ決まりましたね。
──構成も一般的な曲からはかなり逸脱してますけど、あいさんの中ではこれが自然だったんですか?
あい そうですね。構成が大事っていうのは、河野さんとやり始めてから気づいたんですよ(笑)。今は構成も気にしてるけど、4年前くらいと同じ気持ちで、自分が気持ちいい流れでいくことを大切にしました。
──この曲は構成はトリッキーですけど、それがすべてキャッチーさに繋がってますよね。その早口のポエトリーリーディングっぽいところも効いていて。ハク。がその名を広げるきっかけになったMONO NO AWAREの“かむかもしかもにどもかも!”のカバーでもあいさんの滑舌の良さが際立ってましたけど、この曲でも活かしてきたなと(笑)。
あい (笑)それもカバーしてから気づきました。みんなも歌えるものだって思ってたんです。あ、みんな結構つまずくんだ、じゃあ自分って結構滑舌いいんやなって思って(笑)、この曲にも入れました。
──この曲を受け取ったみなさんはどう思いました?
カノ 私は「今じゃない」って思ったんです。めっちゃいい曲なんやけど、今じゃなくない?って思ってたんですけど、完成していくごとにハク。だと思いました。歌詞もサビで《それしか言えない》しか言わないという、あいちゃんの変な感じを出してきててかっこいいなって。早口になる前の、落ちるところのベースフレーズも、自分がもうドンピシャに弾きたい、「これならすっごい魅力的に弾けるわ」っていうのを持ってきてくれて、「わぁ~ありがとう~(拍手しながら)」ってなって。まさかこの曲がメジャー一発目に出るとは思ってなかったけど、今のハク。だったらこの曲ができるし、この曲ができたらもっとかっこいいものを自分たちが提示していけるなって思える曲になりました。
──ドラムはどうでした?
まゆ 速いしむずいし、もうすんごい曲また持ってきてくれたなと思ったんですけど(笑)、聴いててめっちゃワクワクしました。最初に持ってきてくれたやつは、今よりもむずかったよね?
あい うん。
まゆ バスドラも「どうしたらええねん」みたいな感じやって、自分で変えちゃったんですけど。スタジオに入った時にあいが歌ってるのを聴いて、めっちゃかっこいいなと思って。自分の技術でできるギリギリやけど、絶対やりたいなと思ってたくさん練習しました。
あい さっき言ってた早口の前の沈んでいくベースのフレーズは、「これや!」って最初から決まってたから、それを気に入ってくれてよかった。ドラムも、今のまゆならいけるやろって(笑)。
カノ・まゆ ははは。
あい スタジオで「変えてもいい?」って訊かれるけど、全然変えていい。というかむしろ自分でアレンジしてくれるのが嬉しくて、そういうのも含めて「できるやろ」っていう安心感がありました。
なずな この曲にはワーミー(ギターエフェクター)を入れてるんですけど、今まで使ったことなかったから新しいスタートに向けて使えたなって。自分たちの殻を破って、爆発させる曲だなって思ってます。
──歌詞はハク。らしいテーマというか、自分の内側と対話するような内容だと感じたんですが、どういうところから書いていきました?自分の中でしか言い表せない言葉にするのが難しいこと、自分の中でしか納得させられない出来事=「それしか言えない」。そういう自分の中のぐちゃぐちゃがある人には届くんじゃないかな(あい)
あい サビの《それしか言えない》はデモの時点で決まってました。鼻歌を入れた時に、♪それしか言えない~がハマっただけだったんですけど、そこからなんのことを歌ったらいいんやろう?って考えていった結果、すごく気だるい気持ちになった時に感じたことを書いた曲になりましたね。私は「私があなたを絶対救うから」みたいなことを曲にできないんです。メンバーのみんなには言えるんですけど。
カノ 確かにな(笑)。
あい 「いけるって!」「かわいいよ!」とか。
カノ 「うちがおるよ!」ってな(笑)。
あい でも、それを歌詞に書いて直接的にみんなに届けることはできないんです。ただ、サビで《それしか言えない》って叫んでるのは、みんなにもそういう気持ちってあるかなあと思ってて。私はそれが言いたいわけじゃないのに、意図しない形で伝わってしまったとか──自分の中でしか言い表せない言葉にするのが難しいこと、自分の中でしか納得させられない出来事=「それしか言えない」みたいな。そういう自分の中のぐちゃぐちゃがある人には届くんじゃないかなって思ってます。
──「これしか言えない」じゃなくて、「それしか言えない」なのが重要だなと思っていて。「これしか言えない」だと、この曲が伝えていることがあいさんの視点になるけど、「それ」だと歌い手と距離があるというか、「それ」がなんなのか断定されてないからこそ、誰にとっての「それ」でもあるなと。
あい それが言いたかった(笑)。自分にしかわからない気持ちが「それ」なんだよ、ということです。
──メジャーデビューという重要なタイミングなので最後に訊きたいんですが、いろんなバンドがいる中で、ハク。はメジャーシーンにおいてどういうバンドとして成長していきたいと思っていますか?
カノ ハク。にはいろんな色があるから、「ハク。ってこれだよね」という解釈が人それぞれ違っていて、そういうそれぞれの受け取り方によって、ハク。が成長していくのが面白いのかなと思ってます。曲作りに関しては、あいちゃんの中に沸々とあるものをもっと出していってほしいし、そうできるように私たちで背中を押せるように曲を作っていきたいなって。
まゆ 自分たちがやりたいこととか、「ハク。らしさ」はそのまま変えずにいたいなと思ってます。あと、誰かが「最近ハク。聴いてるんだよね」って言った時に、「あ、ハク。聴いたことあるわ」ってなるくらい、日本でも日本じゃなくてもみんなに広まってほしいなと思います。
なずな ハク。はいろんなジャンルで戦えると思ってて。ジャンルにとらわれずに新しい曲に挑戦することをメジャーでも頑張りたいですね。
──あいさんはどうですか?
あい 私はもしバンドをしてなかったら、こういうかっこいい自分にも出会えてなかったし、もっと内気な感じやったかなって思うんです。バンドを今まで続けてきたことで、こんなに叫べるんだとか(笑)、こういう自分でいられることが嬉しいみたいな瞬間が増えてきたから、そんな自分にもっと出会っていけたらいいなって思ってます。出会っていきたいから、バンドをもっと頑張りたいし。「ハク。らしさ」でいうと、ジャンルにはとらわれず、でも「こういうのが好きだよね」っていう感覚はちゃんと1本持っていたいなと思うし、4人がちゃんと「これは大丈夫」って信じてればずっと進んでいけると思うので、折れずに自信を持って届けていきたいです。これから私が思いつかないようないろんな経験ができると思うし、いろんな壁もあると思うし。でも、そういうのも4人で一緒に経験したいなって思ってます。
スタイリング=umeda kazuhide