──続く“レモンガール”はさすけさんによるソングライティング。ビートがすごくドライブするというか、ドラムがすごくタイトでかっこいい曲。「個人的である」ということをいちばん大事にしているんです。リアルな感情を表現するときこそいちばん熱量が高くなると思っているから(美咲)
葵 この曲には、私だったら思いつかないフレーズが入っていて。さすけさんに指示をもらいながら叩いていきました。自分の中で格段にレベルアップできた曲になったと思います。
わたさん この曲は作っているときの思い出があって。まず、いいイントロを作ろうというのでさすけさん家に行って、それでこのイントロができあがって。で、僕はイントロができた段階で自分の家に帰ったんですけど、次の日にはもうこの曲ができていたので驚きました。
さすけ もう最高のイントロができたので、そこから一気に一筆書きで仕上げたみたいな感じでしたね。自分は9割がた詞先で曲を作るので、もともとあった歌詞を、この曲なら合うなということで組み合わせていったんです。
──“純文学”もさすけさんが手がけている曲ですが、ボーカルのレンジが広くて、すごく難度の高い曲だと思います。ボカロP的なコンポーズというか、それに美咲さんが見事に応えていますね。
美咲 ほんとに人間が歌うように作られていないので難しくて(笑)。レコーディングも苦戦しましたし、さすけさんに細かくディレクションしてもらいながら、引き出してもらったという感じでした。新しいアプローチで、すごく成長させてもらった1曲ですね。
──さすけさんが詞先で曲を書くのは、どこか短編小説的な感覚なのかなと、この曲を聴いて思いました。
さすけ 完全にそうですね。日常生活でいろんなものに触れる中で、このテーマで短編小説を書こうみたいな感覚が自分の中で固まって、それをメモにたくさん書き溜めておいて、曲作りのたびに放出していく感じです。
──美咲さんは、曲を作るときはどういうふうに書き始めますか?
美咲 私は「個人的である」ということをいちばん大事にしているんです。リアルな感情を表現するときこそいちばん熱量が高くなると思っているし、それがいちばん届くものになると信じているので。なので、こういうことを思った、考えたっていう感情が動いた瞬間に曲を書くようにしています。
葵 美咲ちゃんは、ひとつの感情を1曲にするから、そのリアルな感情がドラムを叩きながら聴いててもいちばん胸に来るんですよ。さすけさんの歌詞は、1個の作品という感じで、最初から最後まで物語の流れがあって、それもまた違う方面から感情移入できるんですよね。それぞれ違うのがミーマイナーの強みだなって思います。
わたさん 横でギターを弾いてる身からすると、美咲曲のときは、なぜかいっぱいギターを弾きたくなるんですよ。いっぱい詰め込むほどよくなりそうな気がして。逆にさすけさん曲のときは、箇所箇所で寄り添うのがいいな、みたいな。そういう違いもある気がしますね。何がそうさせるのかはわかんないんですけど。
──まるで個性が違うのに、どちらの書く曲もミーマイナーとして同じ軸を持っている感じがしますよね。
さすけ 確かに。バンドの中にふたりのコンポーザーがいて、ここまで世界観が統一されてるバンドもなかなかない気がしますね。
──そして“サンドウィッチ”というミドルバラードも素敵な曲で、これは美咲さんの作った曲ですね。
美咲 これこそほんとに超個人的な曲で、だからこそメジャー最初の作品に入れてもらえたのが嬉しいです。私、野菜が食べられなくて。でも、過去に野菜が好きな人と一緒にいたときは、その人が野菜を食べてくれるからお店でもサンドウィッチを頼めたんですよね。でも、その人がいなくなったとき、「もうサンドウィッチは食べられないな」って思って。ひとりで注文して中の野菜だけ残すのも申し訳ないし、これまではその人の存在に助けられてたんだなあっていう思いを曲にしました。
──他の人にはない視点。そこに相手の不在を感じたんですね。
美咲 このバンドは、私にしかできないことをやりたいと思って始めたので、誰にも共感されなくていいから、ちゃんと嘘のないことをやりたいなって思っているんです。それがこの曲で体現できているので、この作品の中でいちばん好きな曲です。
葵 大切な人がいなくなったらできなくなることって、人によってこんなに違うんだなあって思った。でも、これからは私が野菜食べてあげるねっ!
美咲 え、やったあ!(笑)。
──あと、“君の言う通りだった”も美咲さんの曲で、ブラスサウンドをフィーチャーしたアップテンポの曲でありながら、歌詞もぐっと刺さりますね。
美咲 私はほんと、好きになるとその人しかいないと思っちゃうタイプで、その人が正解だと思って生きていくので、「さよなら」と言われても「ああ、これが正解なんだ」って思ってしまうんです。だから《さよならも最善策なの?》って歌ってるんですけど、最後になって「私はそれは最善策ではないと思う」って自我を出すところがこの曲の肝で。これも実体験を元にした曲なので、私の世界観の曲ですね。
──やはり自分の実体験や感情を曲にするのが美咲さんですね。
美咲 そのためだけに書いていると言ってもいいです(笑)。たぶん私は言いたいことを本人に直接言えるタイプの人間ではなくて、曲にしないと言えないみたいなところもあるのかなと思います。もう届かないから曲にしようっていう感じもあるし、悲しみを歌にすることで、自分を癒してるのかもしれないですね。
──ラストの“拝啓、私たち”もそうですよね。弾き語りのシンプルな楽曲ですが、忘れられない君と日常とを描く、ミーマイナーのテーマがはっきりと表現された曲で。
美咲 アコギと声だけの人間味で勝負しているバンドってかっこいいなっていう憧れを抱いているのもあって、私たちのEPには必ず弾き語り曲が入っているんです。私の曲は感情100%なので、いつもは思い浮かんだフレーズを4分間の曲に引き延ばすという感覚で作っているんですけど、この曲は逆で、数年間のことを4分にまとめたような楽曲ですね。
──《忘れていて2人の日々を》っていう歌詞が胸に沁みました。
美咲 それは、私が今もそのあたたかさとか喪失感を引きずって生きているから。私はそれでいいけれど、相手がそれで苦しんでいないといいなという思いで書きました。幸せでいてほしいなって思って。
さすけ めっちゃいい曲なので満場一致でこの曲を入れようということになりましたね。僕の好きな90年代曲に通ずるものがあって、どこか古風な雰囲気が滲んでいるのも好きです。
──あらためて、今作はどんなEPになったと思いますか?もともと野望を持たずに始めたバンドだし、売れようとかフェスに出ようとかバズを起こそうとか思っていたら、こうはなっていなかったんじゃないかな(さすけ)
わたさん それぞれの曲にキャラクターがあって、全然違う雰囲気の曲が並んでいるけど統一感があって。何回聴いても飽きないEPになったと思います。
葵 全部の曲が表題曲になるようなEPですよね。自信を持ってリリースできます。
──この作品をきっかけに、またミーマイナーを知る人もいると思いますが、これからどんなバンドになっていきたいですか?
さすけ うーん……このまま何も変わらずにやっていく。それだけかな(笑)。もともと野望を持たずに始めたバンドだし、それがよかったんだと思います。売れようとかフェスに出ようとかバズを起こそうとか思っていたら、こうはなっていなかったんじゃないかなと思うので。ピュアに自分たちが作りたいものを作るっていう、その無欲な感じが受け入れてもらえているのかなと思うので、このままいきたいです(笑)。
葵 最初にライブに参加したときから今日までずっと楽しいなと思ってやっているので、いい意味で尖った4人のままで、ずっとこの人たちと音楽をやっていたいです。
わたさん ミーマイナーは、バンドってやっぱ楽しいなって再確認させてくれた場所なんですよね。だからメジャーデビューしても、そこだけは忘れないようにしたいと思います。
美咲 なんか、目標を持たないことが目標っていうか。私は叶わなかった夢があったとき、それまでの過程が全部「×」になってしまう経験もして、そういうふうになるのはもう嫌なんです。どんな結果になっても「最高だった」と思えることを積み上げていこうと始めたのがこのバンドだし。「これが叶わなかったらダメなんだ」っていう夢や目標は持たずに、すべてのことに感謝したり意味を見出したりしながら、これからも経験を積み重ねていけたらいいなと思っています。