Interview 03 藤原“38才”広明(Dr)
規模が大きくなると、名前も知らないけど関わってくれる人もいる。そういう人たち一人ひとりにも丁寧でないと、今後この先に行くのは難しいんだろうなって
──ヒロくんのドラマーとしてのあり方ってすごく特異だなって思ってて。常に主語がバンド側にあって、そのうえで自分の役割を誰よりも認識しながら、模索して実行し続けているなって。藤原 ドラムを叩きたい、ドラムで目立ちたいみたいなのが先にないんですよね。バンドやりたい、グループで仲間と一緒にライブをやりたいが最初で、それがずっと変わってない。曲の一部でありたいというか。元々ロックを聴くし好きですけど、結局やっぱポップスが好きだなって思うのは、歌があってその中でドラムがどうあるかっていうのが面白いなって。──バンドを始めて20年以上だし、ヤナギと知り合ってからはそれこそ──。藤原 35年ぐらいって言ってたかな。すごい感謝してますよ、本当に。だって俺、曲作れないし、歌詞も書けないし、ドラムは打楽器なんで、コードがどうとかっていうのも一切わかんないわけですよ。けどこうやって音楽をやれてるのは、ドラムができるからっていうより、彼が隣にずっといてくれたからたから。SUPER BEAVERをやる前も一緒にずっとバンドやってたし、同じ「好き」を共有する友達がたまたまいてくれたのはすごいありがたかったですよね。──SUPER BEAVERのドラマーとしての自身の存在価値は、どういうふうに考えてるんですか?藤原 それも難しいというか、代わりはいるような感じもあるって思うんです。僕、昔、体調崩してライブ2本ぐらい飛ばしちゃったことがあって。そのときは他のバンドの先輩や友達が何本か叩いてくれたんですけど、休んでてもバンドは普通にこう⋯⋯進んでるんですよね。それを体験したときに、たとえば病気や交通事故で死んだり、辞めたりしてもメンバーかサポートかわかんないけど入れて、なんとなくまた転がっていくんだろうなって思ったんです。だからこそ「これがいい」って言われるようなものを考えたり練習したりっていうのは欠かさないようにしてる。──いや、現実はドラムに限らず「俺が死んでも社会は動いていく」っていう話で言えば、あらゆる人間に代わりはいる。でもロマンとしては「やっぱりこの4人にしか鳴らせないものがある」みたいな物語のほうが強い気がするんだけど、そこを冷静に捉えているんだね。藤原 そうですね。初期衝動や勢いでライブをやっているときもあったんですけど、「それだけじゃダメだよな」ってずっと思ってて。だからもっともっと音楽を知りたい、ドラムのことを知りたい、上手に叩けるようになりたいって欲求はずっとありますね。それは音楽で食えるようになったからというのもあると思うんですけどね。アルバイトを辞められたから、そういうことに時間やお金をかけたりできるようになって広がったのかなって。
──この1〜2年、さまざまな挑戦をしている中で、何を根拠としてバンドをやっていくのかとか、どういう役割を持つのかとか、今まで以上に考えた時期だったと思うんです。それは『人生』にも如実に出ていると思うんだけど、これからどういうふうにバンドを続けていこうって思ってますか?藤原 もっといいライブができるのか、もっといい曲を作れるのか、もっといいドラムを叩けるのかみたいな部分はまだまだステップアップする自信があるんですよね。でも、それができるから、バンドが続くのかっていうとまたちょっと違う話じゃないですか。これだけ規模が大きくなると、名前も知らないけど関わってくれて、俺らのために何かをしてくれてる人もいるわけじゃないですか。そういう人たち一人ひとりにも丁寧にやらないと、今後この先に行くのは難しいんだろうなって、この間のツアーが終わったあとに思いましたね。──それはどんなドラムを叩くか、どんな曲をやるか以前の「前提」だよね。藤原 そう。もう4人だけで動かしてないっていう。力を貸してくれてる人が、より力を発揮できるような環境をどうやって作るのか、よりやりたいと思ってもらえるにはどういう活動やどういう発言をして、どういうライブをやってどういう曲を書けばいいんだろうって。それは今後重要になると思ってますね。──メンバー同士はどうですか? 4人それぞれの人生があって、ライフステージも価値観も変わっていく中で、一枚岩であってもそのあり方は変わるじゃないですか。藤原 自分のライフステージが変わって考え方がすごく変わったってわけじゃないんですけど⋯⋯ちょっとずつ許せることも増えたし、許せないことも増えたって感じがしていて。でもそれはそれぞれあるし、うまくやっていきたいなと思うんですよね。それぞれの考え方がものすごく離れるとは、今のところまったく思わないかな。自分の中でちゃんと噛み砕いて「俺はそう思わないけど、誰かがそう思うならやってみようか」って言える自分になりたいし、そうしてます。──そこがまさにヒロくんが映画の中で言ってた、「友達でもなければ仕事仲間でもない」っていう関係値で。友達同士のままやれる部分もあると思うし、逆に仕事仲間って割り切ったほうがスムーズに進む部分もあると思うけど、そのどちらでもなく、いちばんややこしいところでやり続けているっていう。藤原 確かにそうですね。ヤナギが「いや、俺の曲なんだから、言った通りにしろよ」って言えば──。──そう、それで成立するじゃん。藤原 それでいいんですけどね、本当は。ちゃんとみんなが納得するものじゃないと嫌だって彼もよく言うんです。だから誰かがひとつ言うと、それが見つかるまでやる。結果みんなが「よかった」ってスッキリして帰るようには必ずしてますね。──なんでそうなったんだと思います?藤原 みんな優しいからだと思いますよ。いいと思う、違うと思う、それを詳しく教えてよって聞く優しさみたいなものから始まってるんだと思うんですよね。ちゃんと人に興味があるというか、人をもっと知りたいみたいなのがある。人間らしくていいですよね。──そこにバンドである意味とか、音楽をやる意味を見出してるってことですよね。人と人との関係性の中でしかやれないことがあるし、SUPER BEAVERはそれしかやりたくないって強く思ってる人たちの集まりなんだなって。藤原 会ったときからこういう感じでしたね。リーダーもぶーちゃんも、最初からなんでこんな気を遣ってくれて優しいんだっていう印象で。「歳が違うとか気にしないで」「あだ名で呼んでいいよ」みたいな。──何を言って何を言わないかっていう選択をして、大人なんだけどめちゃくちゃ強い関係性みたいなのを、この4人で作っているんだなと。藤原 ずっとそうなんですよ、僕たちって。ピンチのときに助けてもらってるから、誰かがピンチだってなったときも「なんでだよ」とはならない。楽しみにしてくれてた人がいるから申し訳ないっていうのはありつつ、変な言い方ですけど、でも休むことがすごく問題だとも思ってないというか。「大丈夫、ごめんねって謝るぜ」みたいな感じ。そこは僕らのことを好きな人たちならわかってくれるっていう信頼関係があるからかもしれないけど。──アルバム最後の“告白”は、ヤナギの「俺はこのバンドをこういうふうに続けていきたいと思っているけど、どう?」っていう問いかけだと思ったんだよね。藤原 音楽に関わることをほとんどすべてやってる中心の人が、そういうふうに思ってくれてるのはありがたいなって。僕も似たようなことは思ってます。さっき言ってた一つひとつの人間関係も含めて、もっと丁寧にやっていかないとなって気づけたっていうのもあるし、それをちゃんとうまくやれたら、この歌で言ってるように長く続くんじゃないかなとは思ってますね。
Interview 04 渋谷龍太(Vo)
フロントがより個を意識する、より責任を負うということが、バンドにとって必要な変化だった。それをし続けられるなら、俺はプラスに持っていける
──4月に喉の手術をして、今(取材時は6月上旬)復帰に向けて動いているところだけど、調子はどうですか?渋谷 本来ならこれぐらいのタイミングで歌い始めようって言ってた時期から、1ヶ月ぐらい前倒しで歌えるようになってて。もう手術の痕すら見当たらないって言われました。まだちょっとだけ違和感はあるんですけどね。今までのいびつな感じに対応した歌い方になっていたんで、ここまできれいになっちゃうと逆に難しいなっていう。ただ、喉の負担は圧倒的に減りましたね。声が出しづらい、声が出るかわからないっていうのを抱えて年間あれだけの本数のライブをやるのは、体的にも、何より精神的に結構キてたなって感じていたので。これだけたくさんの方が携わってくれて、待ってくださってる方がいるこの現状を鑑みると、メリハリを持って休むときは休む、仕事するときは仕事をするっていう、ある程度のタームを設けないとこの先また繰り返すことになるだろうし、身も心も持たないだろうなって。──たまたまこの1年は20周年という区切りでもあったけど、バンドを走らせるエンジンや燃料をもう1回チューニングする作業が必要なタイミングでもあったんだろうね。渋谷 ああ、そうですね。毎月僕はエッセイを書いてますけど、過去のことしかほぼ出てこなくて。直近の話ができないんです。バンドの自分しか存在し得ない日々を過ごしてきたから「個」がないんですよ。僕はこの先、死ぬまで音楽をやるわけではないと思うんですけど、そうなったときに、音楽がなくなったらなんにも残ってない人間になっちゃうなって。もっと個人の幸せにも目を向けないと、音楽もつまらなくなりそうだし、ステージに立つ人間としても面白みがなくなりそうだなって結構冷静に思いましたね。──4月1日の武道館で、ヤナギもリーダーもぶーやんも「人生」という言葉を口にしていたけど、言葉の矢印の方向が違うなって感じたんですよ。リーダーとヤナギは自分の人生とSUPER BEAVERっていう関係性の中で語っていたけど、ぶーやんは常に「あなたの人生」っていうことしか言っていなくて。渋谷 そうなんです。違うんですよ。これだけやっててもこれだけ違う。だから、俺は俺が求めているヒーロー像を体現したい。俺たちの音楽を聴いてくれる人の人生が音楽になる瞬間を体験してほしいってやっぱり思う。俺たちは観てくださる方のアイデンティティを確立させるためにいるって。だから「俺の人生が」とか言えるほど、自分の人生が思い浮かばないんですよ。それよりも目の前の人に、今まで生きてきた自分が、これだけでかい音楽を作っているという体験をしてほしいってところに集約しちゃうんです。──そこが渋谷龍太というフロントマンが圧倒的に他と違うところで。これだけでかい音楽を、これだけたくさんの人と向き合いながら鳴らしている事実が、承認欲求とかそういうものに結びついていない。渋谷 ああ、かもしれない。──めちゃくちゃ簡単な言葉で言うと、「俺すげえだろ」にならないっていう。渋谷 「俺すげえだろ」にはなれないです。俺たちの活動をやってるうえでそうなるのって、すごい怖い。あくまでも他者からの評価がすべてで。もしすごいと思ってくれてるんだったら嬉しいし、最高だなと思うんですけど、それは自分の中からは生まれない感情の一個ではあります──前にインタビューさせてもらったときに「うちには柳沢っていうウォルト・ディズニーがいるから、俺はミッキーマウスであるべきだ」「考えて動けるミッキーマウスなんだ」って言ってて、すごいこと言う人だなって思ったんだけど。渋谷 そう──だから着ぐるみのミッキーなんでしょうね。アニメーションで動いてるミッキーではなくて、ディズニーランドにいるミッキー。それがめちゃくちゃ動いた結果、中の俺が脱水症状みたいなのを起こしてる。だからある程度、着ぐるみを脱いで裏に入って「明日休みです、好きなことしてくださいね」の時間が必要なんだなと。常に完璧じゃないといけない、俺はミッキーマウスでいなきゃいけないって、そういう気持ちが強かったんだろうなと思う。ただ、自分がミッキーであるという思想はかなり的確な落としどころだと思っているので、おそらく今後も変わらないだろうなと思います。──そういう渋谷龍太を3人はどういうふうに見ていたと思いますか?渋谷 えー⋯⋯わかんない。毎回突飛なことやってんなと思ってたんじゃないですか? 変なシャツを着だしたり、髪を伸ばしたり、化粧をしたり。まったくわかんなかったと思う。これは諦めてるというより、絶対に理解ができないことだろうなって思ってる。──逆に言うと、その渋谷龍太の選択、決断をメンバーも尊重してくれたっていうことでもある。渋谷 そうです。これまでの選択の中で俺はいくつもミスをしてきたけど、そのぶん精度が上がってるって、おそらくみんなわかってくれてると思うんです。なので、チャレンジをしたいと思ったときは、何か仕込んでるだろうなって思ってくれてるとは思う。──4人それぞれにそういう選択を重ねて、お互いに尊重し続けてきて、それで20年続いてここまで大きくなったって、実はかなりラッキーなことで。渋谷 ラッキーという言葉がいちばんピンときますね。うん、ラッキーです。ラッキーでした。──じゃあこの先20年も同じようにラッキーでいけるのかって言われると、また違う話で。どうするのっていうときに、このアルバムができたし、ヤナギは“告白”っていう曲を書いたと思うんです。渋谷 でも、(“告白”を聴いて)フロアが真っ先に浮かんだかもしれない。メンバー間のことよりもフロアが浮かんだし、そうあるべきだと思うかな。──俺はこの曲はメンバーに向けて書いた曲なんだなと思ったけど。渋谷 それも感じなかったわけではないですけど、オンステージで歌ううえでは、何かしら私事として聴いてほしいんですよ、俺は。ここまで来られたのはあなたのおかげだよってステージから言いたいし、本心で思っていることなので。俺がいかにフロアに感謝しているのかは、どれだけ伝えても足りないなってまだ思ってるんです。もっと自覚持てよ、おまえらって。何フィールドの外出てんだ、みたいな。──まあ日本一、推し活文化と相性が悪いバンドだからね(笑)。渋谷 かもしれない。だからといって観てる人に「私たちもSUPER BEAVERの一部なんで」みたいなことを外で言われると違うというか。これ伝えるの難しいんですけど、「私はファンです」は全然いい。でも痛い関係になると気持ち悪いから「私はSUPER BEAVERのことは応援してません。一緒にやってるんで」は、それ絶対よそで言うなよって。TPOに応じた自分の立場の変動というか、その振り幅を広げてほしいって感覚なんです。やるときはやるぞ、お互い一緒に。ただ、今はあなたにはあなたの仕事があって、俺は今インタビューをしていただいていて──ってやっていくことは違うから、今は違うよって。──上と下じゃない、内と外じゃない、わきまえるときはわきまえようねって絶妙な関係性があるわけじゃないですか。4人の関係性もそうで、一心同体の部分もそうじゃない部分もあって。渋谷 そうですね。ただ、フィールドの外に出たときの関係値なんて構築し得ないぐらいの感じで活動してきちゃったから。特に俺、フィールドから一歩も出なかったと思うんで。──全員が全員ぶーやんみたいにSUPER BEAVERを生きているわけじゃない。だから、それぞれのフィールドの外の人生も見据えたうえで、SUPER BEAVERをやる理由を、もう1回考えようぜっていう。渋谷 本当、そうなんだと思います。そのためにやっぱり個が必要なんだと思う。個人的にですけど、1月からのアリーナツアーのライブ、めっちゃよかったと思うんです。それって、そういう自覚を持ってからで。フロントがより個を意識する、より責任を負うことが、バンドにとって必要な変化だった気がして。それををし続けられるんであれば、俺はプラスに持っていけるって思ってる。──また新しいあり方のSUPER BEAVERが続いていくんだって予感を抱けて、今日すごく嬉しかった。渋谷 それを言っていただけると最高です!
ヘア&メイク=madokaこのインタビューの完全版は発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号に掲載!
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