ストレイテナー@Zepp DiverCity TOKYO

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「種も仕掛けもございません! 俺たちと、お前たち――ロックンローラーなんで『お前たち』とか言っちゃいますけど――俺たちとお前たちだけで、魔法をかけましょう、Zepp DiverCityに!」とやや照れ臭そうに呼びかけるホリエアツシ(Vo・G・Piano)の言葉に、満場のフロアが熱い歓声で応える……6月25日に発売されたストレイテナーの最新シングル『Super Magical Illusion』の一夜限りのリリース記念ライヴとして開催された「Super Magical Illusion Show」。昨年12月まで行われていた「21st CENTURY ROCK BAND TOUR」以来7ヵ月ぶりのワンマンライヴであり、ストレイテナー自身2014年初のワンマン公演となったこの日のライヴ。冒頭から「音楽の嵐を吹かせましょうか!」のホリエのコールから“Melodic Storm”! 一面オーディエンスの拳とシンガロングで埋め尽くされる中、“BIRTHDAY”のソリッドなビートを経て、初期からのライヴ・アンセム“MAGIC WORDS”炸裂!という目も眩むような高揚感に満ちた幕開けから、アンコールの最後を怒濤の熱量で飾った“BERSERKER TUNE”まで2時間強。ロック・バンドとしてのタフネスとその音世界の純度の高さを存分に見せつける、至高のアクトだった。

ストレイテナー@Zepp DiverCity TOKYO
ストレイテナー@Zepp DiverCity TOKYO
ライヴ・タイトルにも掲げられた“Super Magical Illusion”やそのカップリング曲“Wonderfornia”、『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』収録の“翌る日のピエロ”といった新曲群を要所要所に盛り込みつつ、“POSTMODERN”など初期曲から最新ミニアルバム『Resplendent』の“シンデレラソング”“SCARLET STARLET”まで、自らのキャリアを満遍なく網羅するようなセットリストで臨んだストレイテナーの4人。ちなみに、“MAGIC WORDS”のセレクトについては「『Magical』っていうことで、“MAGIC WORDS”投入しましたけど。マジックあるなあと思って」(ホリエ)とのことで、「もうねえかな?……あるわ!」と続けて演奏したのは久々の“Magic Blue Van”!という場面からも、誰よりもメンバー自身がこの空間を伸び伸びと楽しんでいることが窺えて、思わず嬉しくなる。そんな中、この日のライヴで何より強く印象に残ったのは、テナーの4人が至って自然と響かせていたサウンドスケープの堂々としたスケール感であり、やぶれかぶれだったりノー・フューチャーだったりする爆走感ではなく、鍛え上げられたビートでもって大地を踏みしめ、観る者すべての心を掴んで前へ先へと疾駆する力強さだった。

ストレイテナー@Zepp DiverCity TOKYO
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パワフルなロックンロール・ナンバー“From Noon Till Dawn”や、ホリエ&大山純のギターの鋭利なサウンドがせめぎ合う“Little Miss Weekend”の疾走感も、一瞬でも気を許すと振り落とされそうなエクストリームなスリルではなく、オーディエンスをがっちり抱き止めて歓喜の果てへと突っ走るような骨太な包容力を湛えたものだったし、かつてはカオティックなまでの狂騒感に満ちたダンス・ロック最終兵器として轟かせていた“KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]”も、その爆発力はそのままに、ビートとアンサンブルを4人が全身で謳歌するような多幸感とともに鳴り渡っていた。そして、バンドの演奏が揺るぎなく極まれば極まるほど、ホリエが歌い上げるメロディにこめられた無限のロマンとセンチメントがより鮮烈に際立って、Zepp狭しと広がっていく。静謐なピアノ・サウンドをフィーチャーした“イノセント”“シンクロ”や、精緻に研ぎ澄まされた“CLONE”のメロディとバンド・アンサンブルで描き出す、透明度の高い歌と音の世界。切れ味鋭い“クラッシュ”のサウンドからあふれ出す、狂おしいほどのメランコリア。“シンデレラソング”のアグレッシヴなキメを貫いて激しくほとばしる、ホリエの歌の無垢なエモーション……「ロック・バンドとしての誇りにどこまでも忠実に音楽を鳴らす」という試練の道程をも自らの日常として血肉化し、活き活きと己のロックを放射していく4人の姿がそこにはあった。ロックンロールとダンス・ビートの間を行き来するナカヤマシンペイのドラム&日向秀和のベース、淀みなき音の切っ先を交えるホリエ&大山のギターが、文字通りマジカルな祝祭感と満場のクラップを巻き起こしたシングル曲“Super Magical Illusion”は、そんなテナーの充実感に満ちた「今」を何よりも雄弁に物語っていた。

「7ヵ月間忘れてたけど、仲間ばっかりのハコってのはいいね。後ろのほうまで飛び跳ねてる!」と感激を露にするナカヤマ。「ワンマンの時は、ひなっちのところにマイクを置くはずだったんだけど、それすら忘れてるからね、7ヵ月ぶりで(笑)」と、オフマイクMC状態の日向を見て笑うホリエ。「種も仕掛けもないからね、音楽しかないから」と再びホリエの決め台詞が飛び出して拍手が広がったところに、「いや、やろうかなと思ったんだよ。『いきなり俺たちが消えて向こう側から出てくる』とか『シンペイが飛んじゃう』とか……」とホリエがフロアを沸かせたり、「それ全部SEKAI NO OWARIがやってるから(笑)」とナカヤマがツッコんだり、と終始開放感に満ちていたこの日のアクト。そんな中、“翌る日のピエロ”を演奏する前、ホリエはひときわ真摯な口調で語っていた。「36年間、変わっていく世界をずっと見てきたわけですけど。大人になるにつれて、いろんなものが少しずつ見えてきて。努力って報われないんだなとか、一部の人たちの都合でこの世の中が作られてるんだとか……悪いことを言えばそういうことですけど、いいことも見えてきて。僕は偉そうに説教するほどの知識も持ってませんし、度胸もないですよ。でも、音楽を作る時には、自分がこの音楽を作ることで、いい人間になろう、と思って作ってます。これから大人になっていく子供たちの願いが、ひとつでも多く叶いますように。笑顔がひとつでも多く守られますように」……そんな切実な想いが、《もう一回笑ってよ/星になる子供達よ/認め合い 変わる世界/いつかは知ることになる》というホリエの歌声から滲んで、フロアに沁み渡っていった。

ストレイテナー@Zepp DiverCity TOKYO
“TRAVELING GARGOYLE”“羊の群れは丘を登る”で割れんばかりのシンガロングを呼び起こし、Zepp DiverCityをがっつり揺さぶって圧巻のフィナーレ! アンコールでは日向がジャケット&ハットでキメた佇まいで登場。「次のアー写の衣装先取りでステージに上がってます!」とナカヤマ。「『次のアー写』っていう時点で……」というホリエの言葉でにわかに期待感が高まったところに、「9月にニュー・シングルを出します!」という告知が飛び出し、続けて11月には東京・名古屋・大阪・広島のCLUB QUATTROツアーの開催を発表! ここにきてフロアの温度がさらに高まっていく。加えて、新作シングルにも収録される新曲“The World Record”のミュージック・ビデオ撮影がオーディエンスとともに行われるというサプライズも。これまでのストレイテナーのダンス・ロック・アンセムとは異なる、図太いファンキーなビートとマッシヴなスケール感が高次元で渦巻くような“The World Record”の音像が、テナーの「これから」の片鱗を覗かせたところで、「Zepp DiverCity TOKYOの、BERSERKERに捧ぐ!」のナカヤマの絶叫からラスト・ナンバー“BERSERKER TUNE”の紅蓮のダンス・ロック・ビートがフロアをでっかく揺らして――終了。両A面シングル『冬の太陽/The World Record』は9月17日リリース、全4公演のCLUB QUATTROツアー「Swimming City Flying Circus TOUR」は11月22日スタート。メジャー・デビュー10周年アニバーサリー・イヤーの2013年を後にして、さらに逞しく「その先」へ向けて躍動しているストレイテナーの音と情熱をリアルに体感できた一夜だった。(高橋智樹)


■セットリスト

01.Melodic Storm
02.BIRTHDAY
03.MAGIC WORDS
04.Magic Blue Van
05.VANDALISM
06.OWL
07.Little Miss Weekend
08.Wonderfornia
09.Blue Sinks In Green
10.DISCOGRAPHY
11.VANISH
12.From Noon Till Dawn
13.Super Magical Illusion
14.POSTMODERN
15.KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]
16.翌る日のピエロ
17.イノセント
18.シンクロ
19.CLONE
20.SCARLET STARLET
21.クラッシュ
22.シンデレラソング
23.TRAVELING GARGOYLE
24.羊の群れは丘を登る

(encore)
25.The World Record(新曲)
26.BERSERKER TUNE
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