BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014 FINAL 2本立てスペシャルライヴレポート vol.2

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これまでの約20年のBUMP OF CHICKENの歴史の尊さと、これからのBUMP OF CHICKENの未来への期待をひしひしと感じる、本当に素晴らしいライヴだった。

開演時間の18時半が過ぎ、おなじみの“ボレロ”の音がどんどん大きくなり、客電が落ちる。スクリーンには『ALWAYS 三丁目の夕日』で知られる山崎貴監督によるアニメーション。「WILLPOLIS」を探す壮大な旅の最終章は東京ドーム仕様、スクリーンの中で少年と少女が手を繋ぎ、緑色に光る石のような結晶が東京ドームに吸い込まれたと思ったら、実際の客席で腕につけられた膨大な数のザイロバンドが一斉に色とりどりに光る。ステージ前面の白い幕には、バンドセットと、勢い良くドラムを叩く升秀夫(Dr)のシルエット。両脇のスクリーンには、その幕の向こう側、つまりステージ上のメンバーの姿が映る。ナポレオンジャケットを着た増川弘明(G)、チャマこと直井由文(B)がBUMP OF CHICKENと書かれたタオルを客席の5万人に向かって掲げる姿に続いて、藤原基央(Vo・G)が現れ、右手でギターをゆっくりと掲げる。藤原がギターを奏で、“Stage of the ground”を歌い始めると、銀テープが放たれ、幕が落ち、少し間を置いてキャノン砲の音が轟いた。歌声はすごく伸びやかに響き、藤原は右手を耳に当てて、客席と密なコミュニケーションを取る。

続く“firefly”では、「オーオーオーオーオー」の大合唱をチャマが「みんな一緒に!」と煽る。ピンクに光るチームラボボールが客席の上を転がっていき、楽曲の起伏によって表情を変える様子が、蛍のようだ。ツアー中に曲を書くことのなかった藤原が、曲の最初のリスナーである3人のメンバーを喜ばせたくて、「GOLD GLIDER TOUR」中に作ったこの曲が、2014年7月31日、今こうやってBUMP OF CHICKENにとって過去最大の単独公演において5万人の生を眩しく照らす曲になっているのが感慨深い。

「こんばんは、ここでMCじゃないんだけど一言言わせて! 次の曲みんなで思いっきり歌おうぜー!」(チャマ)。“虹を待つ人”だ。チャマがシンセパッドを叩き、紙吹雪が舞う。1番を歌って「こんばんは! BUMP OF CHICKENです。会いたかったぜ! お前ら!!」と藤原が叫ぶ。「遊ぼうぜ、東京ドーム!」。曲の後半さらに、「歌え! お前ら!」。今日の藤原はいつになく雄々しい。5万人の壮観な光景に気合いが高ぶっているのだろう。

ドームならではのど派手な演出による3曲の後、初めての(正式な)MCタイム。「『WILLPOLIS FINAL』へようこそ! BUMP OF CHICKENです! 東京ドーム、イェーイ! 東京に帰ってきました!」というチャマに、「おかえりー!」の声。「会場にいるこのお客さんの組み合わせでのライヴは今日で最初で最後。だから心を込めて演奏します」と宣言。

“サザンクロス”“(please)forgive”と、最新アルバム『RAY』の曲を続けて披露。チャマ「みんな、俺今、超ありきたりのこと言うよ。本当に会いたかった!! ちょっと写真撮っていいですか?」。iPhoneで満開の客席をシュート。「次の曲は、このツアーではやっていない……」と口にすると客席がどよめく。あの空間を震わすイントロから“ゼロ”へ。『FINAL FANTASY 零式』のテーマソングだったことから、『FINAL FANTASY 零式』のキャラクターがスクリーンに。その後もスペシャルな演出は続き、“Smile”では、チャマとも親交が深い写真家・蜷川実花とフラワーアーティスト・東信による草花の映像が流れた。“宇宙飛行士への手紙”の後、4人はステージから降り、客席の間の通路を歩き、アリーナ中央付近に設置された通称「恥ずかし島」ことサブステージへ移動。近づいてくるメンバーの姿に興奮するお客さんとハイタッチをしながらの移動だ。

サブステージ上で、おどけて手を振ったりする藤原。笑顔でアコギを爪弾き、静謐で温かみのある“銀河鉄道”を歌って、またおどける。ここでチャマによるメンバー紹介。ツアー中に始めたTwitterのアカウントをみんなに復唱させて「FOLLOW ME!!」と叫んだり、ネットを使わない人向けに「心のTwitter」なるものがあると言い、耳を澄まさせた上で変な声で「みんな大好き」と呟いたりと、はじけている。「うちのヴォーカル&ギター、作詞作曲担当。ここまでは100点。ただすごく目が悪い」と藤原のことを紹介。待ち合わせをすると近くまで来ても気付かないというエピソードを披露すると、それを聞いて笑い声をあげる藤原。「東京ドームにお集まりいただ……」と途中で噛み、笑いを呼んだ後、「大体のものは見えてなくて、他のメンバーが『あれ見て!』って喜んでいても見えてないんです。でもメンバーが喜んでる姿は見えるんです。それでいいかなって思ってる」という温かいエピソードを口にする。チャマ「次の人はBUMP OF CHICKENで一番背が高いです。俺が取れないものを取ってくれます」と、増川が高いところにあるものを取る真似を挟んで「ほれてまうやろ!」。「こんばんは。景色が綺麗で綺麗で、(ステージに)出てきて泣きそうになりました」(増川)。続いては、「今年の夏はそんなに黒くない。なぜならツアーで室内にいるから。でもみんなよりは黒い。褐色の彗星、ドラム升秀夫!」(チャマ)。升にスポットが当たるが、「この人地球が始まって以来、ライヴで喋りません!」ということで升は無言のまま。アップテンポでウエスタン調の“歩く幽霊”のアコースティックバージョン。再びメンバーは客席内をハイタッチしながら、メインステージに戻る。

“ray”のイントロが聴こえ、スクリーンには飛行船、そして、ステージ中央のバンドセットの頭上にダイヤモンドの形をした立体物が登場し、初音ミクの姿が。ギターロックバンドBUMP OF CHICKENと、世界中から愛されるキャラクター初音ミクの歴史的コラボレーションがライヴでも実現した。次の“トーチ”では、チャマはニコニコしながらベースを弾き、増川は何度も腕を突き上げる。

BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014 FINAL 2本立てスペシャルライヴレポート vol.2
藤原「調子悪い人いないですか? いつも前の方ギュウギュウだけど、今日みんな椅子なんですか、大丈夫そうですね」と言いつつ、「周りの人を気遣ってください」。なぜかべらんめえ口調で「ありがとよ!」と言い放つ。「あと五分の一くらいで終わりですね。あっという間ですね。早かったな。ここまで12曲。あっという間だった。こういうのは君たちのせいなんですよ。僕にとって僕らにとって、君たちが楽しめる相手だったからここまであっという間だった。わからない人いる?」と訊き、「はい!」という少数の声に向かって「わかれ!!」というやりとりに笑いが起きる。そういう感情の時に寂しさを回避する方法として、「まぶたを閉じると、一筋の光が見えてくる」というような話を始める藤原。ただQVCマリンフィールドでのライヴでそれをやったら、一筋の光ではなくてバッタだった、という笑える話も。ここで最近俄かに流行っている「ましゅかわしぇんしえぃ」を登場させるべく、「会いたい時は呼ぶんだよ! ましゅかわしぇんしえぃ!って」と藤原。5万人の「ましゅかわしぇんしえぃ!」コールに対し、「うん」と即座に応える増川。藤原は「もっとためて欲しかった」とポロリ。意に介せず増川は広大な客席を見て、「ななめの部分、元気残ってますか?」「横の部分!」と、独自のスペース指定でのアジテートをし、「わっ、すげえ。(歓声が)遅れてくる感じ」と喜ぶ。「元気まだ残ってっか!? カモン!」という増川のシャウトに藤原が「カモン出た! カモン出ました」と嬉しそう。

初めてのドームに興奮を加速させるメンバーのやりとりに続いての、“white note”の会場一体となった盛り上がりも楽しかった。スクリーンに手拍子や足踏みの指示が出て、みんなで合唱。とてもうまくできたのでお客さんに向けて拍手を送るメンバー。
 どんどん楽しくなっている藤原。「夏は終わりですか? 次の曲は古の昔から伝わる『オーイェーアハーン』という曲です。この場所にいるなら知ってるんじゃないですか?」。少し歌ってみんなで「オーイェーアハーン」の練習。メジャーデビューをしたばかりのBUMP OF CHICKENが、見えない「何か」を探すべく必死に手を伸ばしながら生まれたこの曲が、東京ドームという場で大きな多幸感を持って鳴らされる光景にぐっとくる。「でっけえ声で歌ってくれよ! “天体観測”!」と藤原が叫ぶ。歓喜は止まらない。藤原「すっげえ楽しかった、ありがとう! “ガラスのブルース”!」。性急なビートが駆け抜ける。「ガラスの眼をしたお前ら、叫べ!」「もう一度叫べ!」という藤原の高ぶりと呼応するように、ザイロバンドが光り、色とりどりの紙吹雪が舞い、5万人の笑顔が輝く。デビューから15年間、結成からすると20年間、聖域とも言える4人のBUMP OF CHICKENを守り、戦い続けてきた年月の源が、今ここでさらなる輝きを放っている。「どうもありがとう!! どうもありがとう!!」と叫ぶ藤原。もう本当にそれしかないのだろう。

「今回の『WILLPOLIS 2014』は今の“ガラスのブルース”で終わりだったんですけど、今日は新しい曲聴いてください」と照れながら話す藤原。「あーやっと歌える」と安堵にも近い表情を浮かべ、「“You were here”って曲です。聴いてください」。ステージに腰掛けたチャマのベースが鳴る。スクリーンには、ツアー中のメンバーと客席と、各地のたくさんのファンの様子。時折藤原のファルセット気味の高音が限界まで感情を高める、静かなゴスペルチックな曲。「会いたい」「会いたいよ」というフレーズが丁寧に繰り返され、BUMP OF CHICKENがどれだけのエネルギーをライヴからもらっているか、どれだけ大切なのかということが歌われている曲だ。これからたくさんの人にとって特別な曲に育っていくのだろう。

4人が去ってしまったステージに向かって、“supernova”の合唱が歌われ、再び4人が登場。「ザイロー! オン」とチャマが言って、記念撮影。「『WILLPOLIS FINAL』、みんなと作れて良かったです、ありがとう!」とチャマ。「東京ドームが全然取れなくて、今回のセットは1日でスタッフが設営した」という驚きの裏話を披露し、みんなでスタッフに向けて拍手。「BUMP OF CHICKENを支えてくれてるリスナーのみんなほんとありがとう! そしてここにいるみんなと僕らを繋げてくれた音楽、いつもありがとう!」(チャマ)。「ツアー中に読んでたジャンプも最新号にたどり着いた」というツアーの長さを表すエピソードを披露し、いっぱいいっぱいになって「秀ちゃん何かある?」と喋れない升に振る増川。升は客席からの「秀ちゃんコール」を受けて立ち上がり、マイクレスで「さいこーです! ありがとう!」。チャマ「っていうことで1曲やらしてください!」。メジャーデビューシングル“ダイヤモンド”だ。

「ありがとよ!」と勇ましく叫ぶ藤原。oiコールが起きた“メーデー”。この半年間、色々なことがあった。初のベストアルバムリリース、地元千葉県のQVCマリンフィールドでの初のスタジアムライヴ、アルバム『RAY』のリリース、藤原の肺気胸によるライヴ延期、初の地上波出演……そしてこの東京ドーム公演と、新曲“You were here”の誕生。そんな怒涛の季節を締めくくるべく鳴らされたのは《再び呼吸をする時は 君と一緒に》という、究極のコミュニケーションを求める曲だった。升がスティックを高々と振り上げて演奏が終わり、チャマはやりきったかのようにうずくまっている。4人はステージから降り、最前列の人々にハイタッチしながら走る。チャマは紙テープを投げ、「みんな本当にありがとうございました!」。Tシャツの左だけ腕まくりした増川は、「また会いたいね! またやります!」と言いつつ、途中で自分でも何を言っているかわからなくなり、笑顔で首をかしげながら去っていった。ひとりステージに残った藤原、「今日は本当にありがとうございました!」と深々とおじぎ。「僕ら千葉県佐倉市の臼井って町で、石蹴りとか鉄棒とかメンコとかやって育った4人なんですね。今年で全員35歳で、バンド組んで、音楽やってきて、15歳の時組んで、だから20年くらい経ってて。大好きなこと仕事にしてると楽しいことばかりじゃなくて、勇気を出さなきゃいけない時とかすごく覚悟しなきゃいけない時とかあって、すごいびびってるんですね。音楽にすごい助けられてるし。付いてくのがやっとなんだよね。怖いことばっかなんですね。一生の内の勇気をもう使い果たしてるんですね、びびりだから。でも君たちのおかげで今こんなに幸せです。本当にありがとう。メンバーひとりひとりは田舎っぺなんですね」と堰を切ったように話したところで、ステージ袖にいるメンバーを見て、「笑ってるけど(笑)」。「でも僕らの背負ってる看板はめちゃくちゃかっこいいんだなって君たちに教えてもらいました。ありがとう! またライヴやるから来てね!」と叫んだところで、他の3人が再びステージに出てきて、チャマと藤原が嬉しそうに、誇らしげに抱き合う。4人並んで手を繋ぎ、マイクレスで「ありがとう!」と力いっぱい叫ぶ。ここでさらなるサプライズ。藤原がはにかみながら「曲やることになったんで、喋るんじゃなかったな(笑)」。ひずんだギター、ラフな英語。“DANNY”だ。凄まじい興奮にドームが包まれる。「みんなまた会・お・う・ね!」と歌うように藤原が言う。4人がぎゅっと集まって、ジャーンと音を奏で、約3時間の祝祭は幕を閉じた。最後の最後、藤原がカメラに向かって、リストバンドを「ジャーン!」と取ると、そのリストバンドでずっと隠されていた手首にはニコルがいた、というお茶目なシーンもあった。

BUMP OF CHICKENという4人だけの共同体が、15年、20年の時を経て、今まさにここにいる5万人、果てはその先にいる何十万、何百万という人々に知られ、そのたくさんの心に息づいている。そのかけがえのなさが体験できた、素晴らしい3時間だった。そして、その体験がこの先も増幅していくのだという大きな手ごたえがあった。

8月30日発売の『ロッキング・オン・ジャパン』10月号では、表紙巻頭でこの歴史的ライヴの模様とメンバー全員の独占インタヴューでもって、大特集を組む。メンバー自身の言葉でこの日のことと、これからのバンプのことが語られるので、楽しみに待っていてほしい。(小松香里)


■セットリスト

01.Stage of the ground
02.firefly
03.虹を待つ人
04.サザンクロス
05.(please)forgive
06.ゼロ
07.Smile
08.宇宙飛行士への手紙
09.銀河鉄道
10.歩く幽霊
11.ray
12.トーチ
13.white note
14.天体観測
15.ガラスのブルース
16.You were here

(encore)
17.ダイヤモンド
18.メーデー

(encore 2)
19.DANNY
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