L’Arc~en~CielとBUMP OF CHICKEN - HYDEと藤原基央の世界観から他者とのつながりを考える

私はこれから2ヶ月ほど、フェス状態であり、ひとりで密かに盛り上がっている。なぜかと言うと、大好きなBUMP OF CHICKENとL’Arc~en~Cielのボーカルhyde(※ソロ表記はHYDE)が相次いで、仙台でもライブを開催し、新アルバムをリリースするからである。HYDEライブのチケットは入手済みで、バンプに関してはチケットが落選したというのに、行けることを前提に予定を組んでいる始末だ。
落選を知った瞬間、<なんとなく僕も走りたい チケットも持っていないのに>というバンプ「GO」の歌詞が脳裏に浮かんだ。機会があれば諦めずにチケット確保に勤しむつもりだから、多少は落ち込んでいても、心の中の希望という名の宝石はまだ消えていない。箱ライブだから仕方がない。そう簡単に当たるわけないのだからと自分に言い聞かせている。ああそうか、ツアー名に含まれる「ark」というワードの意味は「箱舟」だった。追加公演の箱ライブはここから来ているのかもしれないと今さら気付いた。
「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」にもHYDE、バンプ共に出演すると発表された。個人的なスケジュールはいつもとたいして変わらないのに、双方のアーティスト関係の予定で、私のスケジュール帳は埋まっている。
<最近は別に元気じゃない それが平常で不満もない 生活に変化は求めない 現実とマンガは重ねない>「(please)forgive」
という歌詞のように、いつもは何となく淡々とした静かな日常を過ごしている身としては、珍しくテンション高めの自分が信じられない。リアルでは感情を表に出さないタイプだけれど、この抑えられない高揚感を言葉に残したくて、この場を借りて書くことにした。
ここまでは私がバンプとHYDEをどれくらい好きなのかを簡単に説明した。これを踏まえて、これから本題を述べようと思う。

バンプの新アルバム名とツアー名を知った瞬間、漠然とした憶測から、過信に近い確信に変わった。それは何かというと、ラルクとバンプにはつながりがありそうだということだ。新アルバム名は『aurora arc』、ツアー名は『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』。バンプより先にラルクにハマっていた私としては、どうしてもarc(弧)とark(箱舟)の方に目が行ってしまった。L’Arcは『ark』というアルバムを過去にリリースしている。しかもその時は『ray』というアルバムと二枚同時リリースだった。『RAY』と言えば、バンプのアルバム名でもある。さらに、ラルクは『BUTTERFLY』というアルバムをリリースしており、その後バンプは『Butterflies』というアルバムを発表している。ラルクには『SMILE』というアルバムが存在し、バンプには「Smile」というシングルが存在する。ラルクには「GOOD LUCK MY WAY」というシングルがあり、バンプには「グッドラック」というシングルがある。今回、『aurora arc』に収録される「新世界」という曲からは、ラルクのシングル「New World」を思い起こした。

このように以前から共通点の多い二者であるが、これまではたまたま偶然だろうとしか思っていなかった。けれど今回、バンプの新アルバム名を知って以来、偶然ではなく、やや意図的なのではないかと思うようになったのである。
ちなみに先にも述べたように私は両者とも大ファンであり、否定するつもりはさらさらない。むしろ両者が互いをリスペクトしているのだろうと良いように捉えている。それを前提に、両バンドの因果関係について考えていきたいと思う。

バンプはバンド名を考える際、「ラルク アン シエル」というリズムを意識して、「バンプ オブ チキン」に決定したという。つまりバンプがラルクを意識したことがあることが伺える。
ラルク側のバンプについて言及はほとんど聞いたことがないけれど、私はずっとラルクの曲と、バンプの曲は通じるものがあると思っていた。

一曲目はラルクのアルバム『KISS』に収録されている「雪の足跡」である。hydeが大好きだという寒いからこそ、温め合える冬を意識した大切な人と雪道を二人で歩いていく幸せな光景が描かれた美しいバラードナンバーだ。この曲を初めて聞いた時、バンプの「スノースマイル」を思い出した。
<冬が寒くって 本当に良かった>「スノースマイル」
と冒頭からhydeの冬に対する世界観に似ていると思った。こちらもまた温かいバラードだ。「雪の足跡」と違う点は「スノースマイル」の場合、幸福な二人の時間が続いているわけではなく、大切な君と歩いた雪道を今はひとりになった僕がひとりで歩いていくという点だ。それを除けば、両者の寒さを感じさせない温かい冬の描写は重なり合うと思う。

二曲目はラルクのアルバム『BUTTERFLY』に収録されている「未来世界」である。ラルクにしては珍しく、子ども向けの子守歌のようにさえ聞こえる楽曲だ。この曲を聞いた時は、バンプの「魔法の料理~君から君へ」をすぐに思い出した。「未来世界」は大人の視点から他者である子どもに向けられた曲だが、「魔法の料理~君から君へ」の方は大人になった自分が子ども時代の自分自身に向けた曲という点で違いはあるものの、<正義のヒーロー>「未来世界」と<正義のロボット>「魔法の料理~君から君へ」という似た言葉が歌詞に登場する。童謡のような叙情的な世界は類似していると二曲を聞く度に思っていた。

三曲目はラルクのシングル「MY HEART DRAWS A DREAM」に関してである。
<さあ 手を伸ばし 今、解き放とう> <夢を描くよ>
というフレーズがある。
最近ひたすらバンプの「Aurora」を聞いているせいか、似ていると思うようになった。
<解き放て あなたの声で> <もう一度 もう一度 クレヨンで>
どちらの曲も未来へ向けて諦めない前向きな姿勢が見られる。
<夢を描くよ>と<クレヨンで>という重要なワードが繰り返される点も似通っている。

何を言いたいのかと言うと、hydeと藤原基央の世界観がすべてではないけれど、どこか似ていて、だからこそ、私は両者を好きになったのだと、今回初めて気付いたのである。基本的に二人ともやさしい人柄だと思う。そのやさしさが歌によく表れていて、他者を惹きつける魅力が備わっている。二人とも自分の信念をしっかり持った上で、他者を寛容に受け入れて、人とのつながりを大切にしてくれる人たちだからこそ、私は両者を好きになれたのだと実感した。ラルクとバンプはカテゴリーから考えると同じロックバンドだけれど、ファン層はかけ離れている気がしていた。私と同じように、両者とも好きだと言ってくれる人がいてくれたら、個人的にうれしい。ラルクは好きだけれど、バンプは好きだけれど、というように、いずれかしか興味がない人には、是非、両方のバンドの曲を聞いてほしいと思う。そしてそれぞれのバンドにそれぞれ新しいリスナーが参入してくれたら、それは良い相乗効果が期待できるはずだ。

さらに誤解のないように付け加えておくと、冬が好きとか子ども時代を思い出すとか未来を描くなんて、二人に限らず、誰でも持ち得る気持ちだから、似ている曲があって当然なわけで、私がたまたまラルクとバンプが好きだから、この二者のみを比較対象としてしまったわけだが、私なんかよりもっとたくさんの音楽を聞いている人からすれば、似た世界観の曲なんて、いくらでも存在するし、もっと他にもあると指摘したくなるだろう。しかし私は両者のファンとして、今回はあえてラルクとバンプのみの共通項を書き出してみた次第である。

もっと端的に言えば、言葉も音符も厳密には無限ではなく、音楽は限りある組み合わせで構成されている。だから似た曲が生まれて当然と言えば当然のことだ。しかも仮に影響を受けた音楽や好きな音楽が似ているとすれば、そもそも音楽性とか言葉のセンスが似て当たり前だ。だから私は似た曲が嫌いじゃない。むしろ好きなのである。

サウンドに関しても、ラルクの場合、初期は幻想的でノスタルジックな傾向が顕著で、バンプの場合はパンク色が強く、ハートにガツンとダイレクトに響くような曲調だったが、両者とも、時代のニーズに合わせて進化を遂げている。中期になると、ポップでよりキャッチーな曲が増え、今となってはオシャレなダンスミュージックにも成り得るような曲まで作り上げている。昔の方が良かったと思うリスナーも中にはいるらしいが、私は変化し続ける両者の音楽がいつでも大好きだと胸を張って言える。様々な音を試しつつも、歌の根底にある伝えたい思いは基本的には変わらないと思う。だから私はきっと彼らが新しい音楽を生み出し続けてくれる限り、一生聞き続けると思う。つまり私はラルクもバンプもずっと大好きなんだ、きっと。

最後に、他者とのつながりを意識できる両者の代表曲をピックアップしておく。
ラルクは「Link」、バンプは「リボン」が挙げられると思う。
<たとえ遥か遠く離ればなれになっても繋がり合う想い>「Link」
<僕らを結ぶリボンは 解けないわけじゃない 結んできたんだ>「リボン」
つながっていられる他者がいるということは当たり前のことじゃなくて、共に相手を思い合い、強い絆で結ばれているからこそ、奇跡的につながっていられるだけなんだと2曲を聞いて思った。

何億人もいるこの世界の中で、私はラルクとバンプというアーティストを知って、彼らの曲を好きになって、そこからファンの人たちとつながりを持つことができた。ラルクに関して言えば、一緒にライブに行ける友人もできた。バンプだってこれからライブに行ければ、つながりを持てる人ができるかもしれない。そう考えると、いつかライブに行けたとして、バンプのメンバーに会えるだけでなく、バンプを好きな人たちの輪の中に入れることもうれしい。

ラルクとバンプという2つのロックバンドのつながりから得た結論は、音楽が他者とのつながりを持たせてくれる場合もあるということだ。ひとりで黙々と聞いている音楽も悪くはないけれど、好きな音楽を他者と共有できるということは幸せなことだと気付いた。自分に関して言えば、特にこの夏は、自分の殻の中に引きこもっている場合じゃない。いつもはひとりが好きな私も、仲間を探しに行こうと思う。ラルクとバンプがつながり合う大切さを教えてくれたから。


この作品は、「音楽文」の2019年7月・最優秀賞を受賞した宮城県・小林宙子 さん(36歳)による作品です。


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