君は君のままでいて 僕は僕の王冠を! - UNISON SQUARE GARDENのかっこよさ

 UNISON SQUARE GARDENというバンドは、かっこいい。
 分かりやすく派手なかっこいいことをするわけではなし、少なくともすべての人に寄り添い勇気づけようとする音楽ではない。それでも私は、彼らの音楽をかっこいいと思う。そして、優しいと思ってしまう。彼らの音楽は、何よりもまず彼らのものであるからかっこよく、そして優しい。

<ナイフを持つ その、本当の意味が あなたにもし、もしわかるのなら すごく嬉しいんだ/オリオンをなぞる>
 高校生の頃、この歌詞に打ちのめされた。ナイフ、すなわち攻撃的で危険なものは否とされる学校で、社会で、この歌詞は私に、それこそナイフのように突き刺さった。世間から危険だとみなされ、忌避され、冷たい目で見られようとも、それでも守りたいものが、貫きたい正義が、この歌詞を紡いだ人たちにはある。そう感じた。そしてその正義はきっと、誰からも理解されなくてもいいのだ。周りなんて構わずに、彼らは正義を貫く。それでも、もしも、もしもでいいけれど、他の誰でもない「あなた」にこの意思や正義が伝わるのなら、「すごく嬉しい」。かっこつけない素直な歌詞が、とてもかっこいいと思った。こんな人間になりたいと思った。そして、これを明るくてきらきらした音楽に載せて何でもないことのように伝えてくれる彼らは、とてもやさしいと思った。「自分たちもそんな風に、分かってもらえたらいいなあなんて思いながらも、自分の正義を貫いてるんだ」。そう言われている気分だった。強く楽しそうに見えるけれど、その後ろの弱いところまで見せてくれる彼らは、私にとっての目標となっていった。

そこからUNISON SQUARE GARDENというバンドにはまり込んでしまった私は、たくさんの曲を聴いた。大学生になって都会に出て、はじめて生で彼らの音楽を感じた。「自由に」というメッセージのとおり、ファンが自由に楽しんでいた。初めてのライブで緊張していた私も、自分というものを忘れて彼らの音楽を楽しんだ。それでも、一番自由だったのは、彼ら自身だった。MCがほとんどない駆け抜けるような展開、笑顔、自分たちの音楽への誇りと自信。何もかもがまぶしかった。「自分たちはここで自分たちの音楽をしているから、君たちも好きに楽しんで」それが彼らなのだと、わかった。彼らに楽しませてもらったのではない、彼らの音楽を自分なりに自由に楽しんだのだ。ライブに行くたびに、心の底からそう思える。
雑誌などで知った彼ら自身やそれぞれの過去は、決して輝かしいばかりではなかった。それでも、UNISON SQUARE GARDENとして音楽をする彼らは、誰よりも輝いて見えた。誰よりも自分たちの音楽を楽しみ、誇りをもつ人たち。私もそんなものを見つけたいと思ったし、今は見つかったものに向かって走っている。

新曲が出るとなると一か月前からそわそわし、リリースされれば何度も何度も聴く。どの曲においても、彼らの正義は変化はすれど揺らいでいないのを感じ、力を貰う。
<曖昧なんて論外の優しいmusic どうしようも馴染めないから 差し出された手は掴まなかった/Dizzy Trickster>
<最低でも半数は見放していく僕の手を掴むのか 別に構わないけど 拍子抜けする準備と いつでも帰れる準備はある?/お人好しカメレオン>
<ただ甘やかす事はしないから あらかじめ出口チェックしておいてよ/お人好しカメレオン>
いつも一つの答えを出させようとしたり、無理に前を向かせようとしないユニゾンの音楽は、いつも私に自分の力で動き出すためのヒントと原動力をくれる。同情と甘やかしをしない「優しくない」彼らを見ると、いつも自分で起き上がるための方法を探そうと思える。
<もしも君が孤独の中に居て 泣き声も聞いてもらえないなら 思い切り泣けばいい 立ち上がる頃に強くなる/さわれない歌>
<だから、生きてほしい!/Invisible Sensation>
彼らは、目の前でファンが泣いていたって手は差し伸べない。ただ、自分たちはこうだよと、教えてくれる。弱いところも強いところも、示してくれる。受け取り手への彼らのメッセージは、ただの「願い」である。あくまで自分たちの言葉で、他人のための言葉を紡がないからこそ、前を向けない時も届いて来てくれる。手を差し伸べないからこそ、涙の先に立ち上がれた時、それは立ち上がった自分の力であると胸を張って言うことができる。それが彼らの優しさなのだ。そしてそれは、きっとUNISON SQUARE GARDENの音楽という手を掴んだ受け取り手への信頼からくる優しさだ。彼らはいつだって、わからずやには見えない魔法をかけてくれる。

そんな正義を、彼らは貫く。自分たちの音楽を、自分たちのものとして紡ぐ。それでも、そこに集まった<馬が合った諸君たち/Micro Paradiso!>を見放すことも決してない。だから彼らは、かっこよくて、優しい。
私にとってユニゾンは、自分が自分でいるためのヒントをくれる存在だ。でも、自分が自分でいるためのファクターも、大切なものも、正義も、別のところにある。ユニゾンを聴いて、勝手に解釈して、勝手に憧れて、勝手に生きようと思って、勝手に見つけただけ。そして、彼らの音楽に触れるとき、私はそんな自分がかっこよくて、大好きだと思える。

<君は君のままでいて 僕は僕の王冠を!/I wanna believe、夜を行く>

今日も彼らの音楽を耳に、自分の王冠を得にゆこう。


この作品は、「音楽文」の2018年9月・月間賞で入賞した大阪府・なぎまるさん(21歳)による作品です。


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