〝完全感覚Dreamer〟という名の「証明」 - ONE OK ROCK×Takaの覚悟と決意、その歌声に宿るチェスターを感じながら

《This is my own judegment!! Got nothing to say!!》

ONE OK ROCK”破竹の勢いとはこのことか。日本のロックシーンを飛び越えて物怖じしないその姿勢が、世界のロックシーンまでをも巻き込み、今まさにワンオク色へと染めようとしている。イギリス・ロンドンの「HMV」には彼らのCDが並び、それを求めて地元のファンが買いに訪れる。また海外で行う公演はこぞってソールドアウト。学生時代に読んだ音楽漫画の世界が、そこで現実となり、この目の前に広がっている。だが、彼らも順風満帆だったかと言えば必ずしもそうではない。海外での地道なライブ活動を経て、少しずつではあるが世界各地のファンの心を掴み、この成功に繋がっていることは忘れてはならない。海外ツアーでの長距離移動、知らない土地土地でのライブ公演、自然と疲労も溜まり、心を打ちのめされることもあったはず。それでも、現在に至る過程は「光の裏にある影に過ぎない」と言われれば当然か。

《You know I've got to be NUMBER ONE!!》

結果が物を言う世界だ。彼らの努力の証明が形となった今があることに意味がある。僕らでは到底理解できないシビアな世界だが、そこで戦い抜くと決めたTakaのその決意に、一ファンとしてだけではなく、同じ日本人として心から敬意を表したいものだ

以前、横浜スタジアムにて開催されたワンマンライブ“Mighty Long Fall at Yokohama Stadium”で、特に印象に残ったTakaの言葉がある。

「単純に俺らの夢が、俺らの求めてる音が海外にあるからなんです」

「俺らからしたらちょっと自販機にジュース買いに行くようなもんだよ」

その言葉からも分かるように、彼が思う世界とは、もっとフランクで身近な場所だということだ。またホーム=日本、アウェイ=海外といった分け目も感じられない。つまり、ワンオクを求めるファンがいるその場所こそ、彼にとっての居場所であり、“求められれば何処へでも駆け付ける”といった熱い思いが、Takaの心を突き動かす原動力になっているのは間違いないだろう。

そして、語気を強くしたTakaは“夢や希望、彼自身の人生の在り方”を、僕らに問いかけるようにこう語りかける。

「そら、ときに諦めたっていいよ。投げ出してもいい。でもその先に必ず自分の信じた未来があることを、心に置きながら何かを投げ捨ててください」

「俺らに変えれることは必ず、たくさんあります。年齢も性別もそんなもの一切関係ありません」

彼の人間性や価値観、全てがここに凝縮されたようなその言葉に、とても胸が熱くなったのを覚えている。彼の言葉を借りれば「人生は時に残酷だ」それでも、何かを投げ捨てたその先にも必ず、夢の続きがあるんだと、そして、闇を光に変える力を誰しもがその胸に持っているんだと、Takaは自ら示し教えてくれたように思う。

「どんな小さな光も灯せば必ず、照らすことができます。それだけは忘れないでください」

そう言い残してTakaが歌い上げる〝Be the light〟観客一人一人が照らす“スマホライトの光”大きくも小さくもそれぞれの胸を灯す輝きが、スタジアム全体を優しくより美しく、彩り包み込んでいたように思う。曲のラストで叫ぶTakaの圧巻のシャウト。夜空を突き抜けるようなその歌声から伝わる彼の“生き様”そして、年齢も性別も人種さえも、全てを超越するほどの“音楽の力”を、まざまざと見せつけられた。また、その瞬間“ONE OK ROCK”というロックバンドが“Taka”という一人の人間が、この胸の奥深くに強く刻まれたのは言うまでもない。本当に素晴らしいライブだった。

《絶対的根拠はウソだらけ/いつだってあるのは僕の/自信や不安をかき混ぜた/弱いようで強い僕!!》

2017年1月、JAPANロックの今と未来を大きく左右するだろう、革新的かつ挑戦的な1枚のアルバム『Ambitions』が発売された。本作は今一度原点に立ち返り、彼らが本当に鳴らしたかった音をその集大成として、余すことなく詰め込んだワンオク史上最高傑作の作品だ。“野望”と名付けられたそのタイトルが物語っているように、世界への扉を今叩き潰そうとする“彼らの覚悟”とその“断固たる決意”がここに刻まれている。

そんな中、その年の7月に満を持して発売されたのが“LINKIN PARK(マイク&チェスター)×ONE OK ROCK(Taka)”が表紙巻頭を飾る『rockin’on』だった。5月にはリンキン待望の新作アルバム『ワン・モア・ライト』が発売されており、求める色は違えども、常に変化を求め変わり続けようとする、その両バンドの姿勢、音楽への熱い思いが、その時互いを強く結び付けたと言っても過言ではないだろう。“2017年日米ロック頂上対談!”と題されたこの夢の対談でTakaは「僕は最初に洋楽を聴くきっかけになったのがリンキン・パークだったので」とその胸中を明かしている。また当時、英語が話せなかった彼は「リンキンの曲を何度も何度も聴いて覚えたんです」と語っていることからも、Takaのルーツにはリンキンの曲が流れていることが理解できる。この時点で、リンキン・パークの北米ツアー&来日公演の際に、ワンオクとの共演も既に発表されていた。リンキンとの共演はTakaにとっての夢であり、僕達リスナーにとってもその年最高のロック・イベントとなるはずだった。チェスター自身もワンオクを「すごくユニークだと思うのは、アメリカでも全く問題なく通用するところだね」と評価し「『ONE OK ROCKはこれだけすごいんだ!』っていうところを、アメリカのオーディエンスと分かち合えたらいいよね」と、その共演を本当に楽しみにしていた。そんな矢先の出来事だった。皆が突然の悲報に胸を痛めたのは──。

その後、開催されたチェスター追悼コンサートに、日本のアーティストとして唯一ステージに立ったのがTakaだった。渾身の力を振り絞り〝Somewhere I Belong〟を堂々と歌い上げた彼が伝えたかったこと、チェスターの心に届いただろうか。

また、リンキン×ワンオク対談の際に掲載された写真の中で、特に記憶に残った一枚がある。Takaの肩に目をつぶり寄りかかるチェスターの写真だ。今だから思うが「あとは任せたよ」と彼の肩を枕がわりにして眠っているかのようなチェスターの姿に、この対談の必然的な深い意味合いを感じてならない。

少年時代からリンキンのことを深く理解していたTakaだけに、チェスターも彼には“ありのままの自分”を見せることができたのかもしれない。〝Somewhere I Belong〟を歌ったTakaにしか伝えられなかったこと、チェスターにとっての数少ない居場所がそこにあったと信じたいものだ。そして、チェスターに愛されたTakaだからこそ、伝えられることがきっとあるはず。Takaの歌声に宿るチェスターを感じながら、これからもずっと彼の活躍を大いに期待したい。

《So now my time is up/Your game starts, my heart moving?》

30代になって思う。20代の10年間がどれだけ大切な時間だったかと。だからこそ、問う。これからの10年間をどう生きるかと。君も僕も彼にとっても、人生は一人一つ。今をどう生きて、どう楽しむかは自分次第、言わば自由だ。それなのに、見えない足枷に僕らは苦しむ。踏み出すその一歩を遠ざける不安や苦悩、時には見失う自分。またある日、小さな石ころに躓き、崖から落ちることだってある。転げ落ちた真っ暗な谷底で、必死に目を凝らしても明日は見えない。途方に暮れてふと見上げた空から、ただ真っ直ぐに僕らを照らす一筋の光。その暗闇の中を「ここだ、こっちだ」と、震える心を強くたぐり寄せるようなその歌声、その音楽、その言葉に気付いた時、Takaは微笑みそっと手を差し伸べてくれる。そして、彼はこう言い放つ。

《Will we make it better or just stand here longer》

一見、突き放したようにも聞こえるその言葉に隠された、彼の優しさや温もり、逞しさこそが“ONE OK ROCK”の根底にある勇気や希望そのものなのだろう。

《どうやったっていつも変わらない/カベをヤミをこれからぶっ壊していくさ!!》

そして、どん底から見上げたその壁を、傷つきながらもまた臆せず登り始めたその一歩こそ、彼が心底伝えたい“本当の強さ”なのかもしれない。

《「完全感覚Dreamer」がボクの名さ》

ONE OK ROCKの絶対的フロントマンである“Taka”「人は皆、臆病で弱い生き物だ」だからこそ、それを受け止めた上で彼は歌う。その心を見透かすように、敢えて強い口調で── 。

《Say it “we can't end here till we can get it enough!!”》


この作品は、「音楽文」の2018年9月・月間賞で入賞した奈良県・ケットンとあんまんさん(32歳)による作品です。


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