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    黄金の覚悟 - 挫折した私をBUMP OF CHICKENが救ってくれた

    私には夢があった。声優になること。
    そして、声優になって自分が主役のアニメでBUMPに主題歌を歌ってもらう事。
    この夢は中学生の時からあって、高校卒業とともに上京し、その夢に向かって進んでいった。

    そんな私も25歳になり、タイムリミットがきた。
    このタイムリミットは上京時に自分が決めた年齢制限で、だらだら続けても仕方ない!無理だとわかった時に別の道にいけると思う年齢だった。

    ああ、諦める時がきたんだ。

    そんな時に、専門学生だった頃、BUMPのファンだった講師から、当時、発売されたfireflyについての言葉を思い出した。

    今回のBUMPの新曲は諦める事を歌った唄だね。

    その当時の私はそう言われてfireflyを聞いても、夢を追い始めたばかりで、あまりピンとこなかった。
    諦めの唄だと思ったけど、諦める事が頭になかったから。

    そんな事を思い出した日、久しぶりにfireflyを聞いた。
    そうしたら、涙がとまらなかった。
    こうも今、悩んでいた事を、歌っていたから。

    「色々と難しくて 続ける事以外で 生きている事 確かめられない」

    タイムリミットが近づくにつれ、思っていたこと。
    もし、夢を諦めたとして、私はこの先、生きていけるのだろうか?生きている意味があるのだろうか?
    私は夢を追っているから生きる事を実感していたし、友達と遊ぶ事、バイトを朝から晩までする事、趣味を楽しむ事、を全力で出来ていた。
    それが、夢が無くなったら、私は生きる事に意味があるのか、それに対して無いと思っていた。
    別に死にたいわけじゃないけれど、生きていてもしょうがないと本気で思っていた。
    でも、このままだらだら続けていても仕方ないと思っていた。

    「諦めなければきっとって どこかで聞いた通りに 続けていたら やめなきゃいけない時がきた」

    25歳でダメでも26歳だったら、うまくいくかもしれない
    あと一年あと一年と続けることだってできる。
    でも、続けることすらしんどくなった。
    わかってた。本当はもっと前から。でも認めたくなかった。

    「頑張ってどうにかしようとして 頑張りの関係ない事態で ふと呼吸鼓動の 意味を考えた」

    私には才能が無いって。頑張っても頑張っても。
    才能がないと気づいた時はしんどかった。
    認めた時は本当に悔しかった。
    うすうすは気づいていたけれど、どうしても認められなかったから、肯定できなかった。

    もう、頑張る事もできないんだ。
    努力も才能だと思う。続けていく事はすごい精神力と忍耐力がいる。好きな事であっても。

    「解らない事ばかりの中 唯一解っていた 大切なものが」

    どうしたらいいかわからなかった。夢を無くしたこの先どうしたらいいか。そして、解っていたアニメが嫌いになっていた。声優になりたいとゆう夢が、もう後にはひけなくてだらだら続けているだけって事が。でも、やっぱりお芝居が好きだ。声優になりたい。とゆう大切な事も忘れられなかった。

    「報われないままでも 感じなくなっても 決して消えない 光を知ってる」

    夢を諦めたあの日から、ポキッって心の折れる音がしたあの日から、私は何も感じなくなっていた。
    それまで楽しかった事が楽しくなくなっていた。
    私はライブに行く事が大好きだった。
    諦めた次の日、フェスに行く予定があった。
    その時は、はー楽しむぞー!心機一転!と思っていた。
    その通り楽しんだつもりだったし、心機一転になっていた。
    なんだ、私、思ったより大丈夫じゃん。やっと肩の荷が降りたんだ。と思っていた。
    でも、何番目かのバンドの時、ふと、私の世界から音が消えた 色が消えた
    それは一瞬だったのだけれど、その一瞬の間に
    あ、私にはもう必要ないんだ、ライブにいって力をもらう事も、いつかこの世界の人たちと仕事したいと願う事も、あっち側の世界にいって何かを伝えたい、誰かの支えになりたいと思う事も、もう必要ないんだ。と思ったら泣いていた。
    私の考えは、夢があるから、趣味も楽しめる
    夢があるから、友達と遊ぶと楽しい
    夢があるから、バイトも頑張れる
    夢があるから、生きていける
    すべての行動が夢ありきだった。

    「一人だけの痛みに耐えて 壊れてもちゃんと立って 」

    それでも、耐えて周りの知ってる明るい私でい続けた。
    友達に悩み相談することはあっても、いつも元気に笑っていた。ヘラヘラ笑っている事の方が楽だった。

    「諦めた事 黄金の覚悟」

    この歌詞が私を救ってくれた。
    我儘をいって上京してから8年、夢破れて諦めた事が格好悪いと思っていた。恥ずかしいと思っていた。情けないと思っていた。
    そんなに思うなら叶えるまで続ければいいと思っていたけど、才能がないと認め、心の折れる音がしてから、私は夢を見続ける事さえも出来なくなっていた。
    あんなにもあんなにもなりたかったのに。
    自分で諦める事を選んだ。
    その選択を、格好悪いと、叶えられない自分が、叶うまで続けれない自分が恥ずかしかった。
    でも、藤くんは諦めた事を黄金の覚悟と歌っていた。
    黄金 なんだ と。
    私の思っていた事と正反対の事を歌っていた。
    私の覚悟を黄金の覚悟と歌ってくれる人がいる。本当に救われた。その時に止まっていた時間が動き出した。

    「物語はまだ終わらない 残酷でもただ進んでいく おいてけぼりの空っぽを主役にしたまま 次のページへ」

    時間が動き出して気づいた。
    私はまだ生きている。
    大切なものを失って辛くて悲しいけれど、時間は進んで行く。私の時間が止まっている間に春が秋になっていた。あっとゆう間に。

    「まだ胸は苦しくて 体だけで精一杯
    それほど綺麗な 光に会えた」

    まだ忘れられないけれど、生きている事で精一杯だけど、夢を無くした世界で少しずつ進んで行こうと思った。また、蛍が私の中から飛び出すことがあるかもしれない。その時はまた追いかけよう。
    私は上京して、挫折したけれど、もし、高校生の時に戻れるとしても、また、夢を見て上京するだろう。
    それ程、大事なものに、夢を追っている時に出会えた事を思い出したから。


    この作品は、「音楽文」の2018年11月・月間賞で入賞した東京都・えだまめさん(26歳)による作品です。


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