「過去」と「今」と「未来」と、その先に在るもの - 親愛なるストレイテナー、結成20周年おめでとう。

「いちばん好きなバンドはどのバンドですか?」
あまり好きではない質問だ。
わたしの愛する音楽に優劣(というのは語弊があるかもしれないが)とかイチバンとかニバンとかつけるなんてこと、とてもじゃないけど出来ない。全ての音楽それぞれに想いがあるし、その時の自分の心境にもよるでしょう?というのが個人的見解。
「いちばんライブを観たことがあるのはどのバンドですか?」
これは即答できる。実際そうだし。
話が若干逸れるが、わたしの(リスナーとしての)音楽人生は順風満帆ではなかった。誰だってそうだと思うけど。解散、休止、脱退、活動縮小。どれもこれも見たくない文字列。
「ティーンエイジャーの頃憧れていたバンドは今も変わらず活動していますか?」
という質問もなかなかにエグい。それが両手の指の数、何ならそれ以上だったとすれば、片手で足りる、むしろ余るほどになってしまった。
また来る、また会おうだなんて。勝手に居なくなってわたしの希望だったはずが絶望を与えていきやがる。本末転倒もいいところだろ なんて、盛大に捻くれた時もあった。
(勿論復活したバンドも居れば新たに出会ったバンドも存在するので、音楽の可能性は無限大だということは今も信じている)

しかしティーンエイジャーの頃から途切れることなく追い続けてるバンドが存在するのも事実。
そのバンドとはどんなバンドかと言うと、当初のメンバーは、2人。その後、3人。突然、4人。そこから10年経ったそうだ。まるでRPGのように仲間を増やし自分達の足で確実に足跡を残していく粋なバンドである。
彼らこそ、わたしが今まで生きてきた中で足を運んだライブの本数──ぶっちぎり1位を独走している4人組、せっかくだから自己紹介をしてもらおう。
「俺たちストレイテナーって言います」
幼馴染の2人が組んで1998年に始動し、仲間を増やしながら20年確実に歩んできた粋なバンドである。思い出を交えながら、彼らの結成20周年のお祝いについて振り返ろうと思う。
──わたしとストレイテナーの歴史を辿るうえで、とあるキーパーソンが浮上する。彼女のことも少し紹介しよう。
彼女の名はエリちゃんa.k.aリーダー。わたしの高校時代からの友達であり同志である。何故か『リーダー』というあだ名。彼女とは高校1年生で同じクラスになり、何とも在り来たりではあるが音楽の話で意気投合し仲良くなった。
何を隠そうストレイテナーを聴くキッカケは、リーダーとの会話から生まれたのだ。2004年、彼らの1stフルアルバム『LOST WORLD’S ANTHOLOGY』がリリースされて少し経った頃だっただろうか。当時、わたしにとってこのアルバムのジャケットデザインは非常にセンセーショナルだった。ドラムのナカヤマシンペイが描いたというのだから尚更。ジャケ買いする価値は大いにあると思う。
わたしがストレイテナーと歩んできた年数は、リーダーと歩んできた年数とイコールで繋がる。あの頃と比べると年齢が倍の数字になっている事実に絶望しなくもないが、ストレイテナーが大きく躓くことなく確実に歩んできたこと──そしてわたしとリーダーが14年も彼らのライブに喜んで足を運んでいることは奇跡と遠くないところに居るんじゃないかな、と思っている。

さて。遡ること2017年12月。宮城県が誇る最高の春フェス『ARABAKI ROCK FEST.18』のメインビジュアルが公開された。
リーダーから「次のアラバキ、テナー間違いないと思う」との速報を受け確認すると、そこには何だか見慣れた機材と『THE ROCK STEADY FIGHTING MAN’S CLUB BAND』の文字が。ああ、間違いない。結成20周年のストレイテナーと、デビュー30周年のエレファントカシマシの記念が意味されているデザインだった。こんな連絡を取り合った2日後にもストレイテナーのライブに行ってるわたしたちはそこそこイケてると思う。

2018年4月28日。
アラバキ2018、初日のトリを務めるのはストレイテナーだ。「THE ROCK STEADY’S 20th ANNIVERSARY CLUB BAND OF STRAIGHTENER」と題したスペシャルセッションライブを披露するのだ。ゲストの欄には、ストレイテナーのトリビュートアルバムに参加したアーティスト、彼らと所縁のあるアーティスト、そして目を疑ってしまうのが「布袋寅泰」の4文字。幾ら何でもスペシャルすぎるだろ、なんて三度見くらいしてしまった。しかしこのようなスペシャルすぎるオンステージが観れるなんて、アラバキだからこそだよなあ と、心から感謝。
「最初にテナーを観たアラバキっていつだっけ2005年?あの日はエルレも最高だったね」なんて思い出を語りながら開演時間を待つ。暗闇を照らすオレンジ色のライトが感傷的。
アラバキ2005、野外ではなく屋内の比較的小さいステージでまだ3人だったストレイテナーを観た。高校生だったわたしはキャップもタオルもTシャツもテナーのグッズでキメており「前のめり」が服を着て歩いているようだった。
今も思い出せる、あの日最前列で『KILLER TUNE』を踊り倒したこと。『PLAY THE STAR GUITAR』『泳ぐ鳥』の爆音に、3人でこんな音鳴らせるものなの?と未熟な十代なりにも感情が揺さぶられたこと。そんなことを思い出しながら「なんか泣きそうだね」と2人でステージを見つめた。
19:30。感傷に浸っていると、アラバキおなじみのジングルが流れメンバーがステージに。
「初日のトリを務めます、俺たちストレイテナーって言います よろしくお願いします!」
ホリエアツシが挨拶をする。その直後、MCでいきなり噛んで自分で笑っちゃってるホリエアツシがもはや愛おしかった。
これこれ、これなんだよなあ、この緊張感の無い空気こそストレイテナーの醍醐味でもある。
この日のスタートは『ROCKSTEADY』から。このセッションライブの表題にもなっており、ストレイテナーの定番中の定番でもあるナンバーだ。4人が音を鳴らせば、さっきまでの締まらない空気 いや何もかもが、信じられない程にロックになる。
これこれ、これなんだよなあ、このギャップがたまらなくカッコイイ。
『彩雲』もすっかり定番曲となった。暗闇の中で流れる美しいイントロに魅了される。そういえばこの日から『彩雲』が特別な存在になったような気がする。漠然とはしているけど、野外で聴く『彩雲』の強さを改めて感じた。
大勢のゲストを迎えてのオンステージはまさに「スペシャル」だった。が、ゲストを呼ぶ際に順番を間違えてしまい「飛ばさないで!」とTHE BACK HORN山田将司にツッコまれ、グダグダになったステージ上でthe pillows山中さわおに「お前何言ってるかわかんねえよ」と言われる始末のホリエアツシはやはり愛おしかった。彼らしい人間味が溢れている。ホリエアツシは、これでいいのだ。これがいいのだ。
布袋寅泰がステージに登場する。メンバー全員背筋が伸び、緊張感が伝わる。
まさか彼らがBOØWYの『B・BLUE』『DREAMIN’』を、しかも布袋寅泰本人と演奏するステージを目撃する日が来るとは。やりきった4人の笑顔がとても眩しかった。
その日の深夜、ナカヤマシンペイが「中1で後ろの席の子と仲良くなって、それまで全然音楽聴かなかったおれにBOØWYとか教えてくれたその子が、目の前で布袋寅泰とマイクシェアしてコーラスしてたんだぜ?そんな人生あるかよ?」と投稿したツイートに泣かされた人は多いのではないだろうか──何故なら「その子」とはホリエアツシのことだから。
素晴らしいオンステージだった。

2018年7月14日。
ストレイテナー「Future Dance TOUR」FINALは仙台。
ライブが良かったなんてことは今更説明不要だが、心の深いところまで響いたホリエアツシの台詞は今も響き続けている。
「7年前に大きな地震があって、それでも7年後こうやってライブができている。7年前から見たら《今》が未来なんだ。」
「関わってくれた沢山の人、オーディエンスの皆んなのおかげで20年やってこれた。20年前の未来は《今》。」
ホリエアツシはほんの少しだけ涙を堪えているように見えた。ストレイテナーはこれからも確実に歩んでいく。その未来へ、わたしも一緒に歩んでいきたい。この日のMelodic Stormは優しい光に包まれていて、ただただ「楽しい」という言葉に尽きた。
ライブの最後にナカヤマシンペイが「幸せな時間をありがとう」と漏らすように一言。目頭が熱くなり、無意識に「こちらこそいつもありがとう!!!」と叫んでいた。
終演後、わたしとリーダーは揉めていた。あんなに楽しかったライブの後に揉めるなんて穏やかではない。普段、喧嘩なんて全くしないわたしたちに一体何があったと言うのだろうか。
ツアーファイナルを迎えるうえで、秋からの新しいツアーが発表された。が、仙台は夏のツアーで訪れていた為今回は外れているのだ。
我々は「日程的、距離的に何処の公演に行けるか」で揉めていたのだ。おめでたい、とはこういう時に使うとしっくりくるかもしれない。
揉めても元気いっぱいなわたしたちはライブの高揚感を引きずったまま、朝までカラオケでELLEGARDENのDVDを観たり[ALEXANDROS]の『ワタリドリ』を熱唱したりしたが、結局最後はストレイテナーのDVDを観ながら『彩雲』の良さについて語り合った。この日の夜はちょっとバカになったけど楽しかったな。
朝方リーダーと別れた後、酔っ払って路上で寝ている男性を横目にイヤホンを装着して『TOWER』を流した。10代の頃から夏の早朝に『TOWER』を聴くことが毎年の楽しみなのだ。始発の電車の窓から見える朝日がキラキラしていて、こんな夏の習慣も、もう14年もやっているのか〜と思うとセンチメンタルになった。

2018年9月30日。
福島県は楢葉町にて「楢葉町サマーフェスティバル」が開催された。
台風が接近していた為ギリギリまで開催自体が懸念されていたが、きっと楢葉町の皆さんの祈りが通じたのだろう、無事開催。
楢葉町とは福島県浜通りに位置する町だ。東日本大震災により被災してしまい、更に、福島第一原発の影響で避難指示の対象にもなっていた。現在は避難解除になったとはいえ、いざ現状を自分の目で確かめると心が痛くなった。
──宮城県といわき市のちょうど中間にある町。わたしは安定のリーダーを助手席に乗せてハイテンションでドライブを楽しんでいた。アラバキのセットリストをまとめたプレイリストを車内で流し「今日はどんな日になるのかな~野外で観るのはやっぱ気分良いよね」とか、プレイリストから流れてきた『彩雲』に過剰に反応し「今日も彩雲が聴きたい!」なんて呑気なことを言っていた。
6号線。浜通りに入ったところで、全く笑っていない自分に気付く。先程まであんなにヘラヘラしていたのに。
信号が機能していない。どの民家も「入れませんよ」と言わんばかりに入口が封鎖されている。コンビニやスーパーのガラスはバリバリに割れたまま。一体何時からこの状態なのだろうか。音は雨音のみ。人間は勿論居ない。突然道路を横切る野生動物にびっくりする。まさに「ゴーストタウン」だった。
隣県に住んでいながら自分の目で確かめるまで現状に気付かない自分の無知さを恥じた。開会の挨拶をしていた楢葉町長、実行委員の皆さんがどんな想いでイベントを企画したかを考えると軽々しく「どんな日になるかな」なんて言ってる場合ではなかった。
──ストレイテナー 特にホリエアツシという男は、東北の復興支援に大きく貢献してくれている。わたしは、東北に住んでいるくせにホリエアツシより自覚が足りていなかったのだ。(勿論、宮城県の被害も絶望的なものだったのだけど。)
勝手なことを言うようだが、今回楢葉町に足を運ぶきっかけをくれたのはストレイテナーだ。そのことに感謝し、楢葉町の皆さんに敬意を表するという意味で、今日は笑顔で音楽を楽しもう、と思った。
もしこの文章を読んでくれている方が居るのならば。読んでいるあなたにも現状を知るきっかけ、 もしくは「何か」を感じてくれているのならば、わたしがこれを書いている価値や意味があると思える。

ストレイテナーのステージは16:30から。曇天ではあったが、海風が夏を引きずっているようだった。
…うん、どうしたんだろうな?先程まで台風とはいえ奇跡的に「曇天」で留まっていたのに、わたしはがっつり雨具を装備している。何故か?土砂降りだからだ。ピンポイントで台風を呼んでしまう彼らに「持ってるよね…」リーダーとわたしは思わず笑った。
4人はゆっくりとステージへ。確かこの日は「僕たちストレイテナーって言います よろしくお願いします」という挨拶。雨降ってきちゃったね、なんて苦笑いしていたような。ここに来るまで色々な景色を見たけど、彼らはいつもと変わらない4人だった。少し凛とした表情に見えたけど。
4人が顔を合わせると、美しいイントロが流れる。『彩雲』のイントロだ。
嬉しくなり、リーダーと顔を見合わせた。彩雲からスタートするとは胸が熱い。
被っている帽子に当たる「ボタボタ、ダ、ダ、ダ」という水滴の音が、やけに存在感を示している。こんな天候さえ味方につけてしまいそうな強さが『彩雲』には在る。やはり『彩雲』は、強い。
《Tomorrow is another day(明日という日があるさ)》
《In a small world I know(ちっぽけな世界でそうさ)》
《Under another sky(もう一つの空の下でも)》
《I keep you in my mind(君はずっと僕の心の中に)》
これは『彩雲』のサビの一部だ。
何度でも言う、『彩雲』は強く、逞しい。
この土地で「明日という日があるさ」なんて台詞は一見無責任に聞こえるかもしれない。しかしそれはあくまで“一見”であって、グッドメロディに乗せられたこの歌詞はストレイテナーからの平和を願う“祈り”に感じた。
雨粒が睫毛に当たり下を向いていたが、ふっと顔を上げる。帽子に溜まった雨水が流れ、雨具をつたって芝生に落ちる。雨にだって存在価値はあるのだ。
ステージを見上げると、ホリエアツシは優しく微笑みながら歌っていた。
7月に彼が言っていた「あの頃から見た未来は《今》だ」ということばを思い出した。
「わあ、なるほどそういうことか」
何かと何かが繋がった。《今》と《未来》が繋がるということの その意味が、わたしの頭の中で繋がった。
きっと7年前、此処──福島県楢葉町。7年後のことなんて想像できないしその日1日を生きることで精一杯だったと思う。けど、7年前から見た未来は今、此処に実在している。楢葉町の皆さんの笑顔はとても素敵でした。
その笑顔は、今日の雨空も、台風も、海の音も、『彩雲』のように美しく彩っていた。イベントのラストに打ち上がった3000発の花火の素晴らしさ、こんな希望に満ち溢れた打ち上げ花火なかなか見れない。9月30日、楢葉町で過ごした時間はわたしの大きな財産となった。

2018年12月某日。
『My Name is Straightener TOUR』も終盤戦である。
夏に「日程的、距離的に何処の公演に行けるか」で揉めていた我々だったが、気付いたら関西に居た。自身、関西初上陸。
ライブは最高に楽しかったし、今回訪れた関西のとある街。とっても素敵な街だった。食べ物も美味しい、景色も綺麗、街の人も親切ですっかり癒された。ストレイテナーはまたわたしを素敵な場所に連れてきてくれた。そんなのこじつけじゃないか と言われるかもしれないが、今回のライブがなければわたしは関西に来ることはなかったかもしれない。こんな素敵な街と出会わせてくれたのは間違いなく彼らなのだ。偶然という言葉で片付けるつもりは、無い。

2019年1月19日。
晴天。リーダーと横に並び、京葉線に揺られる。窓から見える海は、7月の早朝のように煌めいていた。「あーーーとうとう終わっちゃうね」なんて。半年前から楽しみにしていた今日という日が来てしまったこと、楽しいと寂しいを反復している。今日は幕張でストレイテナー20周年のお祭りがあるのだ。
ストレイテナーはこれで終わりではない、これからも4人は確実に歩み続ける。
20周年という記念すべき年、わたしは今まで彼らと歩んできた気持ちに、此処──幕張でケリをつけようと思っていた。勿論良い意味で。今の想い、言いたいこと伝えたいことは全て音楽にのせてステージにぶつけよう。会場をぐるっと360°見渡すと、満員御礼7000人。何だろうな、この素晴らしい空間は。既に目頭が熱い。
時刻は17:00、スクリーンにメンバーが次々と映し出されオーディエンスの歓声に包まれながらメンバーが登場する。フロントマンのホリエアツシは分かりやすくオーディエンスを煽ったり感情を爆発させたりはしない。それが彼の魅力でもある。
──が。ナカヤマシンペイの「幕張のバーサーカーに捧ぐ!!」という絶叫がいきなりホールに響く。『BERSERKER TUNE』でスタートするとは──そういうことか。4人は、音楽で、全力で我々を煽りにきたんだな。『The World Record』では2曲目とは思えない程、力強く熱いシンガロングが巻き起こった。
ホリエアツシが「ずっと今日のこと考えてきたから…今日が、今日で終わるなんて信じられないです」と語る。心の中で「わたしだって、そうなんだよ」と返事をした。
「俺たちストレイテナーって言います よろしくお願いします!」
このお馴染みの挨拶は何十回も聴いてきたけど、この日はいっそう頼もしく聴こえた。
ライブの中盤、アリーナのど真ん中で違和感バリバリに構えていたセンターステージ。「邪魔だったでしょ?」「手品で言うと帽子から鳩出すくらいバレバレだよね」なんて、ここでも彼らの空気感は健在。
二階席から「シンペイーーー!」と、ひどく男前な美声が聴こえる。誰?と思って視線を向けるとそこには、ACIDMAN大木伸夫が満面の笑顔で手を振っていた。誰からも愛されるバンドだってこと、彼が身をもって証明してくれた。
センターステージといえばアコースティックか!?と期待する人が多いだろう。しかし「俺たち捻くれてるからここでダンスチューンをやります」というホリエアツシの一声に、会場のボルテージは急上昇。最高のダンスナンバー『DISCOGRAPHY』ではキラキラの紙吹雪がストレイテナーの4人、そして会場のオーディエンス、空間の全てを祝福しているような光景だった。わたしとリーダーは「爆笑」に近い笑顔で全力で踊っていた。今も思い出すと泣けてくる。
メインステージに戻り『彩雲』の美しいイントロが流れる。
《Tomorrow is another day(明日という日があるさ)》
今日という特別な日は終わってしまうけど、新しい日はまた必ずやって来る。《今》にしがみつく弱さを《未来》へ歩む強さに変えてくれる、『彩雲』はそんな歌だ。
そしてこの日、ホリエアツシは“未来”についてこう語る。
「未来のことは全然わからないけど…自分たちを裏切らないカッコいい音楽を作って みんなと一緒に楽しいライブをやるだけ。確実に言えるのは、この4人が出会ったからにはストレイテナーは今までもこれからもずっとこの4人でやりたいと思います!」
こんなにも心強いことばは存在するのだろうか。
我々オーディエンスの輝かしい未来を確約する、これ以上ない台詞ではないだろうか。
ストレイテナーの音楽は10代の頃から常に自分の側に在る。極端に依存したり極端に対立もせず此処までやってきた。それはわたしとリーダーの関係性とも似ていて、極端に近付きもしなければ極端に疎遠にもならない。わたしが当日のライブチケットをコインロッカーに入れたまま鍵をかけたり、集合場所を盛大に間違えたりして怒られることはあっても関係を崩すような出来事は無い。(多分。)
「みんなの人生だからいつかストレイテナーの音楽が必要なくなる時が来るかもしれないけど仕方ない。それでもあなたのこの先の人生で、また俺たちの音楽が鳴り響くような時が来ればいいなと思ってるから、俺たちは止まらず鳴らし続けます」
確かにそんな日がわたしとリーダーにも来るのかもしれない。けど、ストレイテナーの4人が4人で在り続けることは此処から先へ続く《未来》でも間違いない事実だ。
やはり《過去》から見た《未来》が《今》であり、それは奇跡とは遠くない。
14年前、14年後も熱意を持って彼らのライブを観ている想像なんて全くしていなかった。しかしあの頃の未来、すなわち今、当時の熱意を軽々と飛び越えて、4人の前で熱狂しているのがわたしの人生だ。
そんな人生は「最高だ!」って胸を張って言いたい。
「みんなの声を聴かせてください!」のコールで始まる『Melodic Storm』、この日の7000人の圧倒的なシンガロングを聴いたら、そう言わずにはいられないだろう。きっとステージからは、7000人分の笑顔が見えたはずだ。
アンコールのMCではベース日向秀和が「俺たちのライブの感想さ、『泣きそうでした』ってよく言われるけど、結局泣かなかったの?って…」と会場の笑いを誘う。
「いちばん泣けるジブリ映画って何?」「千と千尋の、ハクのおにぎりを…」なんて楽屋のようなトークが広がると、しびれを切らしたギター大山純が「もうやろうよ!!」と。7000人の前でも気取らない4人は、心底愛おしい。
彼らのライブの感想でよく言われるのが「泣きそうでした」とのこと。しかし「今日のために新曲作ってきました」という『スパイラル』。この曲を聴いた後は、どうだろう?
ホリエアツシからの愛のプレゼントだ。泣きそうとかそういう次元じゃない、涙で前が見えないってこういうことだ。完全に泣かせにきてるじゃないか!コジコジのコラボタオルで一生懸命涙を拭う。
「まだまだ続く旅の何処かでまた会いましょう。ストレイテナーでした!」
4人は肩を組み、頭を下げる。計28曲、3時間。完璧すぎる夜だった。
写真を撮るのにあまり慣れていないわたしとリーダーだが、この日の写真を見返すとこんなに良い顔できるんだなあと我ながら思える。ストレイテナーの4人と、わたしとリーダーで歩んできた歴史が《今》の瞬間を輝かせている。わたしたちの表情が、それを証明していた。

ストレイテナーの20周年のお祝いは、ひとまずおしまい。想っていることの全てを音楽にのせて、4人とハイタッチ出来た気がする。清々しく、素晴らしい日だった。
わたしの10代、20代、30代を駆け抜けていく、粋なバンド「ストレイテナー 」。腐れ縁は褒め言葉。30周年も40周年もお祝いしよう。そのときも音楽を通して4人とハイタッチをしよう。嬉し泣きしながら声が枯れるまで『Melodic Storm』を歌おう。それまでリーダーとはくだらない喧嘩などせず、ドジを踏まず、怒らせず、仲良くしよう。
──《過去》も《今》も《未来》も、わたしの歴史はストレイテナーと共に。これがわたしの誇らしい人生だ。
彼らの音楽が彼ららしく在り続けるように、わたしもわたしらしく在り続けよう。
ティーンエイジャーのあの頃の自分に呆れて笑われるくらいの人生が、わたしらしい。

これからも末長くよろしく。《未来》が《今》に変わるそのとき、またハイタッチで祝福しよう。


この作品は、「音楽文」の2019年4月・最優秀賞を受賞した宮城県・MAKIKO.Mさん (31歳)による作品です。


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