嵐という名の永遠 - ジャニーズがどれほどのもんか見せてやるよ

国民的アイドルグループ・嵐が2020年いっぱいで活動を休止する。
末席ながら、2007年から細々と彼らを追い続けていた私にとって、まさに青天の霹靂だった。
所詮ジャニーズ、アイドルの話だろうと「音楽通」の方には言われるかもしれない。
ここへ投稿すべきトピックでもないのかもしれない。
けれど昨日、報道があってすぐ、ロッキング・オン公式ツイッターから「彼らの今後を支えたい」という旨の記事が出され、とても嬉しかった。彼らの音楽を2021年以降も誰もが知ってる名曲にしてやりたい。そんな気持ちで、拙いながら筆をとった。

とはいえ、私も元々ロック畑の出。よく実態を知らない頃は「アイドルなんて」と思っていた時期があった。歌はどうせおまけなんだろうって。しかし、彼らの魅力を知れば知るほど、楽曲も十分に彼らの武器であると思い知らされた。

まず言わずもがな、嵐の曲はとびきりにキャッチーだ。これはジャニーズやアイドルポップス全般に言えることなのかも知れないが、素人が聞いてもイントロから耳にすんなり入ってくる。良い曲だ!というのがものの数秒でわかる。音感のいい人ならラスサビまでにはハミングできるようになってるかもしれない。

さらに、知らない曲であっても、イントロだけで「嵐の曲だ」と判断できるほどに、統率感が取れている。これって実は物凄いことなのではないかと素人考えに思っている。
だって嵐はアイドルだ。シンガーソングライターじゃない。曲も詞も編曲も演奏も、全部別々のプロのクリエイターさんによって作られている。さらにバラードからアップテンポ、ダンスチューン、ヒップホップにロックまで、さまざまなジャンルの曲を歌いながら、そのおおよそに大きな統一感を持たせるということは、並大抵のことではないのではないかと思う。
もちろんそれだけ技術の高いクリエイターが手を貸してくれているという証拠だし、それだけ「嵐」というグループの世界観が尊重されているのだとも思う。

彼らの一番の魅力は「調和」だと思う。それはグループとしての在り方でもあり、同時に音楽性についてもだ。
ボーカルが5人いて、個々のソロのパートになれば一人一人の判別がつくほど個性はバラバラ。なのにユニゾンパートになると驚くほど溶け合って、一つの歌声のようなハーモニーを響かせる。この歌声だけでも、音楽ファンに聞いてもらいたい価値は存分にある。

さらにもう一つ。嵐の曲たちは、統一感もありながら、あまりにも多彩で個性豊かなラインナップが揃っている。それゆえ、どんな楽しみ方でもできるのも一つの魅力だ。
先述の通り、歌声の調和に耳を傾けるにしても、誰と誰のハモリなのかによっても魅力が変わってくるし、ソロの歌声に聞き惚れるのもいい。
もちろん歌詞もいい。先日の記者会見でのBGMが「ワイルド アット ハート」だと聞いて思わず、「かっこよすぎかよ!」と笑ってしまった。
この曲の歌い出しはこうだ。
『一度きりの人生 転がるように
笑って泣いて生きてゆこうぜ Baby
誰かの決めた 自由はいらない
そして ここではないどこかへ Someday』
どう考えても、4人から大野くんへの鼓舞のように思える。自分たちの歌を愛しているからこそ、こんな最適なチョイスができたんだろう。話が逸れたが、シングル曲にはこんな風に前向きで背中を押すような歌詞が多いが、アルバム曲にはじっとりと妄想に囚われたストーカーのような男の歌もあれば、もう戻らない過去を振り返って感傷に浸るような歌もある。ぜひシングル曲以外も掘り起こしてみてほしい。
歌声、歌詞だけでなく、曲のみを聞くだけでも楽しい。曲のみを、というのには語弊があるが、歌詞がわからなくてもメロディがとにかくゴキゲンで、今も半分も歌詞を覚えてないのに大好きな曲がいくつもある。音の重なり合いが美しすぎて、ミュージックだけで気分を高揚させるような歌が。それでいて、カラオケに行って選曲すると歌えるのだからすごい。

そんなこと言ってもどうせ口パクだろ、という人がいるかもしれない。
そんな方には、ぜひコンサートDVDを見ていただきたい(本当はコンサートに入っていただきたいところだけど)
TVの事情はわからないので、もしかしたら口パクの時もあるのかもしれない。でも現場に入ってみるとわかるが、彼らは割とトチるしトラブるしアドリブもおふざけも入れてくる。ライブがちゃんと生きている。
国立競技場の土砂降りのコンサートで、歌唱中にマイクが死んで、2人で一つのマイクを使ったこともあったし、のっけのソロの歌詞を間違えて、そのあとMCで空っとぼけた奴もいた。そんなところさえ愛嬌でカバーしてくるのだからすごい胆力だと思う。もちろんツアーごとにやる曲は限定されているとはいえ、デビューからこれまで何百曲もの歌を歌ってきているのだから一体どれほどの記憶容量なのだろうかと思う。

とりとめもなくダラダラと書き綴ってしまったが、もしこんな文章が採用されたなら、彼らの音楽をまだ知らない誰かに、1人でも多く刺さればいいと思う。
永遠なことなんて何もない。
それは承知の上で、唯一例外的に永遠に近い事象はあると思う。
「歴史」だ。
例を挙げればきりがないが、平安や奈良の頃の歌が今でも残っているのはほとんど永遠に近いんじゃないかと思う。
圧倒的多数の人間の記憶に残り、語り継がれ、後世へ名を残すことで、人は永遠に近づいていく。

私は、嵐と、嵐の楽曲を、歴史に残したい。


この作品は、「音楽文」の2019年2月・月間賞で入賞した茨城県・夏生あおいさん(30歳)による作品です。


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