Morning Musume. is here!!! - 11人の"愛の軍団"、大勝利。

12年ぶりのひたちなかに、ROCK IN JAPAN FES.に、わたしはやって来た。

北国の夏に慣れていたわたしにとって
初めて経験する夏フェスは暑く過酷で、
楽しかったけれど「もうこんな辛い思いはしたくない」と
それ以降足が遠のいていた。

しかし、今年はそんなこと言っている場合ではない、どうしても行かなければいけない理由があった。



モーニング娘。’19がGRASS STAGEに立つ。



単独公演ではないものの、
結成から約22年のキャリアの中で
最大のキャパシティ。

その瞬間を見届けたい、
そして
メンバーが目にする景色の一部になりたい、と
参加を決めた。



モーニング娘。とわたしの出会いは
1998年の初め頃にさかのぼる。

当時愛読していたアイドル雑誌の紙面に突然現れた5人組。
最年少の福田明日香は自分と一つしか年齢が変わらないことを知って驚いた。

当時、安室奈美恵、MAX、SPEEDといった
歌って踊る女性アーティストに憧れていたわたしにとって
新たな存在の出現だった。



1999年9月。
「LOVEマシーン」のリリースでモーニング娘。を取り巻く環境や世間の評価が一変する。
と同時にわたしへの周りの目が変わった時でもあった。

「真面目で暗い」と周りから見られていた当時中学2年生のわたし。
でも前述したように歌って踊るアーティストが好きで憧れで、
振りを真似しては歌うのが楽しくて大好き。
ただ、それを知るのは限られた友人だけだった。

学年朝礼で週替わりでクラスごとに出し物をすることになり、
わたしのクラスでは「LOVEマシーン」を披露することに決まった。
「ここはわたしの出番だ」とばかりに学級会長に申し出、
全員にサビの振りつけのレクチャーをし、
選抜メンバーにはフォーメーションをつけ
より本家に近く、コピーすることを目指した。
そして、誰よりも張り切って踊った。

そんな出来事によって
「こんなことできるんだ」
「こんなに明るい人だったんだ」
「踊るのが好きなんだ」
と認知され、
たくさんの人とコミュニケーションをとれるようになった。
(廊下ですれ違いざまに「♪日本の未来は〜」と歌われ、「Wow×4」と振り付きで返すなんてこともよくあった)

モーニング娘。がわたしを”開放”してくれたのだった。



しかし、いわゆる「黄金期」の終焉と共に
わたしのモーニング娘。への興味も薄れてゆく。

大学ではバンドサークルに入ったこともあり
普段聞くのはバンドサウンドばかり。
学食のビジョンで「みかん」のMVが流れているのを見て
「今のモーニング娘。ってこんな感じなのか」と思った記憶だけはなぜかある。



社会人になり、地元を離れてひとり暮らしを始めたが、
テレビは買わず、コンポで聴くラジオとCDやMD、
インターネットからの情報だけが頼りな生活を送っていた。

2010年の冬、
たまたま見たカラオケ会社のサイトに「女が目立って なぜイケナイ」のMVのリンクが載っていたのを
「今のモーニング娘。ってどんな感じなのかな」と思い、何気なく再生してみた。

派手なヘアメイクと衣装と
耳に刺さるような打ち込みの音に面食らったが、

「もしも美人ばっかの世の中じゃ
みんな平凡なのさ
あの子この子となりの子
さあ 差をつけよう
やっと出番のようね
まっすぐ輝け My Face」

というサビの歌詞、
そして何よりタイトルに
昔から続く“モーニング娘。イズム”を感じ、
懐かしさを覚えた。

他の曲も検索し始め、
たどり着いた「リゾナント ブルー」に衝撃を受ける。
自分の知らぬ間に、
大人で、カッコいい、モーニング娘。がそこにいた。

すぐにアルバムを借り、ライブの情報を調べ、
約2ヶ月後にはコンサート会場にいた。
我ながらびっくりするほど、火がついてからが早かった。

仕事の都合上、なかなか土日に休みが取れないことと
(ハロー!プロジェクトのコンサートはだいたい週末や祝日に開催される)
CDのリリースイベントなどが今ほど頻繁に開催されていなかったため
その後しばらく生でパフォーマンスを目にする機会はなかったが、
インターネットで常に情報はチェックしていた。
引越しや転職といった個人的事情と、
メディアへの露出増加、ファンの拡大といった要因も伴い、
2013年あたりからは定期的に彼女たちのパフォーマンスを楽しませてもらっている。


そういう訳で今在籍しているメンバーは全員、加入以降の変遷を見守ってきているので、
今回のGRASS STAGE出演も感慨ひとしお、と言ったところなのだ。





場位置についたメンバーが目深にかぶったフードを取り、
「みかん」のイントロが鳴った瞬間、
【やったーーー!!!】という心の声が思わず漏れてしまった。

「まぶしい朝に WOW WOW CHANCE」
歌い出しのそんな歌詞がぴったりの午前10時半。
メンバーの煽りに拳を突き上げ、応える。
ビジョンが切り替わり、メンバーの眼前に広がる人波が映った瞬間、涙がこみ上げてきた。

こんなにも多くの人が
“今のモーニング娘。”を見たいと思ってこの場にいる。
その事実にただただ胸が震え、
メンバーでもないのに「来てくれてありがとう」と握手して回りたいくらいの気分だった。



先の述べたようにこの「みかん」、
発売時何気なく学食で見ただけの曲が
今となっては自分にとって大事な応援歌のような存在である。
こんなわたしにも、あきらめられない夢もあって
うまくいかなくて落ち込む日もある。
だけど1世紀に満たぬ一度きりの人生、
立ち止まってられない、また頑張ろう、
そう背中を押されるのだ。



昨年と同様、間髪入れず曲がドロップされてゆく。
多くの人がそらで口ずさみ、振りも真似できる「黄金期」の曲、
陽の目を見なくても研鑽を積み続けた「プラチナ期」の曲、
今のメンバーが加入して以降の、いわゆる最近のコンサートでの鉄板曲がバランスよく散りばめられ、
初めて見る人にも何度も見ている人にも納得の、最高のセットリストだったように思う。

「I surrender 愛されど愛」はメンバーたっての希望でリストインしたそうだが、
去年のROCK IN JAPAN FES.出演以降に発表された曲であり、
印象的なギターリフと間奏部分での頭を激しく回す振り付けはまさに「ロック」。
わたしもぜひ聴きたかったので嬉しかった。


この日のためにあらかじめ昨年のLAKE STAGEの映像を確認して臨んだのだが、
皆、昨年に比べて表情に余裕があるように感じられた。
「楽しくて仕方ない!」という心からの笑顔と、曲を「魅せる」顔が終始貫かれていて、
「昨年以上のパフォーマンスを」という気概が伝わってきたし、
まだまだ伸びしろがある彼女たちに驚嘆するばかりだった。



カントリー・ガールズとの兼任である森戸知沙希。
すっかりモーニング娘。にも馴染んだし、
「こんな表情見せるの!?」とびっくりするくらい表現が豊かになった。
小柄な体から繰り出されるキレのあるダンスも見ていて気持ちがいい。


子犬のような愛くるしさ・人懐っこい笑顔が魅力の横山玲奈だが、
「シャボン玉」でセリフ部分で見せる姿はまさに「恋に翻弄される女」。
「LOVEマシーン」のラストなどの重要なパートも、
さらっとドヤ顔でキメて去っていくから恐ろしい。


加賀楓。
彼女のダンスはいい意味で「癖がない」。
実直な性格そのままに基本に忠実で、だからこそ安心して見ていられる。
長い手足と、一人だけキャップを被ったボーイッシュなスタイリングに
目を奪われた人も多いかもしれない。


最年少メンバーだった羽賀朱音も今や高校3年生。
(15期メンバーの加入により最年少は山﨑愛生となる)
キャリアを積むにつれ重要かつおいしいパートを任されることも増えた。
彼女の声の芯の太さと瞬発力がわかる、
「I surrender 愛されど愛」の間奏明けにある「ありえない」というパート。
この日もバッチリ決まってこちらがにんまりしてしまった。


牧野真莉愛。
「体力おばけ」の最たる例は彼女なのでは?と思う。
しゃがんだ状態からハイジャンプをした後もブレない体幹と崩れない表情に
「正気か!?」と思ってしまった。
大きなリボンを付け、可愛さを存分に振りまく裏で
相当肝が据わっているなと唸る他ない。


野中美希。
帰国子女である彼女が得意の英語でオーディエンスを煽る姿には
普段のドジでおっちょこちょいな彼女の影も形もなく、ひたすらにcoolであった。
そして彼女の特徴ある声が
今のモーニング娘。ユニゾンを彩っているのは確かである。


頚椎椎間板症による休養を経て、この日が復帰ステージだった小田さくら。
途中高音で声が掠れる箇所もあったが、さすがはモーニング娘。の”歌姫”。
青空にどこまでも歌声が伸びていくような錯覚すら覚えた。


佐藤優樹が終始伸び伸びと、楽しそうだったのも印象的だった。
何を繰り出すかわからない予測不能なトリッキーさはいつも通り、煽りはいつも以上。
こちらもいつも以上の声で返すしかないでしょう、と気合いが入った。


「モーニング娘。’19、GRASS STAGE、盛り上がって行くぞーーー!!!」
と第一声を上げたのは切り込み隊長の石田亜佑美。
彼女は本当に気配り・心配りの人。
誰も置いてきぼりにならないよう、端から端までオーディエンスに目を配るし、
何より今回「泡沫サタデーナイト!」の間奏部分のソロダンスの振り付けを
彼女を慕う後輩、BEYOOOOONDSの平井美葉に依頼したというのが大きなトピックだろう。
そういうことができる器の大きさが彼女にはあるのだ。


生田衣梨奈。
「動く彫刻」と言っても過言ではない完成されたビジュアルにも関わらず、
MCでは左右を間違えるおとぼけっぷりで小田さくらにツッコまれる一幕も。
とにかく自分の「魅せ方」、自己プロデュース能力に長けていて
カメラに抜かれる笑顔は今日も完ペキだった。


「落ちサビの女王」とも称される現リーダー・譜久村聖。
「気まぐれプリンセス」でもその実力を存分に発揮していた。
前任の道重さゆみから次期リーダーと発表されたときに不安そうな顔をしていた彼女はもういない。
自身に、そして今のメンバーに自信を持って臨んでいることがありありと伝わってきた。

メンバーそれぞれが自分の強み、魅力を惜しげもなく放っていて、
ステージ上が本当にキラキラと輝いて見えた。



「次は何の曲がくる?」とワクワクしては
イントロを聞いて歓声を上げ続けていたら
あっという間に終わりの時間がやって来てしまった。


高らかに宣言し、最後に披露されたのは「ここにいるぜぇ!」。
そこに込められたメッセージに、
多幸感溢れる今この瞬間・この場所に自分がいることに、
振りを一緒に踊りながらまた泣いてしまった。



渋谷陽一氏は前説で「勝たせたい」という言葉を使った。

本来、趣味や好きなものに優劣や勝ち負けはないはずである。
ただ、「フェス」にはある意味戦いやゲーム的側面があって、
オファーされる人/されない人が存在し、
どのステージでやるかは主催側が決め、
GRASS STAGEで演りたいと思ったからといって
「はいどうぞ」と簡単に演らせてもらえるわけではない。

モーニング娘。は
昨年の出演で多くの人の心を動かし、話題を呼んだから
今年、GRASS STAGEでのパフォーマンスを”勝ち取った”のだ。

俗に言う”アイドル”がロックフェスに出演することについて
未だに納得していない人も少なからずいるかもしれない。

でもそういう人こそ、色眼鏡を外して
今そこにいるアーティストを、起きていることを
見て、感じてほしい。

そんな色眼鏡をもぶっ壊せるパワーが
今のモーニング娘。にはある、と
強く感じさせられる50分間だった。

これを「勝利」と呼ばずして何と呼ぼう?





2019年8月10日は
間違いなく、モーニング娘。の歴史に刻まれる一日となった。

これから先彼女たちの見る夢、紡がれていくであろう歴史も
見守り続けていきたい。


モーニング娘。’19、最高!!!


この作品は、「音楽文」の2019年10月・月間賞で入賞した神奈川県・ミキティさん(33歳)による作品です。


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