何も考えたくない、音楽を聴いてる時くらいは - 偏差値が20くらい下がっていく音楽で頭からっぽにしてくれるヤバイTシャツ屋さん

『嫌なこといっぱいあるよね めんどい事はやっぱり多いね うまいこといかんことばっかりでへこむね』

これ[ヤバイTシャツ屋さん]の【とりあえず噛む】の冒頭の歌詞なんだけどマジ分かりみが深い。


その日仕事でわりと大きな失敗をしたぼくは分かりやすく落ち込んでいた。
30代も後半に差し掛かるというのにもう怒られたくないんだけど。

そんな僕を見かねた同僚が
「これでも聴いて元気出しな」って勧めてくれたのが[ヤバイTシャツ屋さん]だった。

促されるままに聴いてみたけど一瞬で持ってかれた、心。
こんなに響く事ある? 心。
これもうぼくの為の曲なんじゃないかって思った。これが噂のシンデレラフィット?

『全部肯定されたいよね たまには褒めて伸ばされたいよね 誰からも怒られたりはしたくないよね』

それな。ほんとそれ。ほんそれ。
怒られたくないんだよ。誰だってそうでしょ。
そう言うと必ず「怒る方も辛いんだよ」って人が出てくる。
何その「浮気した方も辛いんだよ」みたいな謎理論。
確かにね、怒る方も大変だと思う。それも分かる。もう40近いから。
でもね、怒られた方が完全に辛いから。
後、浮気したのは寂しかったからお互い様みたいなのもやめて。なんなの?その奈良判定。

【考えすぎるのはやめろって 悩みすぎるのはやめろって
 自分にちょっとだけ自信持って 無理はせん程度で 無理はせん程度でいい】

この歌詞見た時、久し振りに泣いた。人目を憚らずに。
このね、「人目を憚らずに」って言うとちょっと良い感じに聞こえるけど実際は悲惨。
40手前のおっさんが迷子の子猫ちゃんよろしく、わんわん泣いてるの。
鼻水垂らしながらティッシュ散らかして。「泣く」っていうより「鳴く」の方が近い。
もうちょっとした事件というか事故というか。
「どうかしましたか?」って聞かれて「大丈夫です」って声を振り絞るけど誰が見てもどうかしてるのは間違いない。

同僚が「ちょっとは落ち着いたか?」って声を掛けてくれた。
「[ヤバイTシャツ屋さん]のこの曲を聴いた時にお前に教えたくってさ。
最近無理してたみたいだからあんまり頑張り過ぎるなよって思って」

仕事は大変だけど良い同僚に恵まれたな。
人間関係さえ良ければ何とか頑張れるかなって思った。
けど、後から聞いたんだけどこの仕事が失敗したの80%くらいこの同僚のせいだった。
さっきの立ち振る舞い、仕事出来る人がやるやつだから。仕事出来ない人はやっちゃダメなやつだから。

[ヤバイTシャツ屋さん]は知ってた。
でもバンド名で受け付けない事ってあるよね。自分もまさにそうだった。
名前は知ってたけど「はいはい、ヤバTヤバTね」ってくらいで何も分かっていなかった。
もうね、本当「食わず嫌い」よくない。もっと早く聴いてれば良かった。

もともと女性ボーカルの高い声が好きだったからありぼぼの声に惹かれた。
相対性理論」のやくしまるえつこがウィスパーボイスで有名だがありぼぼの声はモスキートボイスとでもいうのか。
やくしまるえつこはライブ中に囁くように歌っているのに1番後ろまで声が届くいう逸話がある。
ありぼぼは本人曰く「わたしの声は もう蚊 なん?」というくらいソプラノ。これもう50代になったら聴こえないんじゃないかって。深夜の公園やコンビニで流したら騒がしい若者撃退できると思う。もうね、控えめに言って最高が過ぎる。
ちなみにありぼぼがいつも「道重一筋」Tシャツを着てるからヤバイTシャツ屋さんなのかと思ってたんだけど違った。
ただのガチアイドルオタだった。
ヤバT好きになってメンバーのTwitterをフォローしてるんだけど「道重さゆみ」がブログを更新する度にありぼぼがツイートするのでこれもう僕が「道重さゆみ」のブログをフォローしてるのと変わらない。

それからはもう狂ったようにヤバTを聴いていた。
いや、狂ったように聴いてたのか聴いてたから狂ったのかは分からない。
これなんて叙述トリック?

ホームページも見たけどヤバTのヤバさが凝縮されていた。
インディーズの時とメジャーデビュー後の2つあるから見比べてほしいんだけど自己紹介のコメント欄に『MAN WITH A MISSION ではボーカルを担当している。』って文言がメジャーデビュー後には消えてるっていう大人の事情。
なのに、
『ヤバイTシャツ屋さんは「テイラースウィフトとの対バン」を目標にして活動をしています。もしこれをご覧のテイラースウィフトさん本人、または関係者の方ご興味をお持ち頂けましたらご連絡ください。』の方はそのまま残っているっていう。
テイラースウィフト専用のメールフォームがあったから開いてみたらメールの件名に
「テイラースウィフトです」って書いてあるの。こっちこそ消せよって!
ミュージシャンのホームページを見てこんなに笑う事ある?
これもう半分「オモコロ」だろ。

ヤバイTシャツ屋さんはどんどん人気になっていった。
映画の主題歌まで決まっていた。

そんな時、「ぐるナイ」の人気コーナー、「ゴチ」で中条あやみとの仲を聞かれた中島健人が言った言葉に一同驚愕した。

「仲E越して仲F」ですよ。

その場にいる全員が「何言ってんだこいつ」みたいな雰囲気が流れる中、「ヤバT」ファンだけが歓喜した。
映画「ニセコイ」の主演を務める中島健人が、主題歌を歌う「ヤバT」の『かわE 越して かわF やんけ!』に掛けて言ったコメントだ。

「これ大丈夫かな?」と思った僕はすぐにLINEした。知り合いのジャニオタに。

「ヤバTのせいで中島健人がスベったみたいになったけど叩かれたりしないかな?」
「けんてぃーは基本的にいつもスベってるから大丈夫だよ。そこが魅力だから。」

けんてぃーの魅力は分かったがヤバTの魅力は何と言っても楽曲。

冒頭から英語歌詞で始まる【ヤバみ】。最初に聴いた時は「あれっ?これワンオク?」って思ったけど全然違った。こういうカッコいいのも出来るんだと思った。でもそこはヤバT、やっぱり裏切らないよね、期待。

『いっぱい英語で歌ってみたけどあんまり意味ないよ』って。
『歌詞に意味ないと 説得力がない もうそんな時代じゃない』事を自ら証明する。

かと思えば【寝んでもいける】では
『寝んでもいける わたし寝んでもいけるわ』と言っといて
【眠いオブザイヤー受賞】では
『早く寝たい 家帰って寝たい』というダブルスタンダード。
これを「アンサーソング」というなら加藤ミリヤ清水翔太を超えたと言っていい。


こやまたくやの多才さはもっと評価されていい。

こやまの自主制作アニメ「寿司くん」を見てほしい。
内容はドラえもん的ポジションの寿司くんが何か喋ろうとするとのび太的ポジションの男の子がひたすら「きもい〜」というちょっとぼくの表現力では魅力伝えられない。これも偏差値が下がった弊害だと思う。

後、Twitterも面白い。
チケットの転売が問題になってた時、ヤバTのチケットも1万円くらいになってたんだけど

「まじでやめてほしい!!!
俺ら10000円クオリティのワンマンできひんから!!!!やめて!!!
10000円クオリティは厳しい!!!やめて!!!!!
そのお金でRADWIMPSとか行きって!!!!」

とツイートしていた。
チケット転売の問題提起とRADWIMPSに対する敬意が出てるユーモア溢れるツイートだ。
ぼくは残念ながらチケットが取れなかったのでライブが終わった後のライブハウスを眺めていた。
そうしたらドアが少し開いてヤバTの3人が見えた。遠くからだったので話し掛ける事はもちろん出来なかったが初めて見るヤバTに動悸が治まらなかった。会いに行けるアイドルってこういう事?


ヤバTは昨年、残念ながら紅白に出場する事が出来なかった。

いつもふざけているヤバTがデビュー当時から言っていたのが「紅白に出たい」だった。
こやま曰く「ボケるのを忘れるっていうボケ」をした曲【サークルバンドに光を】の中に
『誰でも使える言葉を使って誰にも歌えん歌を歌う ノリと勢いだけ そんなことないと 分かる人は分かってるはず 自分で自分を肯定してやっと保っている 不安になってもええけど最後は笑っていようや』という歌詞がある。

ヤバTにしては珍しく熱い想いが伝わってくる。
いつもふざけてる人が本気になってるギャップ萌え。

お笑いには「緊張と緩和」という言葉があるがこやまはボケ倒してから本当に言いたいことを言うタイプだと思う。
例えば、【肩 have a good day】では
『でもね肩幅が広すぎるとときたまに 自分の肩幅感がどんどんどんどん分からなくなってゆく 自動ドア、前からくる人、エレベーター、細い道 何にでもぶつかる そんな夜もある』から
『2人 肩幅は違うけど 歩幅だけはずっと合わせていこう これまでもそう これからもそう 一歩一歩 前へ進んでいこう』とか
【ざつにどうぶつしょうかい】では
『キリン 首ながい ゾウ 鼻ながい ウサギ 耳ながい テナガザル 手ながい』から
『ヒト 服きてる ヒト おしゃれする ヒト しゃべれる ヒト 涙をながす ヒト 笑いあう ヒト 助けあう ヒト いつか死ぬ
ヒト どうぶつの仲間』みたいな感じで。

なので『最後は笑っていようや』を実現する為にも今年こそ紅白に出場して欲しい。
そこで【案外わるないNHK】を歌うっていう最高のボケをしてファンを盛り上げてくれ。

ちなみにもう1人のメンバーであるもりもとはグッズの販売を頑張っている。


この作品は、「音楽文」の2019年4月・入賞を受賞した静岡県・ねここねこさん (37歳)による作品です。


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