レキシ@日本武道館

レキシ@日本武道館
「怒髪天がね、1月にここでやって。増子(直純)さんも最初から最後までずっと泣きっ放しだったんですよ。正直『なに泣いてんだ?』と思ったんですけど(笑)……ほんとここに来て、わかります、気持ちが。泣いてないと思ってるでしょ?」。そう客席に語りかける「御館様」こと池田貴史だが、その胸には万感の想いがあふれ返っているであろうことが、汗だくの上気した表情からもリアルに伝わってくる――最新アルバム『レシキ』を引っ提げて7月1日からスタートしたレキシの全国ツアー「レキシツアー もう一度遺跡について考えてみよう」のファイナルとしてここ日本武道館で開催された、レキシ初の武道館ワンマン公演「レキシツアー もう一度遺跡について考えてみよう~大きなハニワの下で~」。中学生レベルの日本史ネタを「当事者」の目線でウィットたっぷりに描ききったストーリーにダジャレやネタを満載した抱腹絶倒必至の歌詞を、御館様=池田をはじめ日本屈指のプレイヤーを揃えたバンド・アンサンブルとともに鳴らしていくレキシの唯一無二の音楽世界が、トータル3時間半に及ぶアクトの中で終始シンガロングとクラップと爆笑と感激を巻き起こしてみせた、至上のステージだった。

両袖に巨大なハニワがそびえ立つ巨大なステージには、G:「健介さん格さん」(奥田健介/NONA REEVES)、Piano・Cho:「元気出せ!遣唐使」(渡和久/風味堂)、B:「ヒロ出島」(山口寛雄)、Dr:「蹴鞠chang」(玉田豊夢)、Percussion:「となりのトロ遺跡」(朝倉真司)、Cho:「お台所さま」(真城めぐみ/HICKSVILLE)、Horns:「レキシ仮名手ホーンズ」=「TAKE島流し」(武嶋 聡)・「滝のもとの人麻呂」(滝本尚史)・「鉄剣通」(川上鉄平)とそれぞれに「レキシネーム」を与えられた辣腕メンバーがスタンバイしたところに、「マルちゃん 麺づくり」の池ちゃん出演CMが流れ、さらに「『24時間テレビ』よろしく武道館めがけてマラソン中の、アフロヘアの米俵キャラ=TAWARAちゃんを、なぜかやついいちろうがZARD“負けないで”のカラオケで励ます」というオープニング映像が流れ……とここまででもサービス精神盛り沢山な演出の後、舞台中央の障子に御館様のシルエットが浮かび上がると、ソールドアウト満場の武道館が一斉に大歓声に包まれ、そのまま場内の空気は歓喜一色へと塗り替わっていく。

レキシ@日本武道館
「みんな一緒に……好きな城を叫ぶのもいいんだけど、どうせならね、武道館があるお城と言えば、江戸城ですよね? ある意味、江戸城の敷地内で、この曲が歌えるとは思わんかった。ありがとうございます!」という呼びかけから、♪姫路城~ のところを♪江戸・城~(譜割りの関係で間に一拍置く)に変えて武道館一丸の大合唱を呼び起こした“ドゥ・ザ・キャッスル”をはじめ、“RUN 飛脚 RUN”“お犬様”“僕の印籠知りませんか?”など最新作『レシキ』の大半の楽曲を披露しつつ、ライヴの幕開けを飾った“大奥~ラビリンス~”“姫君Shake!”など前作『レキミ』曲、“ペリーダンシング”など2nd『レキツ』曲もがっつりと盛り込んだ内容だった。もちろん、アンコール3曲を合わせてもトータル17曲というセットリストだけ見れば、武道館ワンマンの曲数としては明らかに少ないが、それでも3時間をラクに越えてしまうのが、レキシならではの時間感覚だ。

“大奥~ラビリンス~”の最後には、ついさっき映像の中でマラソンしていたTAWARAちゃんが登場、ステージ上のゴールテープめがけて最後のひと走りの場面をバンド全員の“負けないで”で激励してみせたり、“ペリーダンシング”ではピンクの忍者姿に扮した「シャカッチ」ことハナレグミと絶妙のファルセット・ハーモニーを聴かせたかと思えば、御館様の弾く耳慣れたフレーズからSUPER BUTTER DOGの“FUNKYウーロン茶”に流れ込んだり、「尼ンダ」こと二階堂和美を迎えての“お犬様”では「生類憐みの令!」の一大シンガロングから“犬のおまわりさん”“ゲラゲラポーのうた”“静かな湖畔”“スーダラ節”と次々に曲をチェンジした挙げ句に二階堂の持ち曲“いのちの記憶”へつないでみせたり、“年貢 for you”では「足軽先生」(いとうせいこう)のラップに続いて旗本ひろし(秦 基博)と御館様が「ひろし紅白歌合戦」と題して交互に物真似コーナーへ突入、御館様“ラスト・クリスマス”(ワム!)→ひろし“15の夜”(尾崎豊)→御館様“悲しみにさよなら”(安全地帯)→ひろし“Girl”(秦 基博)と曲を畳み掛けたり……といった具合に、「曲と曲の合間に曲をやる」「曲の途中でも曲をやる」という悪ノリ炸裂の内容なので、実際の「セットリスト」は何十曲にも上るはずだ。そして何より、時にファンク・オールスター的グルーヴを響かせたり、時にジャズ・ビッグバンド的なスウィング感を醸し出したり、時に80年代アイドル・ポップ真っ只中な爽快サウンドを展開したり――と、曲ごとにまったく異なるテイストの(しかも極上の)アンサンブルを鳴らしながら、随所に仕込まれた歌ネタにも完全対応してステージを盛り立ててみせるのである。高尚なメッセージなどは何一つないが、有名無名にかかわらず歴史上の先人たちの想いをユーモアたっぷりに練り上げた物語を、腕利きミュージシャン揃いのバンド・サウンドととも鳴らすことで、むせ返るような歓喜と祝祭感が生まれていく。大人ならではの真剣な遊びに満ちた珠玉のレキシ音楽体験が、この日のライヴではひときわでっかいスケールで咲き乱れていた。

レキシ@日本武道館
その他にも、“RUN 飛脚 RUN”では観客が投げるボールを御館様が飛脚のカゴで受け止めてみせたり(3回失敗の後)、壮大なピアノ・バラード“墾田永年私財法”のイントロをイントロをポロロンと奏でる元気出せ!遣唐使(渡)に「なに、今のパラパラって入り方? 美味しいチャーハンみたいでカッコいい!」といじり倒した御館様が勝手に“千の風になって”に雪崩れ込んで伴奏させながら♪隣のお墓の前で~ と息をするように自然に脱線してみせたり、“年貢 for you”で再び登場したTAWARAちゃんのアフロヘアの下に隠れていた「中の人」がやついいちろうであることが判明したり、足軽先生/旗本ひろしに「東インド貿易会社マン」(グローバー義和/SKA SKA CLUB)を加えての本編ラスト“狩りから稲作へ”で「タカユカシキ(高床式)!」「ネズミガエシ(ねずみ返し)!」と武道館丸ごと巻き込んだコール&レスポンスが「正岡子規!」「おすしが好き!」になり「高岡早紀!」になり、といういつもの展開の中で女優・高岡早紀本人からまさかのビデオメッセージが映し出されたり……といった具合に、どこを切ってもネタ満載なのだが、それらをすべて列挙していくと何万字あっても足りないので、ここではごく一部のみの紹介とさせていただくことにする。

ステージ両脇の巨大ハニワのうち、上手側(向かって右)の凸凹したハニワが御館様/東インド貿易会社マン/百休さん(TOMOHIKO/ex. SUPER BUTTER DOG)の手作りであることを告げるムービーが流れた後、アンコールの“ハニワニハ”では元気出せ!遣唐使/健介さん格さん/ヒロ出島のピアノ連弾が繰り広げられる中でジャズからサンバへと鮮やかに変化し、“salt & stone”(大塩平八郎と大石内蔵助をお題にした曲)で高らかなクラップを巻き起こしていく。そして、「これは俺らがすごいんじゃない。みんながすごい! ほんと、ありがとうございます」と熱気あふれる客席を見回して、御館様がいつになく真面目な口調で語る。「2010年に『レキツ』をレコーディングして、リリースする2011年3月16日の直前に、大きな地震がありまして。それでも予定は変わらずリリースしたんですよね。世の中的には不安で、悲しい時間が続いてて。でも、そんな中でも『聴いてます』とか『気がラクになりました』とか言ってもらって、『なんか、やらなきゃな』みたいな感じがありまして。で、いろいろあって、その後ちょっとして私、離婚をしまして。いろいろ大変な時期もありましたけども、それでもライヴやったり、フェスやったりっていうのがあって。自分としてはもう、目の前のことを一生懸命楽しんでやるっていうね。それだけを信念にやってきたら……いつの間にか、ここに立っている感じです!」。真っ直ぐに胸の内を語るその言葉に、満場の拍手喝采が湧き起こる。

レキシ@日本武道館
「レキシは『楽しい』とか『面白い』とか『コミカルすぎる』とか言われて。あと、『すごい悩んでいても、レキシ聴くとどうでもよくなる』とか、その言葉をいちばんもらうんですけど(笑)。いや、嬉しいのよほんとは。でもね、よく考えたら、いちばんレキシに助けられたのは、ほんと俺自身だなと思って。辛い時とか、どうしようもない時とか、いっぱいありましたけど。俺がいちばんレキシに助けられて。それを一緒に作ってくれたメンバー、あとはスタッフですよね。そしてやっぱり、ここにいらっしゃる、レキシで遊んでくれてる、みなさんのおかげでございます! いや、『みなさん』じゃないですね。ひとりひとりです。あなた、あなた、あなたです!」……割れんばかりの拍手喝采の後、ミラーボールきらめきキャノン砲の金テープが飛び交う中で歌い上げたラスト・ナンバーは“きらきら武士”! ゲスト全員が再びステージに登場したステージで、キーボードをスタンドから抱え上げて熱演する御館様に、惜しみない拍手と歓声が降り注いでいった。

メンバーとゲストが全員舞台を去った後、ステージ背後に浮かぶ「特報」の文字。なんと、世界で活躍するジャズ・ピアニスト=「オシャレキシ」こと上原ひろみとの東名阪2マンライヴ「レキシ 対 オシャレキシ~お洒落になっちゃう冬の乱~」が12月に開催決定! ロックの殿堂=武道館を制した後も、御館様の音楽的野望はどこまでも留まるところを知らないようだ。(高橋智樹)


■セットリスト

01.大奥~ラビリンス~
02.姫君Shake!
03.RUN 飛脚 RUN
04.ドゥ・ザ・キャッスル
05.ペリーダンシング (feat. シャカッチ)
06.憲法セブンティーン (feat. シャカッチ)
07.妹子なぅ
08.お犬様(feat. 尼ンダ)
09.墾田永年私財法
10.僕の印籠知りませんか?
11.古墳へGO!
12.キャッチミー岡っ引きさん
13.年貢 for you (feat. 旗本ひろし, 足軽先生, TAWARAちゃん)
14.狩りから稲作へ (feat. 旗本ひろし, 足軽先生, 東インド貿易会社マン)

(Encore)
15.ハニワニハ (feat. 東インド貿易会社マン)
16.salt & stone
17.きらきら武士 (feat. 全員)
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