ザ・クロマニヨンズ@渋谷TSUTAYA O-EAST

ザ・クロマニヨンズ@渋谷TSUTAYA O-EAST - all pics by 柴田恵理all pics by 柴田恵理
今年はまず、シングル集やカップリング集やPVコレクションのリリースがあって、イベント出演時や夏フェスは歴代シングル連打のセットリストで盛り上がりまくったザ・クロマニヨンズの、新作『GUMBO INFERNO』を携えたツアー「ガンボ インフェルノ 2014-2015」。新潟LOTSの2デイズに始まった今回のツアーはまだまだ序盤戦で、東京・TSUTAYA O-EASTでの2日目は現在スケジュールされている60公演のうち7公演目にあたる。そのため、詳細なセットリストを含むレポートは控えるけれども、演奏曲など少々のネタバレを含むので、今後の各公演を楽しみにしている方は閲覧にご注意を。

2階席までみっちりのフルハウス状態となったO-EASTでは、お馴染みの前説MCが登場して「地獄の沙汰もロック次第!」とオーディエンスを煽り立て、オッフェンバック“地獄のオルフェ”が鳴り響く中に、運動会さながら紅白帽を被ったスタッフが駆け足で登場すると「GUMBO INFERNO」のバックドロップを覆った幕を引き剥がす。そして大歓声に迎えられる真島昌利(G)、桐田勝治(Dr.)、小林勝(Ba)、甲本ヒロト(Vo)の4人は、ヒロトによる「オーライ!ロックンロォール!!」の掛け声一閃、ド迫力でありながらもギュッとタイトに引き締まったサウンドをぶっ放してくれる。コンバースを履いたヒロトのスリムな脚が勢い良く跳ね上がり、バンドのハーモニー・ワークとオーディエンスのシンガロングが渾然一体となってしまう、この凄まじい瞬発力を見せるライヴ感は、さすがクロマニヨンズといったところだ。

ザ・クロマニヨンズ@渋谷TSUTAYA O-EAST
セットリストに触れない、と言ってみても、クロマニヨンズが新作ツアーで新作曲をがっつりとプレイするのはいつもどおりであり、ヒロトはこの序盤のうちに「もちろん、『GUMBO INFERNO』からは全部やりますよ。それ以外にもいろいろやって……どうなってもロックンロールなんで、安心してついて来いよ。これしか出来なくなったけど、これしか出来なくて良かったと思います」とキレッキレの名言と共に宣言してしまう。大振りなリフと威勢の良いコーラスに燃え上がる“ウォルターに一撃!”や、何かに追い立てられるように性急な“ダイナマイト・ブルース”といったヒロト曲ではブルース・ハープのフレーズも鮮やかに浮かび上がり、一方で、新曲とは思えないほど見事なシンガロングが決まる“流行のクルマ”や、ゴリッとしたギター・プレイで力強く捩じ伏せるように切り出される“B & K”は、マーシー一流の痛烈なアイロニーと風刺が効いたナンバー。《べんりときけんは 笑ってる/並んでゲラゲラ 笑ってる》の切れ味が素晴らしい。

ザ・クロマニヨンズ@渋谷TSUTAYA O-EAST
ライヴに新曲を聴きに来ている、というよりも、全力で食らいつきながらシンガロングによってライヴ曲を完成させに来ている、といった印象のオーディエンスを前に、ヒロトは「みんな、元気だったか? 良かった。波があるよな? 一日のうちで、ずっとこんなん(拳を振り上げる)じゃないよな? こうなってる(背中を丸めてうつむく)ときの方が多いけど、ここに立つときは元気になれます。今日は、ずっと待っててくれたみんなに、嬉しいニュースがあります!」と告げ、オーディエンスをおおっ、とどよめかせる。「明日、矢口真里さんが復帰します!!」と、まあ確かに朗報ではあったのだが、後には「ツイッターとかブログとかで、矢口真里とクロマニヨンズをうまく織り交ぜて、クロマニヨンズを褒めておいてください。おれもずいぶん、ITに慣れた(笑)」と遊び心を振り撒くヒロトであった。“キスまでいける”では、軽快にステップを踏んでR&Bを乗りこなし、かつて錐揉み飛行するかもめのジョナサンにシンパシーを寄せていたヒロトの、新たな冒険精神を宿したラヴ・ソングが触れる者の背中を押す。ロックンロールが世界を変える決定的瞬間とは、こういうものだ。

アップテンポかつエモーショナルなメロディで触れる者に寄り添い、コビーのベースがブリブリと唸りを上げる“孤独の化身”もまた胸を焦がすナンバーだが、マーシーが腕を振り翳してポーズを決めながら披露される“犬の夢”や、奥ゆかしい歌詞が味わい深い“ルル”といったミドル・テンポの新曲群では、生々しいライヴ演奏の息遣いが豊かな情景を描き出してくれる。そう言えば、『GUMBO INFERNO』は、クロマニヨンズ作品としては久々のステレオ録音作品になった。ヒロトとマーシーはTHE HIGH-LOWS時代に『バームクーヘン』でセルフ・プロデュースを行ったり、その後あらためて外部プロデューサーを招いたりしていた。それと同様、クロマニヨンズにおけるモノラルとステレオの使い分けにも、明確な意図がある。「流行のクルマ」が悪いわけじゃない。ただ大切なのは、そのクルマなりロックンロールなりの良さを引き出し、乗りこなし、何よりも愛しているのかどうか、だ。

ザ・クロマニヨンズ@渋谷TSUTAYA O-EAST
上半身を晒したヒロトの「秋は枯れ葉の季節です。みんなで紅葉を見に、行こうよう!」といったダジャレから「新曲もあるし、素晴らしいロックンロールの名曲もある。ロックンロールでいっぱいにします。分け前はいっぱいあるぜ。たくさん持って帰れよー!」といった名台詞までも飛び出し、本編を駆け抜けていったクロマニヨンズ。アンコールの催促には「ガンボー!」「インフェルノ!」のコールが自然に沸き上がり、新作タオルを頭上に広げながら再登場したマーシーは、その体勢のままコビーや(例によってTシャツを「履いた」姿の)ヒロトとご機嫌にハイタッチしていた。全力疾走でありながらも深い味わいが広がる、地獄の業火で煮込んだ人生のガンボ。最新のクロマニヨンズは、やはり最高だ。ツアーの次回公演は10/26の京都FANJ。余さず食らい尽くして欲しい。(小池宏和)
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