tacica@東京キネマ倶楽部

tacica@東京キネマ倶楽部 - all pics by 関 信行all pics by 関 信行
「今回のツアーは、キネマ倶楽部でやりたいっていうところから会場を決めました、実は。そのぐらいやりたかったの。だから、そういうことだよ、楽しみにしてたんだ」――声を張り上げて話すわけでも、熱く語りだすわけでもない。ただ淡々と柔らかい語調で話す猪狩翔一(Vo・G)の言葉のひとつひとつから、この場所で今日という日を迎えられた嬉しさが滲み出ていた。――最新シングル『LEO』を引っ提げての約1年振りとなる全国ワンマンツアー「TOUR 2014 “発光する独走性”」のツアーファイナルがキネマ倶楽部で行われた。tacicaというバンドが持つ絶大な包容力と安心感。聴く者が抱く全ての感情を彼らの音楽に委ねてしまえる心地良さを終始感じられた、心が浄化されるようなライヴアクトだった。

tacica@東京キネマ倶楽部
大正時代の洋館的な雰囲気が漂う会場は、長い間待ち望んだワンマンツアーの最後をその目と見届けようとするオーディエンスで埋め尽くされていた。そして開演時間を過ぎた午後7時10分に会場が暗転すると、SEに合わせたハンドクラップに迎えられて猪狩、小西悠太(B)、そしてサポートドラマーの鈴木浩之が下手側のステージの上にあるサブステージに登場! 少し照れた様子で螺旋階段を降り、各自楽器の前でスタンバイ。3人が目を合わせ、鈴木のシンバル4カウントを合図に“HERO”を奏で出す。煌々とした明かりに照らされたステージでは猪狩が伸びやかに旋律を歌い上げ、小西の弾く細やかなベースのイントロから“vase”へと繋ぐ。鈴木が踏み鳴らすバスドラムの音は、二階席にいてもその振動を全身で感じられるほどの力強さで響いてくる。

tacica@東京キネマ倶楽部
ここで、各自水分補給のためにポジションから離れる。こういった光景はどのバンドのライヴ中でもよく見るが、tacicaのこの時間は少し独特だ。準備を急ぐこともなく、一切の音を発することもしない、ただ無音の時間。観客も物音ひとつ立てずに、音の鳴らないステージをじっと見守る。そんな会場の空気を再度揺らしたのは、猪狩の「どうもありがとう、tacicaです」という感謝の一言だった。そして「みんな大丈夫? 迷わないで来れた? 鴬谷、キネマ倶楽部…あんまり言わない言葉だから言いたくなるよね。親とか心配しなかった? 鴬谷に行くわって言って」と土地柄に絡めた冗談も交えつつ、「楽しみにしてたんだよ。途中嗚咽で歌えなくなるかもしれないけど、その時は小西が歌うから」と小西へ突然話題を振るなどして会場の笑いを誘った。「最後までよろしく」(猪狩)の挨拶を合図に“アリゲーター”“アシュレー”を間髪入れずに演奏、バスドラムに合わせたハンドクラップに小西の裏打ちベースが重なる“コオロギ”に雪崩れ込むと、そのダンサブルなメロディーが会場を揺らす。途中楽器の音が止んで猪狩と小西のアカペラになるなど、特別感溢れる演出も飛び出した。そんな今日のライヴ前半を「入りが階段っていうのが、俺らからしたら既にハードルが高いわけよ」と振り返り、今回のツアーについては「充実してるってよく使う言葉だけど、こういうこと言うんだなって思ってる」と話した。そして「曲をやります」との言葉に続けて鳴らされた“鈍色の邂逅”“Co.star”では叙情的な世界に引き込まれ、“人間1/2”の目が眩むほどのストロボと鈴木のダイナミックなドラムソロに目も耳も奪われる。直後に投下された“ハイライト”“メトロ”は、一気に熱くなった場内の空気を落ち着かせるように優しく心に溶け込んでいった。

tacica@東京キネマ倶楽部
小西によるパネルを使った物販紹介の後にMCを挟み、リズミカルなイントロから“HALO”へ。続けてブルージ―な“某鬣犬”、壮大なスケールで描かれる“ジャッカロープ”で会場を包み込む。「今日はいっぱい喋るって決めてきたから」という猪狩から、ツアー初日の札幌公演の際に台風に見舞われた話や名古屋公演でフロアの柵が壊れたという思い出話が飛び出し、「ツアーが人生みたいだった」と改めて振り返った。そして「人生みたいな曲を」と演奏されたのは、最新シングル“LEO”。さらに“不死身のうた”“人鳥哀歌”と続けると、「次があるかは分からないし、次があっても会えるかどうかは分からない。会いたいとは思うけど、会えるかどうかっていうのはまた別の話だから。いつもそのつもりでやってるんだけど、声が出なくなっても仕方ないと思えるくらい本気でやってる。今日はめちゃくちゃ調子良いけど」(昨晩の就寝の際に濡れマスクとホットアイマスクで調子を万全にしてきたとのこと)と語る。そして「大事な曲だから、最後に置いていこうと思います」と、ラストの“DAN”を丁寧に歌い上げて本編終了。

tacica@東京キネマ倶楽部
アンコールを求め鳴り止まない拍手に呼ばれて、またもやサブステージから階段を降りて登場した3人。「次があるか分からないって言ったけど、次があって…」という猪狩からのまさかの一言に会場からは割れんばかりの大歓声が沸き起こり、「2015年4月5日、来年結成10周年記念のライヴをやろうと思って。中野サンプラザで、初ホール」と概要が発表されると、さらに大きな歓声が上がった。「東京一本だけだし、アニバーサリー的に何かやりたいなって考えてるし、それまでにアルバムとかCD出せたらいいなと思ってるから」と期待感を煽る。そして「一番最初に作った曲を」と“anaphylaxis”、「一番最近作った曲を」と新曲“LUCKY”を披露し、タイトル通りの煌めくような幸福感を音にしてばら撒くと、ラストは“アースコード”を熱演。最後の一音が鳴り止むまで、tacicaの持つ叙情的な世界観を拡げ続けた。今回アンコールで猪狩から発表された、「tacica 結成10周年記念公演『烏兎』」の詳細については、公式HPにアップされているので(10周年記念公演についてのRO69のニュースはこちら→http://ro69.jp/news/detail/115174)、是非ともチェックして頂きたい。(峯岸利恵)

■セットリスト

01.HERO
02.vase
03.アリゲーター
04.アシュレー
05.コオロギ
06.鈍色の邂逅
07.Co.star
08.人間1/2
09.ハイライト
10.メトロ
11.HALO
12.某鬣犬
13.ジャッカロープ
14.LEO
15.不死身のうた
16.人鳥哀歌
17.DAN

(encore)
18.anaphylaxis
19.LUCKY(新曲)
20.アースコード
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする