キッス @ 東京ドーム

キッス @ 東京ドーム - All pics by Masanori DoiAll pics by Masanori Doi
約1年半ぶりとなるキッスのジャパン・ツアーだが、2014年には晴れてデビュー40周年を迎え、さらには(ようやくの)ロックの殿堂入りを果たしたということで、とりわけ祝祭感の強い来日となった。2/23の名古屋で幕を開けたツアーは、テレビ出演などもありつつ、大阪、広島、仙台とショウが行われ、辿り着いたファイナルの舞台は2001年以来となる東京ドーム。クイーン“Another One Bites the Dust”からレッド・ツェッペリン“Rock and Roll”と連なる超王道の客入れSEが場内の興奮度を高めると、暗転ののちに恒例「You Wanted The Best? You Got The Best! The Hottest Band In The World, KISS!!」のアナウンスが響いて、華やかなこと極まりないロック・エンターテインメントの幕開けだ。

『地獄の軍団』のオープニング・ナンバーでもあった“Detroit Rock City”のイントロ・リフで、いきなり放たれるリボンと火柱。ポール・スタンレー(G/Vo)が歌うその曲を、「力」印のレザー・ベストを纏うエリック・シンガー(Dr/Vo)が支え、ジーン・シモンズ(Ba/Vo)はその長い舌でベースのネックを舐め回している。トミー・セイヤー(G/Vo)による鮮やかなギター・フレーズに、ポールのプレイが絡む一幕も上々だ。往年の張りと艶に満ちたハイトーン・ヴォイスはさすがに望むべくもないけれど、“Creatures of the Night”のエモーショナルなメロディを歌い上げ、“Psycho Circus”で最初のシンガロングを導くポール。シンガロングできる曲など幾らでもあるのに、敢えてこの曲(この辺りはつい最近の曲に思えてしまう)に委ねてしまうところが心憎い。70年代・80年代・90年代を一繫ぎにしてしまう序盤3曲だ。たった4人にして厚みと迫力に満ちたサウンドが、さっそくドームを掌握してしまっていた。ジーンはやはり彼らしいアクションを絡めて魅せるけれども、その動きのあるベース・フレーズは、シンプルなようで豊かな、洗練されたポップの粋を伝えてくれる。

「またトーキョーのみんなに会えて光栄だよ。アナタハサイコーデス!」と挨拶しながら、オーディエンスを左右に分けて歓声を競わせるポール。「次はセカンド・アルバムの、キッス・クラシックだよ」と告げて披露されるのは、エース・フレーリー作の“Parasite”だ。ここでジーンのリード・ヴォーカルとなるわけだが、こちらは芯の強いシャウティング・ヴォーカルが見事である。クラップを誘いながら煽り立て、“Shout It Out Loud”で特大シンガロングを巻き起こす。これぞスタジアム・ロックの醍醐味。近未来的な兵士の進軍アニメーションを背負う“War Machine”では、松明をかざして火を吹くパフォーマンスも繰り出される。ポールも負けじと歌詞を引用して問いかけながら、オーディエンスとの掛け合いヴォーカルを演出し、若き日のキッスの映像を背に“Do You Love Me?”を披露。ドラマティックなフレーズを奏でて掩護射撃するトミーも最高だ。

キッス @ 東京ドーム
「名古屋でやって大阪でやって……なに? とにかく全部引っ括めて、東京がナンバーワンだ!」とサーヴィス精神満点にポールが言い放つと、デビュー・アルバムの“Deuce”から「2012年に『Monster』を出したよ。モンスターって、ゴジラみたいなやつだ」と放たれるここまでの最速チューン“Hell or Hallelujah”にかけて、約40年の時間を一気に跳躍してみせる。スピード感の中にも4人のコーラス・ワークががっちり噛み合い、トミーのソロに合わせてギター・ヘッドからは花火が飛ぶ。パワフルな演奏といい身体を張って驚きを提供するパフォーマンスといい、キッスの普遍的な信頼感は揺らぐことがない。近年、ライヴでの選曲はある程度固定しているが、今回のステージでは“I Love It Loud”など『暗黒の神話』(1982)収録曲は3曲と『地獄の軍団』からの4曲に次ぐ数が披露されており、素顔時代の“Lick It Up”もキッスアーミーの高らかな歌声に彩られる。メンバーの交代劇やシーンの変遷といった激動の時代をサヴァイヴしてきた、キッスの信念の強さを垣間みる時間帯だ。

そして雷鳴のSEの中で、不気味にライトアップされるジーンの表情。不穏なベース・ソロを奏でながら目をギョロつかせ、妖しい笑みを浮かべては血糊を吐く。その次の刹那、もの凄い勢いでステージから上昇し、遥か高みのステップへと降り立ってしまった。そして“God of Thunder”を歌うのだが、何もその歳で、そんな高いところまで行かなくてもいいじゃないか、と彼のプロフェッショナリズムに泣きそうになってしまった。一方ポールは、「俺が子供の頃、日本のことなんて何も知らなかったし、日本を訪れるなんて思いも寄らなかったし、ましてや、日本の音楽なんて何も知らなかったんだ。そんなある日、日本の歌がいきなりアメリカでナンバー1になった。アメイジングだったよ」と、アカペラで“Sukiyaki”こと“上を向いて歩こう”を歌い出す。アメリカ人にとっては相当にエキゾチックに響くはずのメロディの節回しを、ポールは見事に理解して歌ってみせた。

続いてロックなディスコ・グルーヴに乗せ、ファルセットを効かせながら“I Was Made for Lovin' You”を情熱的に歌い上げるポールは、「1977年以来、11回目の来日になるよ。11回だぜ? 信じられねえよ。でも、遠くのお前にも、お前にも触れられない。だから、そっちに行く。俺の名前を呼んでくれ!」と告げ、盛大なポール・コールを浴びながら滑車のフックに片足を引っ掛けてオーディエンスの頭上を移動し、アリーナ後方の照明櫓に到達する。そして披露されるのは“Love Gun”だ。ポールの頭上ではミラーボールが煌めき、「次の曲も手伝ってくれ!」とオーディエンスの歌声を誘うのはデビュー・アルバムの最終ナンバー“Black Diamond”である。なんと、ここでエリックが張りのある歌声でリード・ヴォーカルを受け持ち、ドラム・セットごとリフトで上昇して本編を締め括るという展開になったが、キッスアーミーに「クレイジーなところを見せてくれ!」と訴えて記念撮影を行い、4人は去っていった。

アンコールの催促に合わせて、スクリーンに浮かび上がるキッスのバンド・ロゴ(LEDスクリーンの時代にもネオン・サイン風のデザインを貫いているのがいい)。そして交互に映し出されるのは、この日、特別参戦することがアナウンスされていた、ももいろクローバーZのロゴだ。ふたつのロゴが競うように歓声を誘い(駆けつけたモノノフ達も奮闘)、再開するステージにはキッスのバックに立つ、桃の節句のももクロが。披露されるのは、ももいろクローバーZ vs KISS名義のシングル曲“夢の浮世に咲いてみな”である。キッスがその40年のキャリアで初めて、日本のアーティストとコラボして話題になった曲だが、勇壮な和太鼓を交えたセッションの演奏も、ももクロのダンスも、パッケージとしてガッチリと纏め上げられたパフォーマンスになっており驚かされた。一方、紙吹雪舞う大団円の“Rock and Roll All Nite”は、本家キッスの演奏にももクロがフレッシュなコーラスを添える形のワイワイとした楽しげな一幕。それぞれのメンバーが入り乱れて寄り添い、歌う姿もサマになっている。ポールのギター破壊&ももクロのジャンプで華々しく締め括られると、2組が手を繋ぎ挨拶するのだが、一度挨拶した後に遅れて来たエリックが「俺も俺も」といった感じで佐々木彩夏と百田夏菜子の間に収まって手を繋ぎ、挨拶し直したのは最高に可愛かった。徹底的にプロフェッショナルで、かつチャーミング。これこそ、40周年のキッスなのである。(小池宏和)

[SETLIST]
1. Detroit Rock City
2. Creatures of the Night
3. Psycho Circus
4. Parasite
5. Shout It Out Loud
6. War Machine
7. Do You Love Me?
8. Deuce
9. Hell or Hallelujah
10. I Love It Loud
11. Lick It Up
12. God of Thunder
13. Sukiyaki
14. I Was Made for Lovin’ You
15. Love Gun
16. Black Diamond

En1. 夢の浮世に咲いてみな (w/ももいろクローバーZ)
En2. Rock and Roll All Nite (w/ももいろクローバーZ)
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