9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo

9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo - all pics by 橋本 塁all pics by 橋本 塁
「俺たち、対バンツアーするといつも思うんだけど、『本当に俺たちの客なのか?』っていうこの盛り上がりよう(笑)。素晴らしいと思いますよ」と、歓喜あふれる満場のフロアを見回して語る菅原卓郎(Vo・G)の言葉からも、その万感の想いがリアルに伝わってくる。10月8日・MEANINGとの対バンを皮切りに、UNISON SQUARE GARDEN/androp/BLUE ENCOUNT/SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/Nothing's Carved In Stone……と強豪バンドとの競演を展開してきた、9mm Parabellum Bulletの全国ツアー「カオスの百年TOUR 2015」。ツアーも後半に差し掛かったZepp Tokyo 2DAYS公演の1日目、東京スカパラダイスオーケストラとの奇跡の邂逅が実現した一夜を、ここにレポートしていくこととする。

9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
●9mm Parabellum Bullet(Acoustic Set)

「今から我々が前座として、みなさんをかき回したり、解きほぐしたり、あっためたりするんで」(卓郎)とライヴ冒頭に9mmの4人が登場。今回のツアーの大きな特徴は、全会場のオープニングアクトを「9mm Parabellum Bullet(Acoustic Set)」が務めていること。かつて「MTV Unplugged」でも披露したアコースティックスタイルで、いきなり冒頭の“Black Market Blues”から熱いクラップを巻き起こした後、滝が鍵盤ハーモニカを奏でて“フライデーナイト・ファンタジー”(ピエール・ポルト・オーケストラ/かつての『金曜ロードショー』のOP曲)のカバー、さらに「このツアー用にアレンジした曲」という説明とともに“黒い森の旅人”を披露していく。3曲と短いアクトながら、卓郎ソロ弾き語りツアーを経てより大きく結実した「“うた”としての9mm」が、珠玉のアンサンブルとともにZeppの隅々まで広がっていった。

9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
●東京スカパラダイスオーケストラ

そしてスカパラ。中盤のMCで谷中敦(Baritonesax)が「スカパラもいろんな対バンやってきてるけど、今日は楽屋入りした段階から、『これって……試合?』みたいな(笑)。試合はマジでやんないとね!」「闘うように楽しんでくれよ!」と呼びかけていた通り、「準備できてるかあああっ!」の加藤隆志(G)の絶叫とともに流れ込んだ“5 days of TEQUILA”から、9人全員サウンドもエモーションもフルスロットル状態。“ルパン三世'78”“ONE STEP BEYOND”と、1秒たりとも熱量の途切れることのない迫力の演奏を繰り広げていく。

スカを基調にロックンロール、ジャズ、ラテンなど多彩な要素をパワフルな歓喜へと昇華していくスカパラの音楽世界は、ジャンルレスなロックの爆発力を発揮する9mmとそのオーディエンスにはベストマッチだったのでは?と思わせる怒濤の熱気。“めくれたオレンジ”でゲストヴォーカルとして登場した卓郎がスカのステップを踏みながらハンドマイクで熱唱するというのも、この日ならではの名場面だろう。“SKA ME CRAZY”で巻き起こったOiコールとハイジャンプ。一面モンキーダンスの渦を巻き起こした“DOWN BEAT STOMP”……温度を上げまくった熱演のラストは、舞台前面に飛び出した8人のみならず茂木欣一(Dr・Vo)含め全員エースストライカー状態で“ペドラーズ”! ホーム/アウェイ関係なく、圧巻のサウンドとフロアの情熱ががっちり噛み合った、至上のステージだった。

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●9mm Parabellum Bullet

すでにむせ返るような高揚感が立ち込めるZepp Tokyoに、いよいよ9mm Parabellum Bulletが登場。いきなり最新クアトロA面シングル『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』からラテンビート渦巻く滝善充(G)作曲の“反逆のマーチ”で、会場の狂騒感を勢いよく煽り立てた後、シングルからもう1曲“ダークホース”、さらに“Cold Edge”、と中村和彦(B)作曲のソリッドなロックナンバーを連射。そこからメタルの硬質感とハイパーな緊迫感に満ちた“Wanderland”へ……ロック衝撃映像集的なエクストリームな躍動感に満ちた音楽世界が、観る者すべての魂と響き合って、壮絶な祝祭空間を生み出していく。「ハロウィンも近いことだし……俺は探し人をしている。ヴァンパイアガールはどこだ!」と“Vampiregirl”で満場のシンガロングを呼び起こし、最新シングルからの卓郎作曲の鋭利なロックソング“誰も知らない”が赤黒い風景を描き出していく。かみじょうちひろ(Dr)のツーバスと卓郎&滝のツインリードがスリリングに絡み合う“光の雨が降る夜に”、ドラマチックな物語性を音で描く極北のバラード“カモメ”……スカパラの幅広い音楽性に真っ向から挑むように、9mmが自身のポテンシャルを全開放していく図は痛快そのものだった。

9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
「スカパラの音楽を聴いてたり、ライヴを観てたりしたらさ、勇気がどんどん湧いてくるんだよ、俺は。『うわあ、もう何でもできるような気がする!』みたいな」。卓郎はスカパラへの想いをそんな言葉で語っていた。「どんなバンドを観ててもそうなんだけど、湧き方が違うっていうか。あの火って絶対消えないんだな、じゃあ俺頑張れるなって、そんな勇気の出方なんだよね。結局、俺が音楽でやりたいのも、そういうことだなと思ってます。みんなの中に、勇気が生まれてきたらいいなと思って」……メタルディスコアンセム“Discommunication”からライヴは一気にクライマックスへ。ツーバスシャッフルビートがZeppを震わせた、かみじょう作詞作曲のシングル曲“Mad Pierrot”の獣の如きしなやかさからも、新たなトライアルに満ちたクアトロA面シングルの4曲が完全に血肉化されたことが窺える。

9mm Parabellum Bullet × 東京スカパラダイスオーケストラ@Zepp Tokyo
“The Revolutionary”“Talking Machine”“新しい光”と終盤3曲を生き急ぐような加速度で駆け抜けて、Zeppをでっかく揺らして大団円……と思いきや、4人のセットが残る舞台にスカパラの機材が運び込まれ、9mmの4人が、そしてスカパラ9人が全員再登場。「東京スカパラダイスオーケストラは今、『叶えた夢に火をつけて燃やす』っていうツアーをやってるんですよね? 夢だけじゃなくて、身も心も、東京も全部燃やしてしまわないか、みんな! いけるか!!」という卓郎のコールとともに、13人のロック無敵艦隊状態で轟かせたのはもちろん“ハートに火をつけて”! イントロのギターフレーズをスカパラホーンズが、滝と加藤のギター&沖祐市(Key)のオルガンが響かせる、その眩しいくらいに晴れやかなヴァイブとヴァイタリティ。驚きと感激の大歓声がに割れんばかりに鳴り渡りフロアが震える。もともとスカの要素がある曲でスカパラともハマりが良かったから――では到底説明のつかない、圧倒的なポジティヴィティとロックマジックが、そのアクトには確かにあった。Zepp Tokyo公演2日目:the band apartとの対バンを経て、「カオスの百年TOUR 2015」はいよいよNAMBA69/アルカラとの激突を残すのみ!(高橋智樹)
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