「今から我々が前座として、みなさんをかき回したり、解きほぐしたり、あっためたりするんで」(卓郎)とライヴ冒頭に9mmの4人が登場。今回のツアーの大きな特徴は、全会場のオープニングアクトを「9mm Parabellum Bullet(Acoustic Set)」が務めていること。かつて「MTV Unplugged」でも披露したアコースティックスタイルで、いきなり冒頭の“Black Market Blues”から熱いクラップを巻き起こした後、滝が鍵盤ハーモニカを奏でて“フライデーナイト・ファンタジー”(ピエール・ポルト・オーケストラ/かつての『金曜ロードショー』のOP曲)のカバー、さらに「このツアー用にアレンジした曲」という説明とともに“黒い森の旅人”を披露していく。3曲と短いアクトながら、卓郎ソロ弾き語りツアーを経てより大きく結実した「“うた”としての9mm」が、珠玉のアンサンブルとともにZeppの隅々まで広がっていった。
そしてスカパラ。中盤のMCで谷中敦(Baritonesax)が「スカパラもいろんな対バンやってきてるけど、今日は楽屋入りした段階から、『これって……試合?』みたいな(笑)。試合はマジでやんないとね!」「闘うように楽しんでくれよ!」と呼びかけていた通り、「準備できてるかあああっ!」の加藤隆志(G)の絶叫とともに流れ込んだ“5 days of TEQUILA”から、9人全員サウンドもエモーションもフルスロットル状態。“ルパン三世'78”“ONE STEP BEYOND”と、1秒たりとも熱量の途切れることのない迫力の演奏を繰り広げていく。
スカを基調にロックンロール、ジャズ、ラテンなど多彩な要素をパワフルな歓喜へと昇華していくスカパラの音楽世界は、ジャンルレスなロックの爆発力を発揮する9mmとそのオーディエンスにはベストマッチだったのでは?と思わせる怒濤の熱気。“めくれたオレンジ”でゲストヴォーカルとして登場した卓郎がスカのステップを踏みながらハンドマイクで熱唱するというのも、この日ならではの名場面だろう。“SKA ME CRAZY”で巻き起こったOiコールとハイジャンプ。一面モンキーダンスの渦を巻き起こした“DOWN BEAT STOMP”……温度を上げまくった熱演のラストは、舞台前面に飛び出した8人のみならず茂木欣一(Dr・Vo)含め全員エースストライカー状態で“ペドラーズ”! ホーム/アウェイ関係なく、圧巻のサウンドとフロアの情熱ががっちり噛み合った、至上のステージだった。
すでにむせ返るような高揚感が立ち込めるZepp Tokyoに、いよいよ9mm Parabellum Bulletが登場。いきなり最新クアトロA面シングル『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』からラテンビート渦巻く滝善充(G)作曲の“反逆のマーチ”で、会場の狂騒感を勢いよく煽り立てた後、シングルからもう1曲“ダークホース”、さらに“Cold Edge”、と中村和彦(B)作曲のソリッドなロックナンバーを連射。そこからメタルの硬質感とハイパーな緊迫感に満ちた“Wanderland”へ……ロック衝撃映像集的なエクストリームな躍動感に満ちた音楽世界が、観る者すべての魂と響き合って、壮絶な祝祭空間を生み出していく。「ハロウィンも近いことだし……俺は探し人をしている。ヴァンパイアガールはどこだ!」と“Vampiregirl”で満場のシンガロングを呼び起こし、最新シングルからの卓郎作曲の鋭利なロックソング“誰も知らない”が赤黒い風景を描き出していく。かみじょうちひろ(Dr)のツーバスと卓郎&滝のツインリードがスリリングに絡み合う“光の雨が降る夜に”、ドラマチックな物語性を音で描く極北のバラード“カモメ”……スカパラの幅広い音楽性に真っ向から挑むように、9mmが自身のポテンシャルを全開放していく図は痛快そのものだった。