ボン・イヴェール @ 新木場スタジオコースト

ボン・イヴェール @ 新木場スタジオコースト - All pics by Kazumichi KokeiAll pics by Kazumichi Kokei
ボン・イヴェール @ 新木場スタジオコースト

ボン・イヴェール @ 新木場スタジオコースト

遂に初来日を果たした、USインディー最大最深の秘境=ボン・イヴェール。アジア諸地域を巡るツアー・スケジュールの一環として、日本では東京・大阪の2公演が組まれた。新木場スタジオコーストの当日は、会場スタッフが「本日は超満員の公演となっております」とアナウンスするほどの盛況ぶりで、並々ならぬ待望感が伝わってくる。3/2のZepp なんば大阪公演を楽しみにしている方は、以下レポート本文を終演後に読んで頂けると嬉しいです。当日券が出るようなので、迷っている方には「絶対観ておいた方がいい」とだけ、先にお伝えしておきます。

ドラム・セットが2組設置されたステージに、総勢8名のバンド・メンバーが登場して満場の大喝采を浴びる。さっとギターを携えたジャスティン・ヴァーノンは「準備はいい? 僕たちはバッチリだよ」とフレンドリーに言葉を投げかけ、“Perth”のドリーミーなギター・リフレインが歓声を誘う。それぞれにギターやパーカッションも担当する女性メンバー、ステイヴリー=テイラー3姉妹(UKのThe Stavesメンバー)の、教会仕込みというクワイアが立ち上がり、ツイン・ドラムスのマーチング・ビートはパワフルだ。緻密に制御されてはいるが、想像していたよりも肉感に満ち溢れたロック・アンサンブル。スタジオコーストの広大なフロアを忘れさせるほどのスケール感でクレッシェンドし、呑み込まれる思いがする。

1曲目で目眩を誘うような美しいファルセットを披露したジャスティンは、続く“Minnesota, WI”で一転、雄々しいテナー・ヴォーカルを響かせる。一昨年に発表されたサントラ用の新曲“Heavenly Father”はソウルフルなゴスペル風コーラスに彩られ、神の存在と向き合う生身の人間のエモーションが浮かび上がるようだ。フォーキーなサウンドとエレクトロニックなサウンドが滑らかに融合し、“Lump Sum”では舞い上がるような推進力を生み出してゆく。

少人数編成での静謐な弾き語りとなった“Flume”の後、ジャスティンは「雰囲気が沈んでない? 大丈夫?」と半ばジョーク混じりに告げる。何しろ、一曲フィニッシュするごとに大きな喝采を浴びているのである。気の遠のくような美しいライヴではあるのだが、その音像は決してぼんやりとはしていない。プライヴェートな心象とアメリカのリアルな情景が幾重にも交差するボン・イヴェールの楽曲は、大きな成功を収めてより広い、ユニヴァーサルな価値を持つアートへと変化しているのだろう。“Blindsided”でのジャスティンは、思い切り昂った間奏のリード・ギターを弾き倒していた。

大学の同窓生だったというギタリストのアンディーを紹介して、「大学の校舎の下で作った曲だよ」と披露されるのは“Towers”。集まったオーディエンスに向けて丁寧に感謝の思いを伝え、ボン・イヴェールとしての来日を喜ぶジャスティンには、あちらこちらから「I love you, Justin!!」の声が飛んでいた。『ニュームーン/トワイライト・サーガ』サントラに提供した“Roslyn”はセイント・ヴィンセントとのコラボ曲だったが、寄せては返すようなサウンドスケープが素晴らしい名演。テクノロジーを駆使しつつ息遣いをしっかりと描き出す“Michicant”にも、最高の曲を最高のライヴ・パフォーマンスとして届けようとする意思が立ち込めている。

EP曲“Woods”がまた凄くて、オートチューンのソウルフルなアカペラが次々に多重コーラスとしてデザインされてゆく間、色とりどりのスポットライトがひとつ、またひとつ、とジャスティンに当てられてゆくのである。そして、クライマックスへと向かう一幕に堂々配置された“Holocene”の美麗な響き。“Calgary”をバンドがダイナミックに描き出すと、あらためてジャスティンは感謝の思いを伝えて椅子に腰掛け、じっくりと抑揚をつけながら、ときに荒々しさまで垣間見せる“Skinny Love”の弾き語りを繰り出して本編を締め括る。胸の内に渦巻くものの輪郭を捉え、あらゆる手段を用いて明確に伝えるステージだった。割れんばかりの拍手喝采に、笑顔を浮かべながらペコリ、ペコリとお辞儀するジャスティンである。

アンコールを迎えてからの“re:Stacks”は、ジャスティンとThe Staves 3姉妹によってスイッチング・ヴォーカルで届けられる。そして念入りにシンガロングの練習をしてから始まる“The Wolves (Act I and II)”は、《What might have been lost》のリフレインが会場全体に広がる強烈なパフォーマンスになった。爆発的なアウトロの中からロング・シャウトを放つジャスティン。最後には万感の“For Emma”が、大らかに、オーディエンスのクラップを巻き込んで響き渡っていた。

カニエ・ウェストとの共演やグラミー賞といったトピックのおかげもあって、孤独な魂の彼岸を見つめるようなボン・イヴェールの音楽は、その潔癖さを保ったまま、多くの人々に分かち合われるようになった。ただ、オールタイムな選曲で、現在進行形のボン・イヴェールを伝えるパフォーマンスは、以前からのファンにとっても感慨深い内容になったのではないだろうか。願わくば、モノクロームの視界が命の向こう側で色づくようなあの“Beth/Rest”も聴いてみたかったが、それは次回の楽しみにしておきたい。(小池宏和)


〈SETLIST〉
M1. Perth
M2. Minnesota, WI
M3. Heavenly Father
M4. Lump Sum
M5. Flume
M6. Blindsided
M7. Towers
M8. Roslyn
M9. Michicant
M10. Woods
M11. Holocene
M12. Calgary
M13. Skinny Love
En1. re:Stacks
En2. The Wolves (Act I and II)
En3. For Emma
公式SNSアカウントをフォローする

洋楽 人気記事

最新ブログ

フォローする