レイザーライト @ 渋谷AX

レイザーライト @ 渋谷AX - レイザーライトレイザーライト
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3rdアルバム『スリップ・ウェイファイヤーズ』を昨年末発表したばかりのレイザーライト、06年9月以来ぶりの来日単独公演となる。

彼らの本国での人気を決定づけた06年発売の2ndアルバム、『レイザーライト』の一皮剥けた作風の変化は、00年代のUKバンド・バブルの一群とは一線を画する存在であることを知らしめた。今回の3rdは、これまでの着実なキャリアに裏打ちされた成熟に加え、新たな向上心がむき出しになった作品でもあったと思う。バンドとして理想的な進化を遂げてきた彼らだが、この3rdでこれまでのどの作品以上に、さらなる高みを目指さんとする、フロンティア精神がみなぎっており、この先のさらなるピークを予感させてくれるところが、実に頼もしい。

そうした意欲は、パフォーマンスにも反映されており、端々から、音楽に対するアグレッシヴな姿勢が強烈に伝わってきた。“ゴールデン・タッチ”“イン・ザ・モーニング”とヒット曲連発で幕開けたステージ。当然フロアも沸騰で、シンガロングも。そして“ダルストン”に続いて3rdから“タブロイド・ラヴァー”が。以降3rdを中心にしつつ3枚のアルバムの楽曲がバランス良く配されたセットリスト。

前回の来日時、演奏面でめざましいほどの進化をみせつけてくれたが、今回も着実に安定感が増している。彼らの楽曲には多彩な表情があるが、アップテンポな曲は、軽快かつ衝動的に。ブルージーな曲では包容力と哀愁をたたえながら、以前にも増して、作品の世界観が奥深く再現されていた。

なお、システム面でトラブルがあったようで、ベースやギターなどで、繊細な弱音がスピーカーで再現されない場面がありベースのカールも歯軋りしていて、ちょっと気の毒なときもあったが、エキサイティングかつメリハリの効いたパフォーマンスは、海外ではスタジアム・クラスの会場を次々と制覇、レディングでヘッドライナーを務めるなどしてきた実力者の貫禄に満ちていた。一方で、そのスケール感と爆発力は、今回の会場に収まりきるようなものではなく、場数をこなしてきたこのバンドにとっては、観客とのケミストリーという点において、濃密度は高くてもダイナミズムの面で、どうしても手ごたえに欠ける部分があるかもしれない。ただ、そこで妥協してしまうバンドもたくさんみてきたけど、フロアを煽り続けたジョニーからは、「まだまだこんなもんじゃないだろ」という、一歩も引かない鼻っ柱の強さと真摯さが感じられて、それがなんともよかった。ファッション誌やタブロイド誌をにぎわせるそのイメージから、まだ彼らのことを誤解している人がいるかもしれないけど、気骨のあるバンドなのだ。あらためて、それを実証するパフォーマンスだった。(森田美喜子)
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