【来日レポ】ナッシング・バット・シーヴス @ 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE公演

【来日レポ】ナッシング・バット・シーヴス @ 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE公演 - Photos by Yoshika HoritaPhotos by Yoshika Horita

世界的なギター・ロック、バンド・ミュージックの苦境はほぼ常態と化した感がある2010年代後半だが、UKシーンももちろんその影響下にある。でも、例外的にセールス、バンドの規模感、堅固なファンベースをキープしているバンドたちもいて、中でも目立った集団を形成しているのがミューズビッフィ・クライロを頂点とする、ラウド系ギター・ロックの一群だ。

ギター・ロックの苦境を脱ギターのポップ化で乗り切ろうとするバンドたちが大半を占める状況にあって、彼らはギター・ロックの苦境をさらなるギターの強化で正面突破しようとしているバンドだとも言えるだろう。そしてこのナッシング・バット・シーヴスは、ミューズやビッフィのオープニング・アクトを務めた経歴からも伺えるように、UKラウド系ギターの期待の星として認識されているバンドだ。

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ただし、NBTの面白さはギター・ロックの苦境をさらなるギターの強化で正面突破する一方で、とてつもなく柔らかく繊細なメランコリィを鳴らす内向性を持ったバンドでもあり、とことん伶俐で構築的なサウンド・バランスを生み出す理知的なバンドでもあるという、そのキャラクターの多面性だ。

そして彼らのその多面性が各方面にMAXで広げられたのが昨年のニュー・アルバム『ブロークン・マシーン』であり、その多面性を120%の熱量と精度で体現してくれたのが、今回の単独来日ツアーだったのだ。

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2015年のサマソニでの初来日から2年半弱で早くも4回目の来日となった今回のツアー、東京会場のduo MUSIC EXCHANGEは見事にソールドアウトだ。初来日時は怖いもの知らずでギター・リフを叩き付け、グルーヴをぶん回し、初期レディオヘッドジェフ・バックリィを足して二で割らないメロウなメロディを鳴らし、レッド・ツェッペリンのカバーをコナー(Vo)の天賦のファルセットを轟かせて堂々披露してしまったりと、無自覚ゆえにのびのびとプレイしていた彼らだが、その後の経験の積み重ねの中で彼らのパフォーマンスは緩急の付け方、音の間の取り方、もしくは音の間引き方の点において飛躍的に洗練されてきている。

とりわけ新作『ブロークン・マシーン』のナンバーでそれは顕著だった。日本の「金継ぎ」技術から影響を受け、「完璧に思えるものの中に内在する不完全さ」、「不完全であることを肯定する美」をテーマに掲げたアルバムに相応しく、同作のナンバーには重量級のラウド・ギターに危うい揺らぎが存在し、コナーの苦悩と疲弊したメンタルがそのまま乗り移った痛切なメロディに、パーソナルな揺らぎを超越した美しさが宿っている。

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そんな新作のアンバランスをパーフェクトに再現した“Soda”や、“Broken Machine”、“I Was Just A Kid”のパフォーマンスはとりわけ素晴らしく、特にギターはハード・ロックでドラムスはパンク、そしてキーボードはアンビエントであるという個々の異なるピースが、無理矢理継ぎ接ぎされていく、そして無理矢理なのに奇跡的にバロックな美しさが生じている“I Was Just A Kid”は、『ブロークン・マシーン』時代のNBTを後々象徴することになるだろう名パフォーマンスだった。

また、4つ打ちのビートにラップというかポエトリー・リーディング調のシャウトを乗せていく、“Live Like Animals”のような新機軸のナンバーも既にばっちりこなれていて、全公演ソールドアウトのUKツアーに加え、ヨーロッパ、アメリカを回った昨年のツアー修行が彼らの血肉となっているのを感じる。日本で世界初披露された“Number 13”の、ギター・グルーヴとベース・グルーヴが真正面から激突するようなラウド・ファンクも新鮮だった。

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全編にわたって一瞬もテンションが落ちない濃厚な1時間強のライブだったが、ステージ上の5人はすこぶるヘルシーで、自分たちのパフォーマンスを思いっきり楽しんでいる様子がひしひしと伝わってくる。そして合唱に手拍子にと彼らとぴったり呼吸を合わせて会場の熱を高めていくオーディエンスも最高だった。前述のようにギター・バンド苦境の時代に善戦しているギター・バンドは必ず堅固なファンベースに支えられているもので、アルバムのマイナー曲まできっちり合唱するNBTの日本のファンもまさにその象徴だったと言えるだろう。

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“Itch”や“Wake Up Call”、そして“Ban All the Music”のようなデビュー・アルバムのナンバーはもはや大定番アンセムの風格で、コナーのボーカルも歌えば歌うほど声量と艶が増していく無敵モード。特に“Ban All the Music”から“Sorry”へ、そしてアンコール・ラストの“Amsterdam”へのファイナル・コーナーは、そこまでの1時間で溜めに溜めまくった緊張感を一気に解き放つようなカタルシスが吹き荒れた、まさに完全燃焼!

2018年、ロック苦境の時代にあってなお、いや、そんな時代だからこそ、ロック・バンドの価値と力はこうしてライブで明らかにされるべきだと確信させてくれた幕切れだった。(粉川しの)

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〈SETLIST〉

I'm Not Made by Design
Live Like Animals
Trip Switch
Wake Up Call
Soda
Number 13
Drawing Pins
Graveyard Whistling
I Was Just a Kid
Honey Whiskey
Itch
If I Get High
Broken Machine
Hell, Yeah
Ban All the Music
Sorry
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Particles
Amsterdam
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