SUPER BEAVER/日本武道館

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 青木カズローPhoto by 青木カズロー

●セットリスト
01. 美しい日
02. 証明
03. うるさい
04. 正攻法
05. ファンファーレ
06. らしさ
07. 赤を塗って
08. →
09. 361°
10. 歓びの明日に
11. 27
12. 人として
13. シアワセ
14. 青い春
15. 東京流星群
16. 秘密
17. ありがとう
18. 愛する
(アンコール)
19. ラヴソング(新曲)
20. それでも世界が目を覚ますのなら
21. 素晴らしい世界


4月30日に、今年結成14年目を迎えた4ピースバンド・SUPER BEAVERにとって初となる日本武道館公演が行われた。チケットは即完売の満員御礼で迎えられたこの日は、あまりの需要に急遽注釈付指定席の販売や生中継が決まるほど、多くの人が待ち望んでいた一日だった。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 日吉"JP"純平Photo by 日吉"JP"純平

開演数分前に「間もなく開演致します」という館内アナウンスが流れると、会場からは早くも拍手が上がった。「いよいよ始まる……!」というそんな期待感に満ち溢れた会場が暗転すると、ステージ背面に設置された特大スクリーンに「60」の数字が映し出された。スタジオでのメンバーの様子やMVなどが次々に映し出される中、59,58,57……との数字の変化と共に白熱していくオーディエンスのカウントダウン。そして「0」になったと同時に、柳沢亮太(Gt) 、上杉研太(Ba)、藤原“29才”広明(Dr)、そして渋谷龍太(Vo)がステージに登場!

割れんばかりの大歓声に包まれつつ「レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムトーキョージャパン――なんてものを恥ずかしげもなく掲げてきました。山あり谷ありなんて言葉じゃ言い表せないけど、この日がひとつの答えだと思っています……なんか最後のMCみたいになっちゃった」と笑いながら「2018年4月30日、ライブハウスから日の丸の下へやって来ました。14年目のインディーズバンド、SUPER BEAVER始めます。全員お手を拝借!」と言葉を続けて“美しい日”で幕を開けたのだが、この瞬間に、今日が文句の付けようのない美しい日になることが確定したようなものだった。あれほど華やかで希望に溢れた開演をこの目で見ることができただけで既に感無量な想いだったが、そんな幸福感はもちろん超序の口。

そこから“証明”、赤と白の照明がド派手に乱れるなかで“うるさい”を畳み掛けるようにプレイし、「始まる前までは【連れてきてもらった】って感覚が強かったの。だけど、【連れて来られて良かった】と思うようになった。日本武道館に意味があるんじゃなくて、あなたがいる日本武道館だから意味がある。俺たちはそういうバンドでございます。夢物語とか非現実的だとか言われてきたバンドが実現させる日本武道館! これがバンドマンでございます!」との渋谷の宣言の後、「14年間、どんな戦い方をしてきたか見せてやるよ」と渾身のロックチューン“正攻法”や疾走感溢れる“ファンファーレ”で会場の熱気をぐっと上げた。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 日吉"JP"純平Photo by 日吉"JP"純平

次に演奏された“らしさ”を聴きながら、4人の音楽の肯定力に改めて敬服した。SUPER BEAVERの曲を聴くと「SUPER BEAVERの曲は良い」と思うだけではなく、「彼らの曲を良いと思える自分が誇らしい」と思える。それは彼らが絶えず聴き手である私たちに対して「あなたが大事なんだ」と言い続けてくれるからに他ならないし、この人たちが大事にしてくれる私自身を自分が大事にしないでどうするんだと思わずにいられなくなる。大事な人の存在で、自分自身の大事さを確認できる――それは依存ではなく信頼であり、上からでも下からでもなく、14年間「あなた」ひとりひとりと真正面から向き合ってきた彼らだからこそ紡ぐことのできたファンとの関係性なのだろう。

そんなこれまでのバンドの歩みを振り返りながら「上手くいくならそっちの方がいいだろうけど、上手くいかなかった時の方が上手くいった時よりも、上手くいく可能性があると思ってる」と語った渋谷の言葉、「俺も楽器ができるんだってところを見せてもいいでしょうか?」と奏でた“赤を塗って”での楽しそうな4人の姿、めいっぱいの明るさで高らかに鳴らした“歓びの明日に”で伝えた「あなたの背中だけ、押しに来ました」という想いに、見栄や虚勢は一切なかった。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 日吉"JP"純平Photo by 日吉"JP"純平

そして藤原のカウントから始まり、大人になった今を噛みしめるように歌った“27”を終えると、ステージ正面のスクリーンが真っ二つに開き、その奥には横に並んだストリングス隊が現れた。鳴り響くアンサンブルの音色の壮大さに会場から感嘆の声が上がる中で、4人は“人として”をじっくりと演奏した。スローテンポだけれど力強いメロディとストリングスの美しいハーモニーが重なったことは勿論だが、この日ほど《人として/人として/かっこよく生きていたいじゃないか》という一節が響いたことはない。本気でそう思えるほどに、堂々と音を放つ4人は文句なしにかっこよかったし、彼らの人としての生き様そのものをこの曲に見たような気持ちになり目頭がぎゅっと熱くなった。

「武道館は、聖地です。一個の通過点にしなきゃいけないねって話をしたんだけど、それは少し違くてね。武道館は立派なひとつの到達点です。俺たちは通過しながら、片手間で人と向き合ってきたつもりはない。いつだってその場所その場所で足を止めて向き合ってきた。そしたら14年も掛かってしまった」と語り、「ただ、この到達点が終着点ではないということに俺たちの面白さがあると思っています。これからも宜しく」と改めて述べ、「メジャー時代に胸を張って演奏してきた唯一の曲」との紹介のもとで“シアワセ”をストリングスバージョンで演奏した。

メジャー時代に味わった辛さもこの日の丸の下へきちんと連れてきた彼らのその真面目さに胸を打たれつつ、「日本武道館、全員の両手を見せてください!」との柳沢の合図で一斉にハンズアップされた光景が眩しい“青い春”、「せっかく俺たちとあなたがバチバチにやりあっているんで、一緒にひとつのことを成し遂げたいと思ってる」と促しながらミラーボールの光が流星の如く輝く中で煌々と響かせた“東京流星群”、そして“秘密”を会場全員で歌い上げた。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 日吉"JP"純平Photo by 日吉"JP"純平

そして、ここまで来ることができたのは、チーム、仲間、自分たちの音楽を信じ続けてくれたあなたのおかげだと深く礼をした渋谷に、柳沢に、上杉に、藤原に降り注いだ観客からの長い拍手。その優しくて強い音に込められた観客からの滝のような感謝の返答を浴びて「やめて! 辛くなる! 心がぎゅっとなる……」と声を詰まらせた渋谷だったが、「いつまでも誰かが近くにいてくれるっていうのは全然当たり前じゃなくて、いつか必ず終わりがくるんだよね。ひとりで生まれて、ひとりで死んじゃうんだよね。でもその間、どういう風に歩むかは全部あなたが決めていいことだから」と、堂々と真っ直ぐ伝えた。

そして「目の前にいるあなたに向けて、俺たちは次の曲を全身全霊、心を込めて思いっきり歌おうと思います。しっかりと受け取ってください」と伝えた渋谷は「少しも当たり前だと思っていませんので! これからも宜しくお願いします!」と肉声で叫んだ後に、これ以上ないほど想いのこもった“ありがとう”を届けた。日々何気なく交わすこの言葉がこんなにも強く深く響くことを、そう思える音楽に、バンドに出会えたことを心の底から幸せに思いながら、本編最後に歌われた“愛する”に至るまで、SUPER BEAVERと観客との感謝の往来はずっとずっと続いていた。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 鈴木公平Photo by 鈴木公平

そしてアンコールを熱望する拍手が鳴り止まない中、冒頭時と同じくスクリーンに映像が映し出されたのだが、そこには6月27日にフルアルバム『歓声前夜』のリリース、さらに自身初のワンマンツアーの開催の発表が! このサプライズには会場から大興奮の歓声が上がり、改めてステージに現れて「もっともっとでっかいところも考えているんで、楽しみにしていてください」と語ったメンバーも誇らしそうな表情だった。そして柳沢、上杉、藤原も一言ずつ武道館公演を迎えた想いを語ったが、それぞれ第一声に出てくる言葉はやっぱり「ありがとう」で、なんとも彼ららしいなと思えた。

そこからメンバー全員の両親も来ているという話になり「あなたのおかげで親孝行できています」と屈託のない笑顔でまた感謝を告げた後、「新曲やってもいいですか?」との渋谷の言葉をきっかけに新作に収録される“ラヴソング”を初披露! 「もう、言うことは何も残っていません。本当に、今日が嬉しかった、今日が楽しかった。ありがとね」とこの日何度目か分からない感謝の言葉を告げ、この日何度目か分からないが、一番大きく、一番長い拍手が沸き起こった。

そして「あなたと一対一の対峙を、あなたたちじゃなくあなたに歌っていくバンドでありたいと思います。同じ時代を、同じ時を生きられて……」と続けようとするも、込み上げる涙をぐっと堪えるが故に言葉が詰まる渋谷。「今日をゴールにしないために、絶対泣かないって決めてんだ」と鼻の頭を赤くしながら笑う彼の横で優しく弾かれ続ける柳沢のギター、励ますように叩かれた藤原のハイハット、ぐっと見守る上杉の姿がとても愛おしく、心強く思えた。そんな愛に満たされた空間に「ラスト2曲!」とプレイされた“それでも世界が目を覚ますのなら”、そして金吹雪が舞う中で爽快に歌われた“素晴らしい世界”を以って、彼らの初の日本武道館公演は堂々と幕を閉じた。

SUPER BEAVER/日本武道館 - Photo by 青木カズローPhoto by 青木カズロー

2018年4月30日にSUPER BEAVERのライブを選んだことを、私はずっと誇りに思い続けるだろう。そしてこの日を思い返した時に一番に出てくる想いは、楽しかった! や感動した! ではなく、やっぱり「ありがとう」なのだろうなと思う。そんな温かい気持ちが残る、最高にして最愛の夜だった。(峯岸利恵)

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