※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを一部表記しています。ご了承の上、お読みください。
BUMP OF CHICKENの約3年半ぶりのアルバム『aurora arc』を引っ提げてのツアー「aurora ark」。中盤戦である新木場STUDIO COAST公演2デイズの2日目。藤原基央(Vo・G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の4人のテンションはとても高く、曲に込められた想いの深さが最短距離で伝わってきた。
バンドの20周年の締めくくりとして生まれた曲“リボン”。そこから約2年半が経ち、4人でカナダにオーロラを観に行き、アルバム『aurora arc』を作り、そのリボンはさらに固く結ばれている。《僕らを結ぶリボンは》と歌った後、特に力を入れて《解けないわけじゃない》と歌った藤原。チャマと増川と升の《強くなれた 弱くなれた》というコーラスが重なった時の温かな一体感。
藤原がマイクから少し距離を取り、肉声とマイクを通しての歌が両方聴こえるような臨場感で届けられた“流れ星の正体”。曲が始まってすぐに客席から合唱が起こり、みるみるうちにスタジオコースト内に充足感が満ちていった。
《ベイビーアイラブユーだぜ》という、メンバーや藤原の友人も特にビビッドに反応したというメッセージを擁する“新世界”では、メンバーが手拍子を促し、合いの手もばっちり決まった。《一番近くにいたいよ》で客席にマイクを向けたと思ったら、ステップを踏みながらステージの端から端まで動き、ハンドマイクで歌う藤原。ステージ上も客席も一緒くたになって《ベイビーアイラブユーだぜ》と歌う楽しさは、たまらない高揚感だった。
そして、「古から伝わる魔法の言葉」と言われるあのフレーズが響いた“天体観測”。たくさんの手が一斉に揺れ、演奏後、ステージ上も客席も互いに拍手を送り、今ここだけの空間に感謝をした“supernova”。長いアウトロで、藤原がジャンプしながら何回転も周り、その楽しそうな雰囲気につられて増川とチャマが笑顔で近づき、升がドラムを叩く前で3人で向かい合って飛んだり跳ねたりしながら音を鳴らし続けた“Butterfly”。
新たなる宝石『aurora arc』の楽曲も、長きにわたってたくさんの心に息づいている楽曲も、今ともにわかちあうことができているという紛れもない事実に対しての幸福感に溢れていた。藤原はライブ中、「君たちの命の残りの2時間3時間を分けてくれたおかげで僕たちの音楽は鳴ることができた」というようなことを言っていたが、時間にしてみたら人生の中でほんの少しかもしれない──でも間違いなく一度きりの濃くかけがえのない時間が今なんだ、そんなことを強く実感できた夜だった。(小松香里)