[Alexandros]/KT Zepp Yokohama

[Alexandros]/KT Zepp Yokohama - All photo by 河本悠貴All photo by 河本悠貴

「This is rock'n'roll!」

6月17日の仙台GIGSを皮切りにスタートした「ALEATORIC TOMATO Tour 2021」、10本目、7月16日、KT Zepp Yokohama。ライブの最後の最後、川上洋平(Vo・G)はフロアに向かってそう叫んだ。これがロックンロールだ。その「宣言」が、[Alexandros]がこのツアーに込めたもの、そして今の彼らがあらためて背負っているものを何よりも象徴していた。

[Alexandros]/KT Zepp Yokohama

2019年前半の「Sleepless in Japan Tour」以来、九州ツアーを除くと実に2年ぶり、そしてリアド偉武(Dr)が正式メンバーとなって初めての全国ツアー。久しぶりにライブハウスで観る[Alexandros]は凄まじかった。仙台、東京、名古屋、福岡と各地を回りながら、彼らはロックバンドとしてツアーができる喜びと興奮に身を委ねてきたのだろう。そしてその喜びと興奮は、ステージを踏むごとに確信へと姿を変えてきたに違いない。その確信が溢れ出たのが、川上の「This is rock'n'roll!」の言葉だったのだと思う。「演者のほうがこんなに楽しんじゃっていいのかな」とも彼は言っていたが、その実感がステージに溢れ返っていた。

[Alexandros]/KT Zepp Yokohama

川上はこの日のライブ中、何度もロック、バンド、ライブに対する思いを口にした。「こういう状況になった時に受け入れるしかないって言ってる人もいたけど、俺は無理だなと思った」、「ライブが好きだし、そのためにバンドやってんだ」と語っていた。こういう状況下でも(だからこそ?)ロックバンドはライブで爆音を鳴らし続けるんだという挑戦心と反骨精神。実際、この日のライブは、セットリストの構成にしても、曲間に挟まれる繋ぎのジャムセッションやMCパートにしても、次の瞬間どこに転がるかわからないようなロックバンドのライブの根源的なスリルに満ちていた。

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ツアーはただいま絶賛続行中のため、どんなタイミングでどんな曲をやったかとか、どんな演出がされていたかとかは書けないが、これだけは確実に言えるのは、今、[Alexandros]がロックバンドとしてきわめて脂ののった状態にあるということだ。そしてそのバンドの「脂」として輝いているのが、いうまでもなくパーマネントドラマーとしてあらためて[Alexandros]の重要なピースとなったリアドである。

[Alexandros]/KT Zepp Yokohama

彼が叩く[Alexandros]というのはもうかれこれ2年以上続いてきたわけだし、キーボードのROSE(THE LED SNAIL)を含めた5人のフォーメーションはとっくに鉄壁になっていると思っていたのだが、不思議なことに、正式メンバーとなるとこうも違うのかというくらい、アンサンブルが違って響くのである。演奏はもとより、彼が途中で着ていたシャツを脱いでノースリーブのTシャツ姿になった時の存在感とか、曲のあちこちで磯部寛之(B・Cho)や白井眞輝(G)と目を合わせたりとか、メンバーがドラムのライザーに立って至近距離で向き合いながら音を合わせたりしている時の表情とか、バンドのアイコンでもあるハイポジションのシンバルに向けて振り上げる腕とか、そういう瞬間瞬間に、リニューアルされたバンドのフレッシュな美しさを感じる。オープニングからほとんど切れ目なく曲を畳み掛けるような展開のなかで、ぎゅっと凝縮されたアンサンブルの凄みがこれでもかと見せつけられる。これが今の、そして新しい[Alexandros]だと。

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とりわけその新たなバンドの肉体をビシビシと感じたのが、4人だけで演奏された楽曲たちだった。“city”や“Cat 2”あたりの攻め攻めのサウンド感は語弊を恐れずにいえば新人バンドみたいな勢いだった。アンコール、川上はメンバー一人ひとりを英語で紹介していったのだが、リアドについては「世界でベストのドラムを見せてやるぜ!」とドヤ顔で叫んでいた。まさにそういう気分だったのだ。

リアドだけではない。たとえば『Bedroom Joule』バージョンで披露された“Thunder”での磯部と川上のコーラスワーク、序盤から「もっと拍手をよこせ」とばかりにフロアを煽ったり、ドラムの前に寝転がって歌ったり、やりたい放題の川上の仕草、あるいは白井が「持っていきます」とインスタでアップしていたグレッチのギターを楽しそうに弾き倒す姿。「いつも」とは違い、観客は大声で歓声を上げることもできない、モッシュをすることも、シンガロングすることもできない。だがその「空白」を、義務感や悲壮感ではなく、バンド自身が今感じている充実感が埋めている、そんな感じだった。

そんな、高エネルギーがバーストするハイライトだらけのようなライブのなかで、ひときわ輝きを放っていたのが、最新曲である“閃光”だった。3月の幕張メッセで披露されたのを観た時もそう感じたし、リリースされた音源を聴いた時も強く思ったが、この曲は[Alexandros]の新たな号砲である。「いつか必ず、みんなで歌おうな!」と川上が言った、その「いつか」に向けてのスタートの合図である。疾走するツインギターのリフと、それを支えるボトムの重厚さ。天を衝くようなサビの伸びやかなメロディと、それを歌う川上洋平の力強い声。《くだらない言葉をもう一度叫んで/誰にも染まらない心抱いたなら/新しい世界はもうそこにあって/開け放たれた 碧すぎる空 一粒の涙》という歌詞に込められたメッセージが、このライブのテーマのように響いてきた。

[Alexandros]/KT Zepp Yokohama

このツアーを終えた先には、10月の横浜アリーナと日本武道館、それぞれ2デイズのアリーナ公演が待っている。その頃に世の中がどうなっているかはまだ予断を許さないが、きっと今よりはよくなっているだろう。その時[Alexandros]はこのライブハウスツアーを超える熱さとスケール感で、その時にふさわしいロックをぶちかましてくれるはずだ。そう、まさに「これこそがロックンロール」であるというように。(小川智宏)

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