まふまふ/東京ドーム「表-OMOTE-」

まふまふ/東京ドーム「表-OMOTE-」 - Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]

●セットリスト
01. 神様の遺伝子
02. 輪廻転生
03. ブレス
04. エグゼキューション
05. 携帯恋話
06. ユウレイ
07. 林檎花火とソーダの海
08. 快晴のバスに乗る
09. ひともどき
10. 栞
11. 曼珠沙華
12. 動かざること山の如し
13. あさきゆめみし
14. 夢のまた夢
15. 1・2・3(After the Rain)
16. ラクガキサマ(After the Rain)
17. 桜花ニ月夜ト袖シグレ(After the Rain)
18. 水彩銀河のクロニクル
19. 君のくれたアステリズム
20. 夜空のクレヨン
(アンコール)
EN1. すーぱーぬこになれんかった
EN2. 女の子になりたい
EN3. 眠れる森のシンデレラ


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まふまふにとって2019年6月のメットライフドーム公演以来の、観客を迎えての単独公演。11年の音楽活動の中でも、この3年間は彼にとってかなり激動かつ濃厚な期間だったと推測する。追い風が吹く中で突如訪れたコロナ禍。2020年3月に開催予定だった東京ドーム公演の中止を余儀なくされた。だが2021年5月には東京ドーム史上初となる全世界無料配信ライブを行い、同時視聴者は40万人を超えるという快挙を達成。同年12月にはNHK『紅白歌合戦』へ初出場を果たした。そして2022年の東京ドーム公演「ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2022@東京ドーム~『表/裏』supported by povo」2DAYS以降、ソロ活動を無期限休止することを発表。SNSを含めたインターネット上での発信を停止したうえで、ユニットやコラボなどの参加はしつつも作曲家としての活動に専念するという。

この東京ドーム公演が発表された段階では、2年前に果たせなかった挑戦への再チャレンジ、2年前の無念を晴らす公演になるのかと想像していた。だがこの2年で、彼はもっと前へ進んでいた。今の彼にとって東京ドームは、挑む場所ではない。自分の音楽を愛している人たちと思いを交わすことができる、喜びに満ちた、かけがえのない空間なのだ。

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2DAYSの初日である「表-OMOTE-」公演は、まふまふの言葉を借りると「明るく楽しいハッピーな曲」でセットリストが構成された。オープニング映像の後、彼のイメージカラーである白い光でステージが包まれると、“神様の遺伝子”でライブがスタート。純白のオーバーサイズの衣装に身を包んだまふまふは、自在に歌声を操りドラマチックに楽曲をドライブさせていく。花火が爆発すると“輪廻転生”になだれ込み、“ブレス”では左右に長く伸びたステージに火柱が上がるなど、冒頭から華やかなパフォーマンスと演出でたちまち観客の心を突き動かしてみせた。

観客が入った東京ドームの景色を初めて観た彼は、「圧巻」と少年のように目を輝かせる。「このライブのために新曲を持ってきました」と言い披露された“エグゼキューション”は、気迫あふれるクラシックピアノ、ラップ、讃美歌のエッセンスなどをブレンドさせた激しい展開の楽曲。詞世界も含めて、彼がどんな思いで音楽活動をしてきたのかが、楽曲を通じてダイレクトに届いてくる。
コンセプチュアルなセットリストを体感していく中で、彼の描く「明るい世界」には、幼い頃の思い出、恋のときめきといった「青春」や、ノスタルジーとファンタジーが共存するものが多いことを痛感する。まふまふの歌唱も高音から低音までおしなべてのびやかで、MCの空気感も含めてとてもナチュラルだ。「表-OMOTE-」で披露された楽曲たちは、彼にとって居心地のいい空間、傷を癒やす楽園のようなものなのかもしれない。“ひともどき”と“栞”ではギターボーカルスタイルで歌唱し、楽曲に綴られた切実で素直な心象風景を繊細かつ丁寧に描き出していった。

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バンドメンバーによるインストセクションを挟み、白と黒にセパレートした衣装に着替えた彼は“曼珠沙華”など4曲を披露し、東京ドームをドリーミーなムードで包み込む。すると続いて場内に鳴り響いたのはAfter the Rainの“1・2・3”のイントロ。盟友そらるとのユニット曲をソロで歌唱するのかと思いきや、まふまふはステージにそらるを招き入れた。予期せぬシークレットゲストに、観客も驚きを隠せないといった様子である。

観客たちの嬉しい混乱をよそに会場を盛り上げていくそらると、そんなそらるの姿を見て笑顔を浮かべるまふまふ。ふたりの生き生きとした佇まいからも、お互いがお互いの存在に安心感を抱いていることが伝わってきた。歌い終わるや否や「はい出てきました、シークレットゲストです! (※まふまふに向かって)僕を紹介してください」と進行したり、客席を見渡して「素敵な景色だね」、「俺の地元の街より人がいるよ」と自由に振る舞うそらるのお茶目さも小気味よい。

まふまふは、そらるに出演をオファーした経緯を「『表-OMOTE-』では楽しくて明るい世界を作れたらいいなと思って。僕の楽しかった時のことを思い出していったら、必ずそこにはそらるさんがいたから出てほしいと思った」と語る。そらるも「楽しいことばかりでもなかったけど。それこそ『病める時も健やかなる時も』だよ」と重ね、11年の歳月で様々な苦楽を共にしてきたことをふたりで噛み締めていた。

“ラクガキサマ”と“桜花ニ月夜ト袖シグレ”を揃って披露すると、そらるは「こうやってふたりでステージに立つのはこれが最後なわけではないと思うから。今日は最後まで楽しんでいって」と観客にメッセージを投げかけステージをあとにする。まふまふも「今日そらるさんが会場入りした時にすごく安心して。いつかまたふたりでライブができる日が来たらいいな。僕も少しずつ進めるよう頑張るので、今後ともふたりをよろしくお願いします」と頭を下げた。

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そらるとのステージがまふまふのリミッターを外したのか、それ以降さらにスケールの大きい歌唱を響かせる。本編ラスト“夜空のクレヨン”の爽快感は、彼の紡ぐ夢の世界がこれからもずっと続いていくことを伝えるような、ポジティブなサウンドスケープだった。
アンコールでは、メットライフドームのアンコールでも使用された「まふてる気球」に乗って登場。ドームを端から端までまわりながら、“すーぱーぬこになれんかった”と“女の子になりたい”を歌唱する。「前乗った時よりも高い気がする!」、「足がすくむ!!」など高揚と恐怖を露わにしながら、観客とコミュニケーションを取っていった。

再びステージに戻ってきた彼は、活動休止を発表して高校と大学の同級生から連絡が来たことに触れると、「『まふまふ』になってからの11年が僕のすべてだとずっと思っていたけど、僕が生まれてからの30年間がちゃんと今につながってるんだなと思った」とあらためて観客に心中を明かす。さらに「僕がお休みするのは、またみんなと大きな一歩を踏み出すため。ちょっとゆっくりしてくるけど、戻ってきた時には最強になってるから、よろしくな!」と続けた。

「最後くらいペンライト高く上げて、思いっきり振ってよ! お願いね!」と呼びかけ、この日の締めくくりに彼が選んだのは“眠れる森のシンデレラ”。シンデレラの魔法は0時で解けてしまうけれど、この日まふまふがかけた魔法は未来に続いていくような気がするほど、とても晴れやかで屈託のない歌声だった。ひとつのテーマを軸にしつつも、バリエーション豊かに彩った東京ドーム初日。彼が観客と作りたかった理想の世界が、そこには存在していた。(沖さやこ)
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