●セットリスト
01. Under The Bridge
02. アイスグリーン
03. I Can’t Quit You Baby
04. Boom Boom
05. Tema d’Amore
06. Blue Velvet
07. 瓶とスコール
08. 都会の漂流者
09. Because the Night
10. 朝日のあたる家
(アンコール)
11. Paint It Black
12. ハイエナ
『CUT』主催によるトーク&ライブ複合イベント「CUT NIGHT」vol.16 が「ロックの日」であり、渋谷陽一の誕生日である6月9日にライブスペース・池袋harevutaiにて開催を迎えた。「ヤングジョッキーがサウンドストリートを駆け抜ける」と銘打たれた渋谷陽一によるトークライブは、50年のDJヒストリーを貴重な音源と共に振り返るスペシャルな内容で、時に感嘆、時に爆笑しながら満員の客席は深く聞き入っていた。そして、4月15日に行われたワンマンライブ「新古今洋歌集」も大盛況だったlukiのライブがスタートした。
幻想的な青い照明の中、円山天使(G)、山本哲也(Key)、張替智広(Dr)と共にステージに登場したluki。ワンマンは洋楽の名曲を新たな独自の視点の日本語詞で解釈したカバー曲群を、一つのショーとして構成した素晴らしい内容だったが、この日の1曲目もレッド・ホット・チリ・ペッパーズの“Under The Bridge”。男臭く切ないメロディをウェットにならずカラッと歌い上げたところから、美しい羽根を広げていくようなオリジナル曲“アイスグリーン”への流れが見事。
そこからレッド・ツェッペリンからブルース、映画音楽の名曲まで立て続けにカヴァーを披露していくのだが、ワンマンライブを経て、日本語詞の表現以外にも、大きな武器を彼女は持ち始めていた。それは洋楽の強いメッセージとメロディとサウンドとグルーヴの一体感を体現するフィジカルのタフさだった。歌もハープも身のこなしも、常に音楽と一心同体であれる太い芯が今のlukiのパフォーマンスにはある。この日の彼女は引き締まった体躯にフィットしたセパレートの衣装に身を包んでいたが、走ることからポールダンスの方に趣向が移ったことも、シンガーとしてのlukiにしなやかさと獰猛さを同時にもたらしていた。
その新たな肉体性によってさらに磨きがかかった人気オリジナル曲“瓶とスコール”“都会の漂流者”で会場を染めた後は、なんと本番2日前のリハで渋谷陽一から無茶ぶり提案があったという新カヴァー。ブルース・スプリングスティーンとの共作としても知られるパティ・スミス・グループの名曲“Because the Night”だ。レッチリのカヴァーとは好対照にオリジナルのメロディに日本語の歌として湿度とストレートな熱さも絶妙に加えて再解釈。2日前のリハからのセッションとは思えないくらいlukiもバンドもこの曲を自分たちのものにしていた。
本編ラストの”朝日のあたる家“もアンコール2曲もたっぷり盛り上げて去っていった後、渋谷陽一のアフタートーク後にはサプライズのバースデーケーキを運びながらlukiとバンドが再登場という場面も。極めて熱く、そして極めてレアな一夜が幕を下ろした。(古河晋)