フジファブリック@新宿厚生年金会館

フジファブリック@新宿厚生年金会館
フジファブリック@新宿厚生年金会館
フジファブリックがメジャーデビューをしたのは、04年2月の『アラモルト』だから今年で5年目を迎える。5周年記念として9月よりスタートした今回の『フジファブリックデビュー5周年ツアーGoGoGoGoGoooood!!!!!』。本日はそのファイナルで、会場は新宿厚生年金会館。チケットはもちろんソールドアウト。今後も学園祭などに出演予定はあるが、この時期になるとワンマンとしては今年ラストとなるバンドが多くなってくる。ともあれ、フジファブリックメジャーデビュー5周年である。

今日の志村は、『CHRONICLE』のCDジャケットに似たモコモコ帽に、股下たっぷり黒のサルエルパンツ、ゆるいカットソーといういでたちで登場。そのユルい服装も相俟って各メンバーもいい意味でリラックスした佇まいに見えたが、大抵、こういう手前勝手な印象はライブが始まると脆くも崩れさるものである。今日も例に漏れず、そんな驚きからライブは幕を開けた。

一瞬、ここ、横浜アリーナのWIREじゃないよね!? と錯覚しそうなほど、眩い虹色のレーザー光線が乱反射し、カラフルに会場が彩られる。ファンタスティックな今宵のオープニングは“Sugar!!”だ。金澤の煌びやかなシンセの音色、切り裂くような山内の鋭利なグランジ・ギター、そして左右から流れる逆説的な音の真ん中に立って「全力で走れ!」と叫ぶ志村。こんなにも、各立ち位置はバラバラなのに、それらが絶妙な配合でシンクロする圧倒的なフジファブリックのポップ・マジックに、ユルいどころかあっけなく虜にされてしまう。

その後、“NAGISAにて”、“Sunny Morning”、“TEENAGER”、“バウムクーヘン”とデビューから現在までの歴史を順に描き出して見せると、志村が「ここからは5年分の濃度を凝縮したコーナーをやります!」と一言。甘美なオルガン音と妖しくも懐かしいレトロ・ギターで「昭和」、「雨」といったキーワードが交互に浮かび上がってくる“雨のマーチ”やプログレっぽい“打ち上げ花火”もそうなのだけど、そういった情景のシルエットを叙情型ロックとも言うべき手法で描き出すのが彼らは本当にうまい。そして、そこには「和」を感じさせる単語が確かに多かった。最新作『CHRONICLE』ではそれらが若干薄まったと感じていたが、それは描き出す対照物が遠い異国の地――例えばレコーディングを行ったストックホルムのような土地へ移っただけなのだ。志村はインタビューで自己の内面の変化と過酷な状況を赤裸々に語ってはいたが、こうして過去と現在を照らし合わせてみると、フジファブリックが血肉化している音楽の原点みたいなものは脈々と今の今まで継承されて続けているんだ、僕はそう思った。

もちろん中盤には、もはや恒例となった脱線MCも5周年関係なくしっかりと脱線。志村が「僕らと言えばファミコン世代。スーパーマリオブラザーズ世代ですが」と言えば、山内はギターでおもむろに地下ステージのイントロを掻き鳴らし、「ドラゴンボール世代ですが」と言えば、今度はドラゴンボールZの“CHA-LA HEAD-CHA-LA”で応える始末。イントロだけかと思いきや、山内はギターだけで1コーラスを歌い切り、ラストのSparking!もしっかりキメる完璧っぷりで、個人的にはセットリストにも加えてもいい程の出来栄えでした。(今回のツアーで山内は、このドラゴンボールZを3回無茶ぶりされたらしい)

そんなおちゃらけから一転、メンバー5人の表情が半端なくマジになったのが“ロマネ”、“若者のすべて”、今回のツアーから披露している新曲という3つのミディアム・バラードの流れだ。新曲は、物悲しいピアノのリフレインと「寂しがり」という志村の声のみの構成で始まる。5つの楽器のアンサンブルを真っ直ぐ志村の歌へ集約させるという、アルバム『CHRONICLE』で見い出した方法論をぐっと推し進めたような楽曲だが、個々の楽器が志村の声によりいっそう引っ張られている印象。サウンドも音のギミックというよりは、各出音が力強く響き奥行きがあって、全然別物なのに「音」と「歌」の相関関係で言えば、なんとなくくるりの『魂のゆくえ』に漂っていたような存在感がある。おそらく次回作へのヒントはもうつかんでいるのだろうな、そう思える楽曲だった。

志村がPUFFYに提供した“DOKI DOKI”、ギターのカッティングにダブっぽいアレンジが加えられた“I want you”(EMI公式のビートルズカバーアルバム『LOVE LOVE LOVE』に収録)と2曲のカバーを披露した後に、「非常に照れくさいんですけど、今日、こういう場所でフジファブリックができたことが非常にうれ○△□※」とやっぱり噛んでしまった志村。でも、そこからの終盤戦は5年分の喜びと感謝の気持ちの全て解放していくように、エモ―ショナルな空間が会場いっぱいに広がっていく。本編は“陽炎”、奥田民生がひとり股旅でもカバーした“桜の季節”という涙腺がゆるむ瞬間が幾度も訪れた2曲でひとまず幕を閉じる。

アンコールで“Surfer King”と“銀河”、客電がついても鳴り止まない拍手の中、「予定になかった」と志村が語ったダブル・アンコール“虹”の3曲は、やはりこの日最高の盛り上がりを見せた。その中で最もクライマックスだったのは、“Surfer King”でシンガロングが巻き起こったことだ。志村がMCで「今回のツアーは楽しかったです。お客さんが歌ってくれることがあって…ほら、僕らはいつもステージで“追ってけ追ってけ”ってやってるバンドだから…」と言ったことが無関係ではないと思うけど、それにしたってあれは正真正銘、嘘偽りのないシンガロングだった。(だってよくある練習も強要もなかったのです)決してそういうタイプのバンドではないフジファブリックが、何がきっかけで起こったのかわからないほど自然な形で、しかも100%に近い形で、壮観なシンガロングを巻き起こしたことは今宵、最も驚いたことだった。

終わってみれば、いつもどおりのMCもあったしフジファブリック5周年! なんていう祝祭的なムードは無かったのに、ステージ上の5人からは5年の間に培ってきたものとこれからを示唆するフジファブリックの音楽、いやそれ以上のものが確かに鳴っていた。そして、アンコールのMCでは、2010年に富士急ハイランドでライブを行うことを発表。当時高校生だった志村が、富士急ハイランドで行われた奥田民生のライブを観て音楽を始めたというエピソードはあまりにも有名だが、ともかく、彼を音楽に駆り立てた奥田民生が立ったステージにフジファブリックが立つのである。そのストーリーよりも僕が最も願ってやまないことは、志村にとっての奥田民生がそうだったように、志村がまた別の誰かを音楽に駆り立てることができるだろうかということだ。今の志村なら、今のフジファブリックなら、きっとできるはず。そう確信させられる5周年のファイナルだった。(古川純基)
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