APOGEE@赤坂BLITZ

APOGEE@赤坂BLITZ
APOGEE@赤坂BLITZ
APOGEE@赤坂BLITZ
今年6月にリリースした3rdアルバム『夢幻タワー』では、計6曲のPVを次々と発表。
海外でも反響を呼び、ロンドンで開催されたデジタル映像フェスティバル『onedotzero_Adventures in Motion 2009』に、“アヒル”のPVが招待出品されるなど(現在YouTubeでは、“1,2,3”のPV数が20万に迫る勢い)、映像方面でも大きな評価を得ているAPOGEE。

今宵は、アルバムのリリースツアー第2弾『APOGEE LIVE TOUR 2009 “夢幻タワー” 第2棟』のファイナル、会場はバンド初の赤坂BLITZである。それもあったのか、開演前のフロアは期待と緊張が入り混じり、一種異様な高揚感に充ち満ちていた。しかし、結論から先に言ってしまうと、初のBLITZとは微塵も感じさせない——というよりは、聴覚的にも、視覚的にも会場全体をフル活用した、バイタリティ溢れるライブであった。

ステージ上には、低めのお立ち台のような4つのミニ・ステージがあり、その上に、左からベースの内垣、ボーカル&ギターの永野、一列奥にドラムの間野、シンセ&ギターの大城がそれぞれ陣取るという布陣。バンドの視覚的なバランスが保たれていて、ステージにとてもよく映える。オープニングは“Grayman”、そして“ブレインストーム”と続き、3曲目は“夜間飛行”。美しいピアノのリフレインと天高く噴き上げるシンセ・ストリングスが絡み合い、一瞬にして会場はドリーミーな空間に。早くもライブのクライマックスが訪れる。

ライブ中盤では、ステージ奥に現れたスクリーンで“エクスプレス”の流麗な世界感を描いて見せる。永野がアコギに持ち替えて穏やかなアルペジオを鳴らすと、弦のような6本の線がスクリーンに。それがだんだんと車窓から風景を眺めているような映像へ変移し、“エクスプレス”の詩世界とリンクする。点、線、色といった素体で構成される映像に明確な具体性はない。それは、彼らの描きたいものというより、聴き手の僕らが描ききれなかったものを、そっと差し出してくれるような温かみがあった。「夢見がちなメンバー、そんなライブに来た皆さんも夢見がち」永野の数少ないMCで発せられたこのフレーズを最もよく現していた一幕だった。

そこからの本編は、“Tell Me Why”、“アヒル”、“Rain Rain Rain”といった2ndアルバム『Touch in Light』を中心としたセット。どの楽曲もガリっとしたカッティング・ギター、80‘sチックなディスコ・ビート、いつ何時もうねり続けるベースがあり、LCDやラプチャーにも通じるファンクネスを体得している。体得しているのだけど、彼らの場合、ビートが粘っこくフィジカルになりすぎず、エモーショナルなシンセに比重を置いているから、質感はもっとポップでナチュラルなものだ。会場いっぱいに響き渡るシンセと永野の艶めいた歌声には、アプローチはまた別物なのにダンスミュージック似た多幸感があって、壮大なサウンドスケープを描いていた。

アンコール2曲目には、永野が「天国で彼も歌っていると思います」と言って、マイケル・ジャクソンの“スリラー”を披露。エレクトリカルなサウンドが得意な彼らだから、原曲のラインをしっかり踏襲しつつも、永野がザクザクとアコギをかき鳴らし、ラテンフレーバーな風合い。「彼に近づくために書いた曲だと、ディス・イズ・イットを見て気がついた」と語った次曲は“GIRAFFE”。ラストは、このツアー各地で演奏されていた新曲で2時間弱のライブは終了。

少々風変わりなステージセット、メドレー形式でのつなぎ、映像表現、マイケル・ジャクソンのカバーなど多面的なステージを展開した今宵のAPOGEE。ライブ中でも大城はギターとシンセを何度も入れ替え、永野も内垣もシンセをいじるし、馬鹿でかいコントラバスを持ち出すこともある。こう書くと飛び道具的な要素の強いライブに思えるけど、そうじゃなくて、これまでにライブでやりたくても物理的にやれなかったことがようやく表現できた、というような印象が強い。ライブ、音源、映像、それぞれが多面的な広がりを見せているが、そのバラエティさそのものがAPOGEEなのである。実は、彼らのトライバルな魅力、表現というのは、大きいハコであればあるほど発揮できるものかもしれない。(古川純基)
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