school food punishment @ 渋谷クラブクアトロ

school food punishment @ 渋谷クラブクアトロ
school food punishment @ 渋谷クラブクアトロ
クアトロのフロアに入るとまず聞こえてきたのは「右の方が空いておりますのでそちらにお詰めください!」と、何度も何度も呼びかけるスタッフの声。開演時間を過ぎてもまだまだ入ってくる人、人、人。明らかに超満員な今宵のクアトロは、school food punishmentの東名阪ツアー『Quattro oneman tour “NEXT vol.2”』のファイナルである。タイトルの“NEXT“は、07年に行われた初ワンマンのライブ名で、今回はそのvol.2。内村友美(Vo/G)のMCでもあったように、バンド初のクアトロワンマン、しかもワンマンツアー自体もバンド史上初だという。それにしても、ほんとにすごい人。僕自身そんなに背が低いわけじゃないけれど、背伸びをしないとステージが見えないほどだ。

場内がすうっと暗転して、ステージに登場したのは全部で6人。内村、蓮尾理之(key)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)のバンドメンバー4人に加え、サポートメンバーに椎名洋輔(G)、活動休止中のトルネード竜巻の名嘉真祈子をコーラスに迎えた今宵のsfp。3つのミラーボールと鮮やかなグリーンのライトアップが会場全体を彩る中、“Butterfly Swimmer”のみずみずしい鍵盤が鳴らされる。が、内村が「君と混ざりたい…」と囁いて訪れたのは、すさまじい音の洪水だった。以前の内省的なsfpしか知らない人がいたとすれば、おそらく腰を抜かしたに違いない。エレクトロニックな質感を生音で表現するという生易しいものではなく、そこには輝度と熱量を内包したまぎれもないロックのダイナミズムが確かに宿っている。

内村の散文詩のような歌詞が心地良い4つ打ちにのった“art line”、アンサンブルによって浮遊と疾走が交錯する“pool”といった人気曲が序盤から披露され、満場のオーディエンスは、飛び上がりながらも拳を突き上げ、急激な上昇線を描くバンド・アンサンブルに必死に喰らいついていく。エモーショナルな鍵盤リフと相反するエレクトロニックなノイズ、地を引きずるようなベースライン(時折ピーター・フックばりの高音域も)、空間を浮遊する甘美なディストーションギターと、確かにsfpの音の情報量と密度は相当なものだが、その中を気持ちよく泳ぐように響いてくる内村の声がやはり印象的だった。しかも、ナイーブさを前面に出したような以前とは、もうほとんど別人と言ってもいいほどの隔たりがあり、リズムに併せて弾み、自由を求めるような彼女のボーカルは、どことなく小谷美紗子を感じさせるほど伸びやかだった。

「切ないバレンタインを過ごす人のためにぴったりの新曲を持ってきました。きっと今日来てくれた人の6割はそんな人だと思うけど」と内村が笑いを誘って披露された新曲“パーセンテージ”は、最近のsfpでは珍しく音数が省かれ、ギターとベースに頼ったシンプルなスローバラッド。インディーズに立ち返るようでありながらも、バンドのまた別の側面を照らし出すような新機軸の楽曲だった。そしてジャジーなピアノリフが鳴った瞬間に大きな歓声が上がった“flow”、“浮かび上がる”と続きライブはラストへ雪崩れ込んでいく。個人的には、石野卓球がリミックスを手がけ、見事なハウスに仕上がっていた“you may crawi”が、今宵のライブでも同じように4つ打ちのアレンジになっていたことが驚いた。それに中盤で流れるリズム抜きされたシンセの部分は808ステイトの“パシフィック・ステイト”のイントロにすごく似ていると思う。

本編ラストは、スペイシーなサウンドが終末観そのもののような“light prayer”、鮮やかなストリングスがドラマティックに駆け抜けた“futuristic onfiction”で終了。アンコールで“feedback”、“sea-through communication”、ダブル・アンコールにも応えたsfpは最後にも再び“future nova”をプレイし、約2時間、全18曲の今宵のステージは幕となった。そして、アンコール中のMCで内村から発表があったように、4月14日には待望の1stアルバム『amp-reflection』がついにリリースされる。そのアルバムに大きな期待を抱かせるには充分すぎるライブだった。(古川純基)
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