開演予定時間をやや過ぎた19:13。ステージ前面には、海辺の夕空が染め抜かれた半透明のスクリーン。そこに次々に浮かび上がる文字。「深く長い夜を越えて 僕らはここまでやって来た ブーツの踵はすり減って ギターケースはキズだらけ それでも道は遠く果てしない 誰かの優しい笑顔や 暖かい涙に出会うたび こんな瞬間が また訪れますようにと呟いた」……「世界は常に移ろいゆく」「僕らは誰もが終着駅なき孤独な旅人である」「だから自分は歌という足跡を残して進む」というCaravanの世界観を凝縮したようなメッセージ。そして、1曲目“Morning Song”のイントロとともにCaravanのシルエットが浮かび上がった途端、大きな拍手喝采が沸き上がり、それはそのままでっかい手拍子へと形を変えていく。
昨年の『Caravan LIVE EXTRA 2009 with Hirohisa Horie The folky smoky revue』は、自宅でほぼ1人で作り上げたという昨年9月の最新アルバム『Luck and Pluck』をサポート=堀江博久と2人で再現する、というステージングだったが、今回は堀江博久(Key・G・Cho)、高桑圭(B・Cho)、白根賢一(Dr・Cho)という最高のバンド・メンバーを擁してのツアー。“Luck and Pluck”“Music”“Live Your Life”と『Luck and Pluck』収録曲の豊潤なアンサンブルを次々に響かせながら、「ようこそファイナルへ! (ツアーが)終わってしまうよ! せつないね!」と軽やかにフロアに呼びかけたり、「ごぶさただね! アルバム制作から数えると1年近い旅になるんだけど。一緒に旅してくれた仲間です!」と言ってメンバー紹介したり……と、基本的にスロウ~ミドル・テンポなCaravanワールドの中でも、序盤はエンターテインメント・モードでZeppを高らかな手拍子へと導いていく。
Caravanの音楽の風通しのよさは、その「フォークとブルースとサーフ・ロックをアコースティック基調のバンド・サウンドの中に配置した音楽世界」だけによるものではない。1曲1曲懇切丁寧に曲を紹介し、エピソードを語り、思いをストレートに伝える彼のアティテュードは、いわゆる「自分の曲を知ってて当然の熱心なファン」に対するスターやカリスマのそれではない。音楽が好きで、だから「たまたま」自分の音楽を知ってくれて、「たまたま」自分のライブを観に来てくれてありがとう、といった真正直な喜びと感謝が、彼の発言や一挙手一投足に滲んでいる。彼の視点は常に「人間」と「音楽」の関わりに向いている(そこにしか向いていないと言ってもいい)し、だからこそ彼の音楽は普遍的な訴求力と、誰1人排除しないポップ感をも兼ね備えている。
中盤、“ハミングバード”“Seed”、そして弾き語りの“re-birthday”で聴かせた静謐な響きの美しさ。そして、Caravan「次は“message”って曲なんですけど」 堀江「おお、知ってる知ってる。たまに知らない曲を振られるからね(笑)」とか「“message”、伝わったよね。緊張っていうメッセージが(笑)」(堀江)とかいう絶妙の掛け合いMCなどからも伝わる、「バンドとしてのCaravan」のコミュニケーションと肉体性。一見オーガニックだったりレイドバックしていたり、といった風のサウンドだが、堀江/高桑/白根といった名手を迎えて鳴らす4人の音のタペストリーに、もつれやほころびは皆無だ。というか、若さや衝動や勢いからくる荒削りな音のタッチでは、この雄大でクリアなサウンドは描けない。そして何より、他ならぬCaravan本人の表現のキャパシティの広さ。2月に旅行に行ったネパールで「ネパール人は輪廻転生を信じているのでお墓を作らない」という現地の逸話に感銘を受けた話と、《ほんのすこし ほんのすこしの光 それだけで僕らは歩いて行けるのさ》という“ほんのすこしだけ”のにこやかで真摯な歌と、「ぶっちゃけ僕なんか、音楽やってなかったら、ただのオタクですよ!」という軽やかな笑いと、“Music Save My Life”のホットな躍動感……といった要素を1つのパースに収めてみせる人はそういない。
アンコールの“Free Bird”では会場一丸のコール&レスポンスと大合唱を生み出し、すっかり感極まった様子のCaravan。夏にはセルフ・カバーによるベスト・アルバムのリリースが予定されていることもあり、「またすぐ会えるように、動き続けるんで。いい顔見せに来てください!」というメッセージにもひときわ大きな拍手が湧き上がる。本編15曲+アンコール4曲で約2時間半。灰色の都市に生きる僕ら1人1人の日常を、スケールの大きな大航海へと塗り替えるような、最高の音楽体験だった。(高橋智樹)
セットリスト
SE Fairway
1. Morning Song
2. Luck and Pluck
3. Music
4. Live Your Life
5. ハミングバード
6. Seed
7. re-birthday
8. message
9. No reason blues
10. Simple
11. TRIPPIN`LIFE
12. Freedom Kingdom
13. ほんのすこしだけ
14. Music Save My Life
15. Beautiful Losers
アンコール
16. Strange Garden
17. FREE BIRD
18. Soul Music
19. Melody