Caravan@Zepp Tokyo

Caravan@Zepp Tokyo - pic by SUSIEpic by SUSIE
Caravan@Zepp Tokyo - pic by SUSIEpic by SUSIE
Caravan@Zepp Tokyo - pic by SUSIEpic by SUSIE
「みんな、温かいよ! 温泉でも入ってるみたい。エネルギーの温泉に!」と、アンコールのラスト“Melody”の前に、日本が誇るアコースティック吟遊シンガーソングライター=Caravanが感慨深げにフロアを見渡して発した言葉通り、彼の全国ツアー『Luck and Pluck TOUR 2010』計10本のファイナル公演会場=Zepp Tokyoには満場のオーディエンスの熱気と歓喜が満ちあふれていた。

開演予定時間をやや過ぎた19:13。ステージ前面には、海辺の夕空が染め抜かれた半透明のスクリーン。そこに次々に浮かび上がる文字。「深く長い夜を越えて 僕らはここまでやって来た ブーツの踵はすり減って ギターケースはキズだらけ それでも道は遠く果てしない 誰かの優しい笑顔や 暖かい涙に出会うたび こんな瞬間が また訪れますようにと呟いた」……「世界は常に移ろいゆく」「僕らは誰もが終着駅なき孤独な旅人である」「だから自分は歌という足跡を残して進む」というCaravanの世界観を凝縮したようなメッセージ。そして、1曲目“Morning Song”のイントロとともにCaravanのシルエットが浮かび上がった途端、大きな拍手喝采が沸き上がり、それはそのままでっかい手拍子へと形を変えていく。

昨年の『Caravan LIVE EXTRA 2009 with Hirohisa Horie The folky smoky revue』は、自宅でほぼ1人で作り上げたという昨年9月の最新アルバム『Luck and Pluck』をサポート=堀江博久と2人で再現する、というステージングだったが、今回は堀江博久(Key・G・Cho)、高桑圭(B・Cho)、白根賢一(Dr・Cho)という最高のバンド・メンバーを擁してのツアー。“Luck and Pluck”“Music”“Live Your Life”と『Luck and Pluck』収録曲の豊潤なアンサンブルを次々に響かせながら、「ようこそファイナルへ! (ツアーが)終わってしまうよ! せつないね!」と軽やかにフロアに呼びかけたり、「ごぶさただね! アルバム制作から数えると1年近い旅になるんだけど。一緒に旅してくれた仲間です!」と言ってメンバー紹介したり……と、基本的にスロウ~ミドル・テンポなCaravanワールドの中でも、序盤はエンターテインメント・モードでZeppを高らかな手拍子へと導いていく。

Caravanの音楽の風通しのよさは、その「フォークとブルースとサーフ・ロックをアコースティック基調のバンド・サウンドの中に配置した音楽世界」だけによるものではない。1曲1曲懇切丁寧に曲を紹介し、エピソードを語り、思いをストレートに伝える彼のアティテュードは、いわゆる「自分の曲を知ってて当然の熱心なファン」に対するスターやカリスマのそれではない。音楽が好きで、だから「たまたま」自分の音楽を知ってくれて、「たまたま」自分のライブを観に来てくれてありがとう、といった真正直な喜びと感謝が、彼の発言や一挙手一投足に滲んでいる。彼の視点は常に「人間」と「音楽」の関わりに向いている(そこにしか向いていないと言ってもいい)し、だからこそ彼の音楽は普遍的な訴求力と、誰1人排除しないポップ感をも兼ね備えている。

中盤、“ハミングバード”“Seed”、そして弾き語りの“re-birthday”で聴かせた静謐な響きの美しさ。そして、Caravan「次は“message”って曲なんですけど」 堀江「おお、知ってる知ってる。たまに知らない曲を振られるからね(笑)」とか「“message”、伝わったよね。緊張っていうメッセージが(笑)」(堀江)とかいう絶妙の掛け合いMCなどからも伝わる、「バンドとしてのCaravan」のコミュニケーションと肉体性。一見オーガニックだったりレイドバックしていたり、といった風のサウンドだが、堀江/高桑/白根といった名手を迎えて鳴らす4人の音のタペストリーに、もつれやほころびは皆無だ。というか、若さや衝動や勢いからくる荒削りな音のタッチでは、この雄大でクリアなサウンドは描けない。そして何より、他ならぬCaravan本人の表現のキャパシティの広さ。2月に旅行に行ったネパールで「ネパール人は輪廻転生を信じているのでお墓を作らない」という現地の逸話に感銘を受けた話と、《ほんのすこし ほんのすこしの光 それだけで僕らは歩いて行けるのさ》という“ほんのすこしだけ”のにこやかで真摯な歌と、「ぶっちゃけ僕なんか、音楽やってなかったら、ただのオタクですよ!」という軽やかな笑いと、“Music Save My Life”のホットな躍動感……といった要素を1つのパースに収めてみせる人はそういない。

アンコールの“Free Bird”では会場一丸のコール&レスポンスと大合唱を生み出し、すっかり感極まった様子のCaravan。夏にはセルフ・カバーによるベスト・アルバムのリリースが予定されていることもあり、「またすぐ会えるように、動き続けるんで。いい顔見せに来てください!」というメッセージにもひときわ大きな拍手が湧き上がる。本編15曲+アンコール4曲で約2時間半。灰色の都市に生きる僕ら1人1人の日常を、スケールの大きな大航海へと塗り替えるような、最高の音楽体験だった。(高橋智樹)


セットリスト

SE Fairway
1. Morning Song
2. Luck and Pluck
3. Music
4. Live Your Life
5. ハミングバード
6. Seed
7. re-birthday
8. message
9. No reason blues
10. Simple
11. TRIPPIN`LIFE
12. Freedom Kingdom
13. ほんのすこしだけ
14. Music Save My Life
15. Beautiful Losers

アンコール
16. Strange Garden
17. FREE BIRD
18. Soul Music
19. Melody
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on