サンボマスター×クーラ・シェイカー@ソニーミュージック乃木坂ビル

サンボマスター×クーラ・シェイカー@ソニーミュージック乃木坂ビル
サンボマスター×クーラ・シェイカー@ソニーミュージック乃木坂ビル - pics by Hajime Kamiiisakapics by Hajime Kamiiisaka
4月にドロップされた新作『きみのためにつよくなりたい』をひっさげての全国ツアーを終えたばかりのサンボマスターと、6月に新作『PILGRIMS PROGRESS』をドロップし、なんと翌日にFUJI ROCK FESTIVALのGREEN STAGEでのアクトを控えたクーラ・シェイカーによるコラボレーション・シークレットイベント。両バンドの楽曲を聴いたことがある人にとっては「なんじゃこりゃー!」な、かなり異色のコラボレーションだ。なぜ今回のようなイベントが開催されることになったかというと、所属が同じソニーミュージックだからということもあるだろうが、実はそれだけではない。3年ほど前に偶然にもソニーミュージックのビルの隣同士の部屋で取材を受けていて、その後廊下ですれ違ったときにいきなり意気投合したというエピソードを、トーク・セッションの際にクリスピアンが語っていた。「廊下ですれ違った瞬間に電流が走った気がした」そうだ。告知の時に「都内某所」とアナウンスされていた今日の会場は、ソニーミュージック乃木坂ビル内のイベントスペース「スクエア」。フロアマットが敷き詰められた比較的狭い会場に、抽選で選ばれた幸福なオーディエンスの熱気がたちこめていて、開演前の雰囲気はこれ以上ないくらい良かった。

開演時間を10分ほど過ぎ、司会の紹介を受けてまず登場したのはサンボマスター。一応、このイベントには「ひたすらまっすぐでひたむきで無垢なるROCK魂 日VS英対決! 反逆とは愛だ!! 〜REBEL is LOVE」という長ーいタイトルが付けられているのだが、今日の彼らからはまさに反逆児そのものの、鬼気迫るようなタイトなグルーヴが迸っていた。一曲目の“美しき人間の日々”から山口のソウルフルなボーカルが大爆発。続いて“アイ ウォン チュー”、“ラブソング”と、『きみのためにつよくなりたい』からの楽曲をたたみかけ、会場の空気を一気に日本語ロック・モードに引きずり込む。そして「まだまだこんなもんじゃねえだろ乃木坂ぁ—! こんなんじゃクーラ・シェイカー呼べねえぞぉー!!」とオーディエンスを煽りながら爆音で“そのぬくもりに用がある”を披露して、ステージを後にした。短い時間ながらも、シンプルでキャッチーな破壊力抜群の楽曲が、心の中の色々な感情をかき立ててくる、極限まで濃縮されたドラマティックな日本語ロックのステージだった。

セットチェンジを挟んでクーラ・シェイカーのステージが始まった。今日の彼らのライブアクトは、今後再び見ることはできるのかというほどに珍しい、アコースティック・セットでのアクトだ。アコースティックならでは、深みのある幽玄さと高度な演奏技術に裏打ちされた妖しく美しいバンドアンサンブルが会場を包み込む、ものすごい音楽体験だった。序盤は、南ベルギーのシメイという街にある森の中のスタジオでレコーディングが行われ、中世的なその土地の空気を吸収してメンバーの想像以上にスピリチュアルなサウンドに仕上がった『PIRGLIMS PROGRESS』からの楽曲を惜しげもなく披露し、それらが放つえもいわれぬエネルギーに圧倒されたフロアから、曲が終わるたびに感嘆の声が漏れていた。そしてラストの全英で初登場1位を記録したデビューアルバム『K』からのインド趣味のサイケデリック・チューン“Govinda”ではシンガロングが起こる。当たり前のことだけど、マントラのシンガロングなんてなかなか聴けるものではない。新作からの楽曲をふんだんに盛り込みながらもオーディエンスのツボをしっかりついた構成の、サンボマスターとはまた違う種類の高揚感が沸き起こる、圧倒的なパフォーマンスだった。

続いて行われたのがクーラシェイカー、サンボマスター両バンドによるトーク・セッション。初めに今日のイベントが開催されることになった経緯に触れてから、話題はお互いのニューアルバムのことに。

サンボマスター
山口「1テイクで録ることが基本なんですけど、それが大変でした。何テイクもやるとテンションが下がってきちゃうので。3人のテンションが一緒じゃないと良いものができないので、それが難しいです」
木内「確かに大変だけど楽しいです。それが僕らがバンドをやってるような理由なんで」

クーラ・シェイカー
ポール「すごく寒くて、ドラムセットも自分もコンディションが良くない中、アロンザとクリスピアンが暖かいガラス張りの部屋から『もっとここをこうしてくれ』というような指示を出してきて、こんな感じ(ショッキングな表情をした)だった」
ハリー「ヨーロッパでも最古のオルガンを弾くという貴重な経験ができた」

このオルガンのエピソードにはまだ続きがあるのだが、アロンザとクリスピアンがあまりにもやんちゃすぎてここに書いたらもしかしたら問題になるかもしれないので、割愛させていただいきたい。最後にお互いのバンドのバンドについての感想を聞かせてくれた。

サンボマスター
山口「曲がすごい良かった」
木内「森の中を進んでいくような雰囲気。本物の森の中でのフジロックのステージもすごいことになりそう」

クーラ・シェイカー
クリスピアン「自分の中で、良いパンクバンドとしてのチェック項目があって、例えばボーカルにクレイジーなところがあるとかいくつかあるんだけど、その項目を全部満たしたバンド」

イベントのフィナーレはいよいよ両バンドのジャム・セッション。このセッションが、文句無しに今日のハイライトだ。曲はパンクバンドのパイオニアだからということと、スリーコードなので我々にとっても弾きやすい(笑)という理由でクリスピアンが選んだVelvet Undergroundの“What Goes On”だ。ステージにクーラ・シェイカー、サンボマスターのメンバーが入り乱れ、全員がそれぞれの個性を殺すことなく最高のプレイを見せ、どこを見ていたらいいのか真剣にわからなくなるほどの、超豪華な光景が目の前に広がる。中でも印象的だったのは、クリスピアンと山口がステージ中央で向かい合って座り込みながら、お互い一歩も引かずにギターをかき鳴らしていた場面だ。「ロックンロールでは負けたくない」という両者の気概が絡み合い、その迫力はとんでもない領域に達していた。

これだけ多くの人数で、しかもほとんど音合わせをしていない状態でのジャムで、オリジナリティ、爆発力、緻密さ、遊び、深み、ソウルフル、サイケデリック、その他諸々もう何でもありの無敵のグルーヴ感を放つ、信じられないぐらい素晴らしい今日のこのセッションに、本当に大げさでなく、「ロックンロールの可能性」みたいなものを見た。(前島耕)


[セットリスト]

■ サンボマスター
1. 美しき人間の日々
2. アイ ウォン チュー
3. ラブソング
4. そのぬくもりに用がある

■ クーラ・シェイカー
1. All Dressed Up
2. Peter Pan R.I.P
3. Ophelia
4. Modern Blues
5. Shower Your Love
6. Govinda

■ サンボマスター×クーラ・シェイカー
1. What Goes On
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