MASS OF THE FERMENTING DREGS@SHIBUYA-AX

MASS OF THE FERMENTING DREGS@SHIBUYA-AX
MASS OF THE FERMENTING DREGS@SHIBUYA-AX - pics by 三吉ツカサpics by 三吉ツカサ
「いくぞ! せーの!」の宮本菜津子(B・Vo)の掛け声から気合い一閃、巨大な波動砲のようにSHIBUYA-AXを一気にロックの彼方へぶっ飛ばす3ピース・サウンドの衝撃! その壮絶な音響に、ステージを360度取り囲むオーディエンスも渾身の大歓声で応える!……そう、この日のMASS OF THE FERMENTING DREGSワンマン『視界をクリアに』は、SHIBUYA-AXのステージ上にあるのは照明機材のみ。フロア中央に、さながらプロレスのリングのような状態でステージが設置され、そこに宮本菜津子、石本知恵美(G・Cho)、吉野功(Dr・Cho)の3人が観客をかき分けて文字通りプロレス入場してくるーーという時点で会場にはただならぬ熱気が立ち込めている。

「楽屋で、お客さんが入ってくる様子がモニターで観れるんですけど……すごい異様な光景で(笑)」と、このコロシアム状態の会場を見回して笑う菜津子。基本的には3人が中央を向くように機材がセッティングされていたが、菜津子&知恵美がオーディエンスのほうを向いて歌えるように別マイクも用意されたステージ。「あんまないですよね、こんなに人に囲まれるって(笑)」とMCで話す菜津子に、「こっち向いてー!」とフロアの方々から声が飛ぶ。そして、そんなシチュエーションのスペシャル感以上に、この日の3人のサウンドはダイナミックで、ギラギラしてて、しなやかで、どこまでもスペシャルなものだった。

「アルバム作った後、ライブはタワレコのインストアでアルバム曲順通りのライブをやらしてもらって以来なんで。みんなの前でやらないことには、なかなか『曲の行き先』がわからない。作ったはいいが、どこへ行く?みたいな」と菜津子も語っていた通り、8月にリリースしたばかりの最新アルバム『ゼロコンマ、色とりどりの世界』をライブの実戦の場でやりたくて3人ともうずうずしていたようだ。ロックのカオスを極彩色に塗り替えていくような“ゼロコンマ、色とりどりの世界”の晴れやかな疾走感。軋むギターの先へ突き進む“終わりのはじまり”の凛とした狂騒感。中盤の“ONEDAY”“サイダーと君”“ズレる”3連打……などなど『ゼロコンマ~』の楽曲をすべて盛り込みつつ、これまでライブ定番曲として磨き上げてきた“She is inside, He is outside”“I F A SURFER”“このスピードの先へ”といったナンバーもがっつり盛り込んだ全21曲。ライブが終わってからも鼓膜がびりびりしっ放しなぐらいでっかい音で鳴り響くこの日の3人の音はしかし、「轟音」とか「音圧」という印象はまるでなく、むしろそんな「轟音オルタナ」なイメージが先行しがちなマスドレの楽曲&サウンドの圧倒的な伸びやかさと色鮮やかさ、さらにーーアルバムを重ねライブを重ねてもなお、いや重ねれば重ねるほどに強く濃くなる、菜津子の表現世界の「少年性」を浮き彫りにするものだった。

菜津子の「自分がバンドやるきっかけになった曲です」という言葉とともに、3人はhideのカバー曲“FLAME”を高らかに響かせた。中学時代、15の頃にhideの音楽に出会って、最初はエレキギターを買って……と、自らの体験を語る菜津子。「それでバンドを始めたようなもんなんで。来てくれる人の中でも、15歳とかそれぐらいの人を見てると、その頃の自分を見てるようで……」。少女時代に、自らの中に芽生えたロックの蒼く抑え難い少年性。それが今でも彼女の原動力として息づいているーーそんな彼女の核心が垣間見えた瞬間だった。とはいえ、「あ、でも……」と気合いの入ったオーディエンスの顔ぶれを見回して「……わりと30代にも好評なマスドレです!」と自分でしっかりオチをつけていたが。

知恵美の七色ギター、吉野の質実剛健ドラム、菜津子の歌とベース(とアクション)は曲が進むごとにパワフルさを増し、かつて見たことのない加速度を獲得していった。“まで。”“ワールドイズユアーズ”のキュートな絶唱もさることながら、“RAT”“ひきずるビート”“ハイライト”の圧倒的なサウンドの迫力と輝度がラストの“ベアーズ”で目映い銀色の流線型になっていくような快感は、今のマスドレでしか、「今、ここ」でしか体感できないものだ。アンコールなしの約2時間、ロックの瑞々しい躍動感そのもののようなエネルギーがSHIBUYA-AXに渦巻く、最高のアクトだった。10月29日からは全国ツアー『ゼロコンマ、色とりどりの世界』もスタート! そして12/11渋谷クアトロ追加公演も決定!(高橋智樹)


[SET LIST]

01.ゼロコンマ、色とりどりの世界
02.かくいうもの
03.She is inside, He is outside
04.I F A SURFER
05.このスピードの先へ
06.青い、濃い、橙色の日
07.終わりのはじまり
08.ONEDAY
09.サイダーと君
10.ズレる
11.FLAME(hideカバー)
12.エンドロール
13.delusionalism
14.まで。
15.ワールドイズユアーズ
16.skabetty
17.さんざめく
18.RAT
19.ひきずるビート
20.ハイライト
21.ベアーズ
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